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模型から始まる転移  作者: 昆布


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第28話:キャスの学びと現実

第28話として、キャスの訓練が始まり、彼女の成長と適応力が描かれる一方、緊急事態を通じてレミアとの違いを認識する場面、貴志とアスのサポートが、キャスの心を支えている様子を描きました。

※表題を章から話に変更しました。

キャスはアストラリスに乗り込み、割り当てられたプライベートルームに入った。ベットの端に腰掛けながら、レミアや孤児たちと離れた寂しさを胸に抱えていた。基地の格納庫での温かい送別が思い出され、慣れ親しんだ家族のような存在が遠ざかる感覚に心が重かった。しかし、彼女は自分に言い聞かせた。

「レミア姉さんやみんなを守るためにも、私が頑張らないと…恩を返すんだ」

その決意を胸に、キャスは貴志やアスと共に新たな一歩を踏み出した。


貴志は艦橋でアスとルナを呼び、キャスの訓練計画を検討した。

「アス、キャスを艦長に仕立てるには、まず基本からだな。艦橋で艦の動かし方を教えて、各種機器の扱い、レーダーや探知機器の操作、基地の入出港の手順を学ばせよう。ルナも手伝ってくれよ」

アスが頷き、具体的なスケジュールを提案した。

「了解しました、艦長。まずは私が艦の基本操作を教えます。レーダーの扱いは私とルナで分担し、入出港は実践で覚えさせましょう。キャスの吸収力なら、短期間で成長しますよ」

ルナが元気よく手を挙げた。

「お兄ちゃん、あたし、キャスお姉ちゃんにドローンの使い方も教えてあげるね! 一緒に強くなろう!」

キャスが少し照れながら笑った。

「貴志さん、アスさん、ルナちゃん…ありがとう。私、頑張るよ」

こうして、キャスの実践訓練が始まった。


アストラリスは黒い霧を抜け、リガル宙域の基地へと帰還する航路を取った。途中、輸送艦や傭兵船、連合軍の巡視艦(駆逐艦よりも小型、軽武装の哨戒用の艦艇)とすれ違い、貴志はキャスに実践的な学びの場を与えた。

「キャス、ほら、あの艦と交信してみろ。航路変更の連絡を入れてみな」

キャスは緊張しながらコンソールを操作し、貴志の指示通りに通信を送った。

「こちらは駆逐艦アストラリス、航路変更のお願いです。座標X-12、Y-34で貴艦と交差します。左舷側に進路をずらしてください」

「輸送艦スカイウェー、承知しました。進路変更完了しました。良い旅を!」

相手の艦から返信が届き、キャスはホッとした表情で貴志を見た。

「できた! 貴志さん、ちゃんと返事もらえたよ!」

「ナイスだ、キャス。艦の動かし方も見て覚えろよ。アスが舵を取ってるから、動きをよく見てな」

キャスは目を輝かせ、アスの操作を食い入るように観察した。

レーダーの使い方、各種探知機器の設定、主機関の調整など、一つ一つを吸収し、自分のものにしていく様子に、貴志とアスは安心感を覚えた。アスが微笑みながら言った。

「艦長、キャスの向上心は素晴らしいです。この調子なら、艦長としての資質をすぐに身につけられますね」

「だろ? レミアが信頼してるだけあって、根性もあるよ。ルナもキャスと仲良くやってくれな」

「うん、お兄ちゃん! キャスお姉ちゃん、すっごく頑張ってるよ!」

キャスは照れ笑いを浮かべつつ、訓練に励んだ。アストラリスが基地に近づく中、彼女は少しずつ艦の感覚を掴んでいった。


だが、基地への帰還途中、突然、緊急発報無線(SOS)が艦橋に響いた。アスが即座に確認した。

「艦長、座標X-15、Y-40から緊急信号です。輸送船が海賊に襲われた模様。至急向かいますか?」

貴志が即決した。

「行くぞ、アス。キャスも見て学べ。実戦の雰囲気を味わえよ」

アストラリスは最大戦速で当該宙域に急行した。


到着した時、輸送船は既に攻撃を受けた後だった。船体は大破し、乗員は全滅、積荷も奪われた痕跡が残っていた。キャスはスクリーンに映る惨状に目を丸くし、憤りを抑えきれなかった。

「何!? こんなひどいこと…レミア姉さんは今までこんな酷いことをやってきたの!? 私達の為だと言っても、信じられない!」

貴志が慌ててキャスの肩を押さえ、アスがフォローに入った。

「キャス、落ち着いて。レミアはこんなこと酷いことはしてきていないよ。彼女は物資だけ奪って、人を殺したりしないって言ってたろ。これは別の海賊の仕業だ」

アスがデータを分析し、補足した。

「艦長の言う通りです。この攻撃はミサイルとレーザー砲の乱射によるもの。レミアのブラック・ファントムは、主機関部をピンポイントで狙うスタイルで、乗員、乗客を殺害した記録はありません。別のグループでしょう」

キャスは混乱した表情で二人を見た。

「でも…海賊ってみんなこんなことするんじゃないの? レミア姉さんだって…」

貴志が真剣な目でキャスを見つめ、言った。

「キャス、レミアは孤児を守るために海賊やっているけど、乗員、乗客を殺害したことは無いんだ。この宙域にはいろんな海賊がいる。レミアは俺たちと協力する道を選んだだろ? 信じてやれよ」

キャスは少し落ち着きを取り戻し、頷いた。

「…うん、分かった。貴志さん、アスさん、ごめん。私、勘違いしてた。レミア姉さんを信じるよ」


アストラリスは輸送船の残骸を調査し、連合軍に遭難した輸送船の船名、損害状況、生存者の有無等の報告を送った。キャスは初めて見る戦闘の残酷さにショックを受けつつも、レミアとの違いを理解し、艦長としての覚悟を新たにした。

貴志とアスはそんなキャスを見守りつつ、基地への帰還を続けた。彼女の学びは、実戦の中でさらに深まろうとしていた。

キャスの訓練が順調に進む中、緊急事態を通じて海賊行為の多様性、レミアの立場を再認識する場面を描きました。キャスの成長と貴志たちのフォローする姿を、次話に繋げていきます。

ご期待ください。

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