第27話:キャスの旅立ち
第27話として、キャスを艦長に仕立て上げるための具体的な計画が動き出し、彼女の成長と基地からの旅立ちを祝うささやかなパーティーを描きました。感情的な別れと、新たな一歩への期待感を描写しました。
※表題を章から話に変更しました。
応接室での話し合いを経て、キャスをブラック・ファントムの艦長に仕立て上げる案はまとまりつつあった。しかし、貴志とレミアの前に新たな課題が浮上した。キャスはこれまで戦闘艦に乗った経験がなく、ましてや艦長としての判断を下したこともない。どうやって彼女を育て上げるかが焦点となった。
そこで、貴志はある提案をした。
「レミア、キャスをいきなりブラック・ファントムの艦長にしても、経験がないと動けないだろ。まずはアストラリスに乗せて、オペレーターとして実戦を学ばせるのはどうだ? 俺とアスがそばで教えるから、艦長としての判断力や経験を少しずつ積ませられる」
レミアが少し考え込み、キャスに目を向けた。
「キャス、どう思う? 貴志の艦で学ぶってのは、確かにいい機会だ。私が基地を守ってる間に、お前が強くなれれば…」
キャスは緊張した表情で頷いた。
「レミア姉さん、私、やってみるよ。アストラリスで学べるなら、艦長としてみんなを守れる人になれるかもしれない」
アスが冷静に補足した。
「艦長、キャスをオペレーターとして訓練すれば、航行、戦闘、索敵の基本を短期間で習得できます。私がプログラムを組んで、彼女の成長をサポートしますよ」
貴志は笑顔で決めた。
「じゃあ決定だ。キャス、アストラリスへようこそ。俺とアス、ルナでしっかり鍛えてやるよ」
こうして、キャスがアストラリスで訓練を受ける計画が固まった。
キャスにとって、長年慣れ親しんだ基地を離れるのは大きな変化だった。レミアがその気持ちを察し、提案した。
「貴志、キャスが旅立つ前に、ささやかなパーティーを開きたい。基地の仲間や孤児たちと一緒に、キャスを送り出してやりたいんだ。飲食物は双方で持ち寄って、格納庫でやらないか?」
貴志が即座に賛成した。
「いいね、レミア。アストラリスからも何か持ってくよ。キャスにとっても、いい思い出になるだろ」
パーティーは基地の格納庫で開かれることになった。アストラリス側は貴志とアスがリガル・プリマで買った「クリスタル果実のグリル」や「ブルースター・エール」を用意し、レミアたちは基地で作ったスープやパンを持ち寄った。格納庫には簡素なテーブルが並べられ、孤児たちが飾り付けを手伝った。
パーティーが始まると、キャスは成人扱いされる節目として、ささやかな成人式も兼ねることになった。レミアがキャスの前に立ち、皆の前で宣言した。
「キャス、お前は今日から一人前の大人だ。私たちの家族としてずっと一緒にいたけど、これからは自分の道を歩むんだ。胸を張って行ってこい」
キャスはレミアから手作りのペンダントを渡され、目を潤ませた。
「レミア姉さん…私、基地に来た時、姉さんが助けてくれなかったら生きてられなかった。みんなと過ごした日々、忘れないよ」
孤児たちがキャスに駆け寄り、抱きついたり手を振ったりして別れを惜しんだ。
「キャス姉ちゃん、強くなって帰ってきてね!」
「艦長になったら、私たちも乗せてよ!」
貴志はそんな光景を微笑ましく見つめ、アスに小声で呟いた。
「キャス、愛されてるな。レミアの気持ちも分かるよ。俺たちでしっかり育てないとな」
アスが優しく応じた。
「はい、艦長。キャスには可能性があります。私たち家族に新しい仲間が加わるのも、素敵なことですね」
パーティーの最後、レミアがキャスの背中を押した。
「キャス、貴志とアストラリスを頼れ。辛くなったら戻ってきてもいい。でも、私はお前が立派な艦長になるって信じてるよ。行ってこい」
キャスは涙を拭い、決意を込めて頷いた。
「レミア姉さん、みんな…私、頑張ってくるね。絶対に艦長になって、みんなを守れる人になるから!」
格納庫に拍手が響き、キャスは貴志とアスに連れられ、アストラリスへと向かった。基地の仲間たちに見送られながら、彼女は新たな一歩を踏み出した。貴志はキャスの成長を支える責任を感じつつ、艦橋で次の計画を立て始めた。
「アス、キャスの訓練スケジュールを組んでくれ。ルナにも手伝ってもらって、キャスを立派な艦長に仕立て上げるぞ」
「了解しました、艦長。キャス、ルナ、私で、アストラリスはもっと強くなりますよ」
アストラリスはキャスを乗せ、基地を後にした。レミアと孤児たちが見守る中、貴志たちの新たな挑戦が始まったのだった。
キャスの訓練計画が具体化し、基地での旅立ちを祝うパーティーを通じて彼女の成長と絆が描きました。キャスのレミアとの別れ、貴志たちの決意が、次話へ続いていきます。
ご期待ください。




