第35話:決死の反撃
第35話として、アストラリスが護衛任務で危機的状況に追い込まれ、貴志が艦体に損傷を覚悟でマーベルを発射する決断を下し、空母を撃破する展開を描きました。
この物語の一つの山場として、戦場の緊迫感と犠牲を伴う勝利を、臨場感たっぷりに描写しました。
※表題を章から話に変更しました。
アストラリスは護衛任務で空母を含む海賊と激しい戦闘を繰り広げていた。
艦載機の波状攻撃が続き、アストラリスのエネルギーシールドエネルギーは尽きかけ、護衛艦隊の駆逐艦2隻も目に見えて損傷が増えていた。戦場の混沌が貴志の指揮に重圧をかけ、彼は改めて戦争の現実を噛み締めた。
「これが本物の戦争だ…遊びじゃない。俺の指揮一つで、アストラリスだけじゃなく、艦のみんな、護衛艦隊、クルーズ船が全滅するんだ」
貴志は決断を迫られ、アスを呼んだ。
「アス、空母の位置は特定できるか?」
アスがコンソールを操作し、即座に答えた。
「位置は特定できます。座標X-28、Y-12、距離8光秒です。ただ、アストラリスからこの位置では直接攻撃はできません。本艦の搭載ミサイルの射程は4光秒です。射程距離が短すぎて敵艦まで届きません。」
貴志が目を細め、覚悟を込めて言った。
「アス、格納庫のマーベルを準備しろ。あれの射程距離なら届くはずだ!」
【マーベル】そのミサイルは、元々駆逐艦クラスでは搭載、発射ミサイル出来るミサイルではなく、海賊要塞を掃討した際に取得し、売却用として格納庫に保管していた物だった。本来は、大型戦艦に搭載する長距離、艦対艦ミサイルで、当然アストラリスのミサイル発射管からは発射出来ないので、格納庫からミサイルの弾体を出し、発射することになる。つまり、駆逐艦クラスのアストラリスから発射すれば、発射時の強力な推進炎で、艦体に深刻な損傷を与える危険性があった。
アスが驚きを隠せず反論した。
「艦長、マーベルはアストラリスからの発進はできません! 艦体が耐えきれず、重大な損傷が発生します!」
「しかも、アストラリスの射撃管制システムでは、敵艦近接時のレーダー誘導が出来ず、命中率の低い直接誘導になります。」
「やるんだ、アス。このままじゃ俺たちだけじゃなく、護衛艦隊が全滅する。その先はクルーズ船が海賊に略奪され、乗員や乗客が殺されるんだ。マーベルに賭けるしかないんだ!」
アスが一瞬黙り、貴志の決意を見つめた。
「…マーベルを発射した瞬間、マーベルの推進炎でアストラリスも大破する可能性が...」
「分かってる。それでもやる。アス、頼む」
アスが深く息を吐き、頷いた。
「分かりました。艦長の指示に従います」
彼女はキャスとルナに素早く指示を出した。
「ルナ、キャス、私と艦長はマーベルの座標特定と誘導に専念します。艦載機の各個撃破とミサイルからの退避を頼みます」
キャスが震える声で応じた。
「うん、アスさん…私、頑張るよ!」
ルナが元気よく叫んだ。
「お兄ちゃん、アスお姉ちゃん、あたしドローン隊で守るよ!」
貴志は二人に目をやり、無言で頷いた。覚悟を決めた瞬間だった。
アスがコンソールを操作し、マーベルの準備を進めた。
「座標特定、敵空母を捕捉。射撃管制システムに情報入力、ミサイルと管制システム間のリンク完了。位置をディスプレイに表示します。格納庫開放、マーベルを艦外に出します」
格納庫の扉が開き、マーベルが艦外に展開された。アスが続けた。
「マーベルとのコンタクト開始。私の指揮下に入りました。艦長、指示を!」
貴志が力強く命じた。
「マーベル発射!」
マーベルは格納庫から射出され、重々しくアストラリスから離れた。
「マーベル離脱しました。エンジン点火!」
次の瞬間、艦橋が眩しい光に包まれた。マーベルの巨大な推進力がアストラリスを揺らし、艦体に激しい振動が走った。同時に、艦の防御システムから機械合成音声が響き渡った。
「シールドエネルギー0%、シールド大破、復旧不可能。艦体に損傷発生。右舷パルスレーザー対空砲1番から4番使用不可。右舷ミサイル発射管大破。ミサイル安全温度超過、爆破寸前!」
機械合成音声を聴いたアスは、一瞬、怯み、ミサイルを誘導する手が止まった様に見えた。
貴志が叫んだ。
「アス、マーベルの誘導に集中しろ! キャス、ルナ、艦載機を抑えろ!」
だが、その直後、右舷のミサイル発射管が爆発。艦橋が赤暗い非常電源に切り替わり、機械合成音声が続いた。
「右舷大破、主機関損傷、出力20%に低下、航行不能!」
艦がミサイル発射の余波で大きく揺れて傾き、貴志はコンソールにしがみついた。
キャスが恐怖に声を上げた。
「貴志さん、艦が…!」
「キャス、落ち着け! アス、マーベルはどうだ!?」
アスが冷静に報告した。
「マーベル誘導中。ミサイル可視カメラで空母を捕捉しました。ミサイルはレーザー誘導圏外になり、可視カメラによる直接誘導に切り替えました。まもなく敵艦に命中…3、2、1!」
遠くの宙域で巨大な爆発が起こり、スクリーンに映る空母が炎に包まれた。アスが確認した。
「艦のセンサーも電磁振動波を確認。敵艦に命中したと思われます!」
キャスは、心配そうに言った。
「貴志さん、こ、これで勝てるよね...」
貴志が安堵の息を吐いた。
「アス、よくやった。これで流れが変わってくれればいいが…」
アスがさらに報告した。
「艦長、高速ミサイル艦や艦載機が戦闘宙域から急速に離脱していきます。空母の撃破されたことで戦意を失ったようです」
戦場に一瞬の静寂が訪れた。アストラリスは航行不能に陥り、右舷が大破していたが、空母の撃破で海賊の攻勢が止まった。キャスが震える声で呟いた。
「勝った…の? 貴志さん、私たち生きてるよね?」
貴志がキャスの肩を叩き、笑った。
「ああ、生きてるよ。キャス、ルナ、アス、みんなよくやった。お前たちのおかげだ」
ルナが疲れた声で言った。
「お兄ちゃん…ドローン隊、3機やられちゃったけど、頑張ったよ…」
護衛艦隊の駆逐艦から通信が入った。
「アストラリス、空母を仕留めたのか!? すげえぞ、貴志少尉! 俺たちはまだ戦える。クルーズ船は無事だ」
貴志が応答した。
「こちらも航行不能だが、任務は続ける。海賊が完全に退くまで油断するな」
アストラリスは大きな代償を払ったが、護衛任務を成功に導く一撃を放った。
キャスの初戦闘は、勝利と犠牲の両方を刻む過酷な経験となった。貴志は艦橋を見渡し、次なる修復と戦いの準備を心に誓った。
アストラリスがマーベル発射で空母を撃破し、戦況を逆転させるも、艦が大破する危機的状況を描きました。
次話は、戦場における少しロマンチックな展開も描いていきます。
ご期待ください。




