表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/196

第4話:傭兵への第一歩

貴志が傭兵としての道を選び、試験を通じて自信をつける過程、アスとの連携が彼を支え、今後の依頼や戦闘への布石としました。

※一部読み辛い箇所がありましたので、段落の修正等を行いました。また、表題を章から話に変更しました。


カルナック交易区の中央市場は、異世界らしい喧騒に満ちていた。金属とガラスでできたアーチ型の通路には、色とりどりの看板が並び、異種族らしき商人や船乗りたちが忙しく行き交っている。

貴志はアストラリス、愛称を「アス」と呼ぶことにした実体化AIの彼女と共に、その雑踏の中を歩いていた。


「アス、ここが中央市場か。すごい活気だな…でも、どうやって情報集めるんだ?」

貴志は周囲を見回しながら呟いた。


アスはハイヒールをカツンと鳴らしつつ、穏やかな声で答えた。

「艦長、まずは基本的な情報源、交易所や酒場が最適です。交易区の勢力図やエネルギー資源の取引状況を把握するには、そこで働く人々の話を聞くのが早いでしょう。ただ…その前に問題があります」


「問題?」


「はい。お金です。艦のエネルギー補給の料金は艦の緊急予備資金で支払いましたが、現金はほぼ残っていません。補給物資や食料を購入するには、資金が必要です」


貴志は立ち止まり、ポケットをまさぐった。当然ながら、彼が持っていたのは地球の紙幣と小銭だけだ。この世界で通用するわけがない。

「マジか…現金がないって、どうすりゃいいんだよ?」


途方に暮れる貴志に、アスは冷静に提案した。

「慌てないでください、艦長。アストラリスの倉庫をスキャンしたところ、レアメタルが少量保管されているのを確認しました。

具体的には、『トリリウム結晶』が10キログラムほど。交易区では高値で取引される素材です」


「トリリウム結晶? 何だそれ?」


「この宙域でエネルギー変換炉の触媒として重宝される希少金属です。これを売却すれば、当面の補給物資や食料は賄えます。ただし、量が限られているため、長期的には別の収入源を考える必要があります」


貴志は少し安心しつつも、次の問題に頭を悩ませた。

「長期的な収入源か…俺、サラリーマンしかやったことないぞ。異世界で何ができるんだ?」


アスは一瞬考え込むように黙った後、目を輝かせて提案した。

「艦長、アストラリスは戦闘能力に優れた駆逐艦です。この交易区には、護衛任務や敵艦掃討を請け負う傭兵の需要があります。私たちの力を活かせば、傭兵として稼ぐのが賢明かと。どうでしょう?」


「傭兵!? 俺が!?」


貴志は目を丸くしたが、アスの穏やかで自信に満ちた表情を見ているうちに、少しずつそのアイデアに惹かれ始めた。確かに、アストラリスには強力な武装とシールドがある。戦うのは怖いが、アスがサポートしてくれるなら…。


「…分かった。アスが言うなら、やってみるよ。で、どうやって傭兵になるんだ?」

「交易区には傭兵登録場があります。そこで簡単な試験を受ければ、正式に登録可能です。私が同行しますので、心配はいりませんよ」


アスが微笑むと、貴志は思わず頷いてしまった。彼女の存在が、彼に不思議な安心感を与えていた。


中央市場の一角にある傭兵登録場は、粗末な鉄骨造りの建物だった。

入り口には、傷だらけの装甲服を着た男たちがたむろしており、貴志は少し気後れした。アスがそっと肩に手を置き、「大丈夫です、艦長」と囁くと、彼は意を決して中へ入った。


受付にいたのは、ゴーグルをつけた小柄な女性だった。彼女は貴志とアスを見上げ、ぶっきらぼうに言った。

「傭兵登録か? 名前と所属艦を言え」


「えっと、貴志です。艦は『アストラリス』。よろしくお願いします」

「アストラリスね。駆逐艦クラスか。試験を受けるなら、あそこのシミュレーターで戦闘能力を見せるんだ。護衛任務の模擬戦だ。失敗しても死にはしないが、登録はできないぞ」


貴志はゴクリと唾を飲み込んだ。アスが耳元で囁いた。

「艦長、私がシミュレーターのデータをリアルタイムで解析します。指示に従っていただければ、必ず合格できます」

「頼むよ、アス…」


貴志は緊張しながらシミュレーターのコックピットに座った。目の前に広がる仮想空間では、アストラリスの艦橋が再現され、敵の小型艦隊が迫ってくるシナリオが始まった。


「艦長、レーザー砲を右舷30度に照準。発射準備を!」


アスの指示に従い、貴志がコンソールを操作すると、レーザー光が敵艦を貫いた。

爆発がスクリーンに映し出され、貴志は思わず「おおっ!」と声を上げた。

「次は対艦ミサイル、左舷の大型艦へ。シールド展開も忘れずに!」


ミサイルが命中し、敵艦が炎に包まれる。シールドのおかげで反撃をしのぎつつ、パルスレーザーで小型機を次々と撃墜していく。貴志はアスの的確な指示に驚きながらも、徐々に戦闘のリズムをつかんでいった。


やがて、シミュレーションが終了。スコアが表示され、受付の女性が口笛を吹いた。

「へえ、初心者にしては上出来だ。合格だよ。アストラリス、正式に傭兵艦として登録する。依頼は掲示板で受けろ。運が良ければ、すぐ仕事が見つかるぜ」


貴志はシミュレーターから出て、アスと顔を見合わせた。

「やった…俺、傭兵になっちゃったよ」

「おめでとうございます、艦長。これからが本当の冒険です。私と一緒に、この宇宙を切り開いていきましょう」


アスが穏やかに微笑むと、貴志は少し照れながらも頷いた。倉庫のレアメタルを売って当面の資金を確保しつつ、彼は傭兵としての第一歩を踏み出した。


電子掲示板に並ぶ依頼を見ながら、貴志の胸には新たな決意が芽生えていた。この世界で生き抜くため、そしてアストラリスと共にどこまで行けるのかを確かめるために。

次話では、具体的な傭兵任務や新たな敵との遭遇を描いていきたいと思います。

ご期待ください。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ