第62話:褒賞授与の朝
第62話として、貴志とアスの穏やかな点検シーン、ルナとキャスのからかい合いとルミの微笑む姿、そして司令所での褒賞授与から艦に戻るまでの貴志とキャスの会話を描きました。
※表題を章から話に変更しました。
【ルミナス各部の点検】
「午前9時」
第一艦隊司令所からの呼び出しは13時だったが、貴志は昨日の戦闘を振り返り、念のためルミナスの各部点検を行うことにした。
艦橋から整備デッキに移動した貴志は、アスと並んで主砲の点検を始め、申し訳なさそうに呟いた。
「アス、せっかくの休息日に一緒に点検させちまって、悪いな…ゆっくり休ませたかったんだけど」
アスが主砲の制御パネルを確認しながら、穏やかに微笑んで応じた。
「艦長、こうやって貴方と一緒にいられるだけで、私には幸せな時間ですよ。それに、昨日の戦闘で各部の兵装がしっかり動いてくれたんですから。次の戦いでも頼りになるよう、一緒に点検しましょう」
貴志が少し照れながら、アスの横顔を見て感謝した。
「ありがとう、アス。きみがそう言ってくれると助かるよ。じゃあ、仲良くやろうぜ」
アスが言葉を発さず、ただ優しい微笑みで貴志に返した。
二人は主砲の点検を終え、次にミサイル発射管へと移動した。貴志が発射管のハッチを開け、内部を覗き込みながら言った。
「ミサイル、昨日はルミの誘導でバッチリだったな。この発射管も問題なさそうだ」
アスがセンサーを手に持って確認し、静かに頷いた。
「はい、艦長。発射管の動作も正常です。私とルミの連携で、直接誘導でも確実に当てられますよ」
二人は和やかに点検を進め、主砲、ミサイル発射管、対空パルスレーザー砲と一つ一つ確認していった。貴志が工具を手に持つアスの姿を見て、ふと笑った。
「アス、お前とこうやって艦弄るの、なんか落ち着くな。昨日は激しい戦闘でバタバタだったけどさ」
アスが小さく笑い、貴志に目を向けた。
「私もです、艦長。この時間があれば、どんな戦いも乗り越えられます」
整備デッキに二人の穏やかな会話が響き、戦闘の疲れを癒すような時間が流れていた。
【プライベートルームでのやり取り】
一方、ルナとキャスのプライベートルームでは、キャスが新品の軍服に着替えたものの、心配そうに部屋をウロウロしていた。
ルナがベッドに寝転がり、お菓子を食べながらからかうように言った。
「キャスお姉ちゃん、そんなに緊張しなくても大丈夫だよー。司令所って言っても、貴志さんと一緒に行くんだからさ」
キャスが手を握り締めて、焦った声で応じた。
「でも、でも! 私、急に呼ばれたことないから…何か悪いことしたのかなって…」
ルナがクスクス笑いながら、さらにからかった。
「心配だなー。司令所でヘマしなきゃいいけどねー。キャスお姉ちゃんだもん」
キャスが顔を赤くして反論した。
「そんなことないもん! 大丈夫だもん! 私、ちゃんとやってきたし!」
ルナが枕を抱えて笑い続け、意地悪く言った。
「ほんとかなー? だってキャスお姉ちゃんだもん。寝坊しないか心配だよー」
キャスがムッとして顔を膨らませ、ルナに突っかかった。
「ルナ、からかいすぎー! もうやめてよ、私だって頑張ってるんだから!」
その様子を部屋の隅で見ていたルミが、楽しそうに呟いた。
「ふふっ、楽しそう…やっぱりみんながいると楽しいよ」
ルミはソファに座り、膝に手を置いて微笑んでいた。彼女の目には、ルナの元気さとキャスの慌てぶりが愛おしく映っていた。
ルミが優しく二人に声をかけた。
「ルナ、キャス、仲良いね。私、こうやって見てるだけで幸せだよ。キャス、司令所でも大丈夫だよ。私、応援してるからね」
キャスがルミに目を向けて、少し落ち着いた。
「ルミさん、ありがとう…頑張ってくるね」
ルナが笑いながら付け加えた。
「ルミお姉ちゃん、私も応援するよ! キャスお姉ちゃん、ヘマしないでねー!」
キャスが再び顔を膨らませたが、ルミの微笑みに癒され、緊張が少し和らいでいた。
【司令所での褒賞授与】
「12時50分」
貴志とキャスは司令所に向かうため艦を出発した。アスが二人を見送り、キャスに厳しく言い聞かせた。
「キャス、平常心を心がけること。艦長の顔に泥を塗らないように気をつけてくださいね」
キャスがヨレヨレだった軍服を新品に直し、緊張気味に頷いた。
「う、うん、アスさん、分かりました…頑張ります」
貴志が無言で立ち尽くすキャスを見て、優しくフォローした。
「キャスなら大丈夫だよ。俺と一緒に行くんだから、気楽に行こうぜ」
キャスが貴志に笑顔を返し、少し元気を取り戻した。
「貴志さん、ありがとう…頑張るよ!」
二人は第3分艦隊司令、ブラウン大佐の執務室前に到着し、貴志がドアをノックした。
部屋の中からライザー大尉の冷静な声が響いた。
「入室を許可します」
ドアが開き、貴志とキャスが入室すると、ブラウン大佐が執務デスクから厳しい目で二人を見つめていた。
隣に立つライザー大尉は、観察するように二人を見据えていた。
大佐の渋い表情とは対照的に、ライザー大尉が事務的に言葉を発した。
「此度の輸送船シーウェイの救援、誠に大義であった。軍は貴官らの行動、戦闘内容に大変満足している。よって、この功績に対し、軍は評価するものである。貴志中尉にはブロンズ勲章を授与する。また、今回の戦闘で、傭兵キャスは貴志中尉を支え、海賊より輸送船を守った功績により、連合軍特務曹長を任官するものとする。今後も軍に尽くし、貴官らの活躍を期待するものである」
ライザー大尉が一歩前に出て、貴志に勲章、キャスに特務曹長の階級章を手渡した。
ブラウン大佐が重々しく口を開いた。
「貴志中尉、此度の戦果、海賊艦の撃退、輸送船を守ってくれて感謝する。今後の活躍を期待する。3日後に迫った海賊掃討作戦に尽力してもらいたい。以上だ」
貴志とキャスは敬礼し、大佐の言葉に「了解しました」と応じた。
しかし、二人は気づかなかったが、ブラウン大佐は苦々しい表情で彼らを見ていた。自分の保身を考えつつ、渋々褒賞を認めざるを得なかった内心が、その目に表れていた。
【艦への帰路】
執務室を出た貴志とキャスは、ルミナスに戻る道すがら、今回の褒賞について話し始めた。
貴志が勲章を手に持つと、嬉しそうな笑顔を見せつつ、少し疑問を口にした。
「ブロンズ勲章か…嬉しいけどさ、正直、昨日はみんなで戦った結果だし、俺だけってのも何か変な感じだな。キャス、お前が昇進ってのも驚きだぜ」
キャスが階級章を握り締め、目を丸くして応じた。
「貴志さん、私だってびっくりだよ! 特務曹長って何!? 私、傭兵だったのに急に軍の人になっちゃって…嬉しいけど、なんか実感湧かないよ。緊張してヘマしなくて良かったぁ」
貴志がキャスを見て笑い、優しく言った。
「キャス、お前、昨日ミサイルのサポート頑張ってたもんな。昇進は当然だよ。俺も勲章もらったけど、アスやルミ、ルナがいなかったら無理だった。軍の評価、ちょっとズレてる気がするな」
キャスが少し首をかしげ、明るく付け加えた。
「そうだよね! ルミさんの無力化ガス弾がなかったら、私たちやられちゃってたよ。貴志さん、私、特務曹長って何するの? よく分からないよー」
貴志が肩をすくめて笑った。
「さあな、俺もキャスの特務曹長への任官なんて想定していなかったからな。でも、お前なら大丈夫だ。俺たちと一緒に戦ってくれりゃいいさ。3日後の海賊掃討作戦、みんなで頑張ろうぜ」
キャスが元気よく頷いた。
「うん、貴志さん! 私、昇進したからもっと頑張るよ! でも、アスさんにまた怒られないようにしないと…」
二人は笑い合いながら艦に戻った。
貴志の優しさとキャスの明るさが、褒賞への喜びと疑問を軽やかに彩っていた。
貴志とアスの穏やかな点検、ルナとキャスの楽しいやり取り、ルミの温かい視点、そして司令所での褒賞授与から帰路の会話を描きました。
次話では、チームの絆が深まる温かい雰囲気を描きます。
ご期待ください。




