第66話:実戦訓練とキャスの教訓
第66話として、海賊掃討作戦を2日後に控えた朝の艦橋での緊張感ある準備と、訓練宙域での実戦的訓練を、キャスの失敗と教訓を交えて描きました。
※表題を章から話に変更しました。
【艦橋での朝と訓練の開始】
海賊掃討作戦まであと2日と迫ったルミナスの艦橋では、いつも通りの朝が始まった。
アスがコンソールに座り、冷静に各部の点検を開始した。
「主機関出力正常、補助機関正常、主砲、ミサイル発射管、対空パルスレーザー、いずれも異常なし。艦長、準備は整っています」
貴志が艦長席でコーヒーを手に持ち、頷いた。
「ありがとう、アス。いつも頼りになるよ」
その時、時計が8時29分を指した瞬間、キャスがバタバタと艦橋に飛び込んできた。
「セーフ! 間に合ったー!」
髪は少し乱れ、軍服の襟が曲がっている。アスが即座に鋭い目を向けて小言を始めた。
「キャス、またギリギリですか。特務曹長になったんですから、今まで以上に時間を厳守してください。まったく、だらしなさが抜けませんね」
キャスが慌てて髪を直しながら言い訳した。
「アスさん、ごめんなさい! ちゃんと起きたんですけど、朝ごはん食べてたら…」
アスがため息をつき、貴志に目を向けた。
貴志が苦笑いして話を切り出した。
「よし、みんな揃ったな。今日はより実戦的な訓練を行う。軍訓練センターから標的艦を借用した。標的ドローンを発射する撃墜訓練と、標的艦からの模擬レーザーや模擬ミサイルに対する防御訓練だ。訓練開始は10時、オルテガ・フロンティア第2訓練宙域で実施する。各員、訓練開始に伴い、各部の点検と出航準備を頼む。以上だ」
アスが冷静に敬礼し、静かに応じた。
「了解しました、艦長。私が艦の制御を調整します」
ルナが元気よく手を挙げ、目を輝かせた。
「お兄ちゃん、了解だよ! ドローン隊でバンバンやっつけるね!」
キャスが少し緊張した顔で、明るく返した。
「貴志さん、了解だよ! 訓練なら私でも頑張れるからね!」
ルミが優しく微笑みつつ、真剣に敬礼した。
「艦長、了解です。私、みんなのサポート頑張るよ!」
貴志が全員を見渡し、力強く締めた。
「よし、みんな頼むぞ。ルミナス、出航準備開始だ!」
艦橋に緊張感が漂い、ルミナスは訓練宙域へと動き始めた。
【訓練宙域での実戦訓練】
第2訓練宙域に到着したルミナス。
貴志は艦長席に座り、アスが予約した標的艦やドローンの動きを内心楽しみにしていた。
昨日、アスに「どんな訓練になるか教えてくれ」と頼んだが、「明日の楽しみです」と笑顔でかわされ、詳細を知らなかったからだ。
今回は貴志とアスが訓練に参加せず、キャスが艦長役、ルミが火器管制と索敵、ルナがドローン隊の指揮を担う布陣だった。
キャスが艦長席に立ち、リラックスした声で呟いた。
「訓練だから平気、平気。いつもみたいにやればいいよねー!」
ルナがドローン隊コンソールを握り、自信満々に言った。
「私のドローン隊でやっつけちゃうよ! 訓練でも本気だよ!」
ルミがセンサーを確認しながら、穏やかに応じた。
「みんなの補助、頑張るよ。訓練でも気を抜かないでね」
貴志はみんなの様子を見て、少し眉をひそめた。
「訓練だからって、キャスは気を抜き過ぎじゃないか…?」
横に立つアスが微妙な笑みを浮かべ、何かを企んでいるような表情が貴志には怖く感じた。アスが小声で呟いた。
「艦長、キャスに任せてみましょう。いい教訓になりますよ」
訓練を開始してしばらくすると、ルミが突然レーダーに反応を捉え、声を張り上げた。
「アクティブレーダーに感あり! 12時の方向、訓練艦1隻が突っ込んでくるー!」
キャスがディスプレイを見ながら、目を丸くして慌てた。
「え、どこ!?」
ルミが半分叫ぶように答えた。
「12時の方向、真正面だよ! 高速で接近中!」
キャスが事態を把握しきれず、とりあえず叫んだ。
「取舵一杯! これで大丈夫だよね!?」
その瞬間、ルナがドローン隊を展開し、元気よく報告した。
「ドローン隊、訓練ドローン隊と接触! 宙戦開始したよ!」
キャスが勢いで指示を出した。
「ルナ、ドローン隊全機で囲んで撃墜しちゃって!」
ルナが少し困惑しながら応じた。
「え、全機を宙戦に投入すると索敵がおろそかになるけど、いいの?」
キャスが余裕たっぷりに笑った。
「艦のレーダーあるから大丈夫だよ! やっちゃえ!」
ルナが渋々頷き、ドローン隊に攻撃を集中させた。
キャスがルミに目を向けて尋ねた。
「ルミ、標的艦はどこ?」
ルミがセンサーを確認し、冷静に答えた。
「右舷2時方向を高速で通過中だよ!」
キャスが肩をすくめて呟いた。
「なんだ、突っ込むしかない訓練艦か。楽勝だねー」
しかし、次の瞬間、状況が急転した。ルナが訓練ドローンを追いかけ回している隙に、左舷から別の訓練ドローン1機が急接近し、模擬ミサイルを発射。
ミサイルの発射と同時にルミナス艦橋では、機械合成音声で「警報。ミサイル接近中。敵ミサイルロックオン警報。防御モード、フェーズ・レッドに移行。繰り返します。敵ミサイル、右舷方向より急速接近中。全セクション、衝撃に備えてください。」
とミサイル警報が発令された。
キャスが慌てて叫んだ。
「左舷にチャフ、フレア展開!」
左舷に気を取られている間に、右舷後方の標的艦が模擬レーザー砲を放った。
キャスが焦って舵を切り直した。
「取舵一杯! やばい、やばい!」
だが、アスが仕掛けた罠のように、取舵を切った先に訓練艦の模擬ミサイルと、訓練ドローンのミサイルが待ち構えていた。
キャスが苦し紛れに叫んだ。
「エネルギーシールド展開して!」
ルミが呆れたように一言。
「キャス、ルミナスには無いよ…」
次の瞬間、両舷からの模擬ミサイルが直撃し、艦橋のモニターに「撃沈判定」の文字が点滅。訓練終了のアラームが鳴り響いた。
【訓練後の教訓】
キャスが艦長席に崩れ落ち、頭を抱えた。
「うそ…撃沈!? ちゃんとやったはずなのにやられちゃった…!」
ルナがドローン隊コンソールを叩いて悔しがった。
「キャスお姉ちゃん、ドローン隊の索敵やめて攻撃に集中したからだよ! 言ったじゃん!」
ルミがキャスに優しく、しかし少し呆れながら言った。
「キャス、訓練でも気を抜いちゃダメだよ。私、標的艦の動き見てたけど、キャスが艦長として、戦場全体の見てなかったから…」
貴志が立ち上がり、キャスに近づいて優しく声をかけた。
「キャス、訓練とはいえ艦長役は大変だな。でも、今回の失敗はいい教訓だ。実戦ならこうやってやられるって分かっただろ?」
アスが微笑みながら解説した。
「キャス、貴方は艦のレーダーやセンサーに頼りすぎました。ルナのドローン隊を攻撃に集中させ、索敵を怠ったのが敗因です。標的艦とドローンの連携を見逃してましたね」
キャスが顔を赤くして反省した。
「うぅ…アスさん、ごめんなさい。私、訓練だから、って思って少し油断しちゃったよ…」
貴志がキャスの肩を叩き、力強く励ました。
「いいよ、キャス。失敗は次に活かせばいい。アスが仕掛けた訓練、いい経験になったろ。明日も訓練だ。みんなで強くなろうぜ」
艦橋に緊張感と教訓が残りつつ、キャスの失敗がチームの結束をさらに深める一歩となった。
朝の緊張感ある準備と、キャスの艦長役での失敗を緊張感と緩さの混在で描きました。
次話では、キャスの失敗の振り返りとルミの経験談を描いていきます。
ご期待ください。




