第25話:基地での対面
第25話として、貴志がレミアの誘いに応じて基地に向かい、緊張感の中での初対面と、互いの信頼の第一歩を描きました。レミアの人となりやアストラリスの安全への配慮を通じて、対話の基盤が築かれる場面を描写しました。
※表題を章から話に変更しました。
レミアからの提案を受け、貴志はアストラリスをブラック・ファントムの基地へと向かわせる決断を下した。黒い霧の中を進む艦内では、貴志が艦橋でコンソールを握り、有視界モニターを凝視していた。いつミサイルやレーザー砲が飛んでくるか分からない状況に、彼の心は緊張で張り詰めていた。
「アス…本当に大丈夫か? 罠だったら、俺たち一巻の終わりだぞ」
アスは貴志の隣に立ち、穏やかに微笑んで応じた。
「大丈夫です、艦長。私が艦長を信じているように、アストラリスも簡単には沈みません。シールドは強化済みですし、ルナのドローンも待機しています。万が一の時は、私が対応しますよ」
「うん、お兄ちゃん! あたし、ドローンで守るからね!」
ルナの元気な声が響いたが、貴志の緊張は解けなかった。モニターに映るブラック・ファントムの艦影を見つめながら、彼は最悪のシナリオを頭に描いていた。そんな時、通信が再び入った。レミアの声が艦橋に響いた。
「アストラリスの艦長、そんなに緊張しなくてもいいよ。今更襲撃なんかしないって。私が基地に来いって言ったんだから、約束は守るよ」
その軽い口調に、貴志は一瞬驚いた。アスと目を合わせ、苦笑しながら呟いた。
「…なんか、悪い奴って感じじゃないな。レミアって、案外正直者なのかも」
アスが頷き、小声で補足した。
「艦長、彼女の言葉に嘘はなさそうです。通信のトーンからも、敵意より対話を望んでいるように感じますね」
アストラリスはブラック・ファントムに導かれ、小惑星内の基地ドックに到着した。貴志は緊張を隠しつつ、次の行動に備えた。
艦がドックに着くと、貴志は腰のブラスターを点検し、アスと共に艦橋から外へ出た。タラップに立つと、冷たい空気と共に基地の内部が見えた。小惑星の岩壁に囲まれた空間に、整備施設や居住区が広がっている。貴志は深呼吸し、タラップを降りた。
その先には、レミアが立っていた。黒い軍服に身を包み、敬礼の姿勢で迎えている。彼女の隣には、長身の黒髪の青年が副官のようについていた。貴志はアスと小声で話した。
「敬礼して待ってるなんて、律儀な奴だな。海賊っぽくないよ。あの横にいるのは副官か?」
アスが青年を一瞥し、静かに答えた。
「艦長、私と同じ実体化AIと思われます。艦の制御を担うパートナーでしょう。レミアの態度からも、規律を重んじる人物のようです」
貴志は頷きつつ、レミアに近づいた。レミアが敬礼を解き、最初に口を開いた。
「ようこそ、アストラリスの艦長、貴志。私はレミア、ブラック・ファントムの艦長だ。隣は私の艦AI、シオンだよ。わざわざ来てくれてありがとう」
貴志はレミアの手を差し伸べる前に、彼女をじっと見つめた。鋭い瞳と落ち着いた態度に、海賊というより軍人のような印象を受けた。心の中で「信頼できそうだ」と感じつつ、彼も敬礼を返した。
「俺は貴志、アストラリスの艦長だ。こっちは俺のパートナー、アスだ。基地を見せてくれるって言うから来たけど、正直まだ警戒してる。お前がどんな奴か、自分の目で確かめたい」
レミアが軽く笑い、貴志の言葉に答えた。
「警戒するのは当然だよ。私だって、お前が連合軍の傭兵って聞いて身構えてた。でも、ここまで来てくれたってことは、少しは信じてくれてるってことだろ? まずは握手でもどうだ?」
貴志は一瞬迷ったが、レミアの真剣な眼差しに押され、手を差し出した。二人は固く握手を交わし、互いの第一印象を心に刻んだ。貴志は「こいつ、案外まともな奴かも」と感じ、レミアも「この男、意外と話が分かるな」と思った。
レミアが基地の奥を指さした。
「じゃあ、応接室に案内するよ。そこでゆっくり話そう。私が何のために戦ってるか、見て聞いてくれ」
貴志はアスと目を合わせ、頷いた。
「分かった。行くよ、アス。ルナは艦で待機しててくれ。何かあったらすぐ連絡な」
「うん、お兄ちゃん! アスお姉ちゃんと一緒なら大丈夫だね!」
アストラリスをドックに残し、貴志とアスはレミアとシオンに導かれ、基地の応接室へと向かった。霧の中での対峙から一転、対話の場が開かれた瞬間だった。貴志はレミアの真意を探りつつ、彼女の背負う事情を知る準備を整えた。戦うか、協力するかの選択が、この対面で決まるかもしれない。
貴志とレミアが基地で初対面し、互いに信頼の第一歩を踏み出す場面を描きました。緊張感が和らぎつつも、慎重な姿勢が残る中で、応接室での会話へ続いて行きます。
次話もご期待ください。




