第38話:酒場での休息と昇進の知らせ
第38話として、オルテガ・フロンティアに到着した貴志たちが酒場で戦いの疲れを癒しつつ、報酬と艦の強化を話し合い、連合軍からの呼び出しで昇進が明らかになる展開を描きました。
※表題を章から話に変更しました。
オルテガ・フロンティアに到着した貴志、アス、ルナ、キャスは、戦いの疲れを癒すため、傭兵詰所に併設された酒場へと足を運んだ。
この酒場は安くて料理が美味しいことで有名で、傭兵たちの憩いの場として知られていた。4人は木製のテーブルを囲み、キャスが注文した焼き肉プレートとビールが運ばれてきた。
貴志がグラスを手に持つと、みんなに笑顔で呼びかけた。
「よし、まずは乾杯だ。今回の任務、みんなよくやってくれた。生きて帰ってこれたことに感謝だ。乾杯!」
「乾杯!」
アス、ルナ、キャスがグラスを合わせ、ビールの泡が軽やかに弾けた。美味しい料理と適度な飲酒で緊張が解け、会話が弾み始めた。焼き肉やフライドポテトを頬張りながら、貴志が話題を切り出した。
「今回の護衛任務の賞金、かなり大きな金額になったらしいな。アス、どのくらいになったんだ?」
アスがグラスを置いて、計算データを頭に浮かべながら答えた。
「艦長、報酬は現金25万クレジットとエネルギー資源10単位です。今回は特別に、クルーズ船からの追加報酬もあるので、アストラリスの艦体修復、消耗品の補給をした後でも、1年くらい任務を受けなくても飲食費と補給分くらいの余裕があります。私が提案するのも変な話ですが、せっかくの賞金、艦の強化に使ってみませんか?」
貴志が目を輝かせて頷いた。
「いい提案だ、アス。今回の戦いはギリギリで何とか耐えられたけど、艦の余裕がなかったのも事実だ。強化すれば、次はもっと安定して戦える。どう強化するか、みんなで考えようぜ」
ルナが肉を頬張りながら手を挙げた。
「お兄ちゃん、ドローン隊をもっと増やして欲しいな! 3機やられちゃったから、新しい子欲しいよ!」
キャスが笑いながら提案した。
「貴志さん、私、レーザー砲の威力上げたいな。もっと敵を早く倒せれば、艦の負担も減るよね?」
アスが冷静に補足した。
「艦長、ドローン隊の増強とレーザー砲の強化は良いアイデアです。私としては、シールドジェネレーターのアップグレードもお勧めします。今回の戦闘では、シールドのエネルギーが尽き、危機になりましたから」
貴志がグラスを手に持ったまま笑った。
「全部いい案だな。25万クレジットなら、修復と強化両方いけるだろ。よし、決まりだ。アストラリスを最強の艦に仕立て上げるぞ!」
4人は笑い合い、酒と料理を楽しみながら未来の計画に盛り上がった。
その時、詰所のカウンターから呼び出しの声が響いた。
「アストラリス艦長、貴志少尉! カウンターまでお越しください!」
貴志が首をかしげながら立ち上がった。
「何だろ? 賞金の受け取りか何かか? アス、一緒に来てくれ」
アスが頷き、二人でカウンターに向かった。そこには詰所の女性係員が待っており、真剣な表情で伝えた。
「貴志少尉、今回の海賊撃退について、連合軍オルテガ・フロンティア駐留部隊の指揮官、ナーヴァル少将からの呼び出しです。オルテガ・フロンティア駐留部隊司令所まで、至急お越しくださいとのことです」
貴志が驚きを隠せず、アスと顔を見合わせた。
「ナーヴァル少将からの呼び出し? 何だよ、いきなり…アス、どう思う?」
アスが少し考え込み、答えた。
「艦長、今回の任務で空母を撃破した功績が評価されたのかもしれません。クルーズ船に軍の高級士官が乗っていた可能性もあります。良い知らせだと思いますよ」
貴志が苦笑いしながら頷いた。
「そうか…まぁ、行ってみないと分からないな。ルナとキャスには酒場で待っててもらうか」
オルテガ・フロンティア駐留部隊司令所に到着した貴志とアスは、少将の執務室に通された。そこには威厳ある中年の男性が座っており、貴志に鋭い視線を向けた。
「貴志少尉か。今回の護衛任務での活躍、報告を受けた。敵の空母を単艦で仕留めた判断と実行力は見事だ。また、クルーズ船には連合軍の高級士官が乗っており、彼らからの推薦もあった」
貴志が緊張しながら応じた。
「ありがとうございます、閣下。でも、俺一人じゃなく、アストラリスの仲間みんなのおかげです」
少将が頷き、書類を手に持った。
「謙虚だな。だが、結果が全てだ。貴志少尉、君を特務中尉に昇進させる。連合軍からの給料も増額し、今後はより重要な任務を任せるつもりだ。おめでとう。今後も連合軍の為にが頑張っていただきたい!」と、ナーヴァル少将は、貴志に対して略式ながら敬礼をしてくれた。
貴志は、傭兵に対し、なかなか敬礼をしてくれる上官がいなかったため、少し驚きながらも少将が信頼出来る人と思い、最敬礼で返した。
貴志が目を丸くし、アスに小声で確認した。
「特務中尉!? マジか…アス、これってどういうことだ?」
アスが微笑んで答えた。
「艦長、特務少尉から特務中尉への昇進です。他人からは『中尉』と呼ばれますが、自ら名乗る時は『特務中尉』です。軍からの評価が上がった証拠ですよ。今回の戦果が認められたんです」
貴志が照れ笑いを浮かべ、ナーヴァル少将に対して御礼を述べた。
「ありがとうございます、少将閣下。仲間と共に、これからも頑張ります」
執務室を出た貴志は、アスと酒場に戻りながら呟いた。
「特務中尉か…なんか実感湧かないな。でも、アストラリスを強化して、もっとデカい仕事ができるってことだよな」
アスが優しく応じた。
「そうです、艦長。これからが本番です。私たちみんなで、アストラリスを最高の艦にしましょう」
酒場に戻った貴志は、ルナとキャスに昇進の知らせを伝え、再び乾杯のグラスを掲げた。アストラリスの未来が、新たな報酬と評価と共に、さらに広がりを見せていた。
貴志たちが酒場で休息と艦の強化を話し合い、連合軍からの昇進の知らせを受ける場面を描きました。
次話は、貴志達のプライベートなひとときを描いていきます。
ご期待ください。




