第21話:追跡の第一歩
第21話として、ブラック・ファントム対策として貴志が新たなアイデアを出し、熱感知センサーと目視監視を組み合わせた作戦を展開する過程を描きました。苦労の末に、追跡センサーの成功で一歩前進する展開を、緊張感と日常の緩急を交えて描いています。
※表題を章から話に変更しました。
アストラリスは補給基地に戻り、ブラック・ファントムとの戦いに備えて艦橋で作戦会議を開いていた。貴志はコンソールを前に腕を組み、考え込んでいた。
「ステルス艦って言ってもさ、完全に消えるなんてあり得ないよな。レーダーに映らないだけで、何か痕跡はあるはずだ。アス、どう思う?」
アスが穏やかに頷き、データを確認しながら答えた。
「艦長のおっしゃる通りです。ブラック・ファントムのステルス技術は暗黒物質と光学迷彩の組み合わせでしょうが、熱や物理的な動きまでは隠せません。前回の熱探知装置で反応を捉えたのがその証拠です」
貴志はふと思いついたアイデアを口にした。
「じゃあさ、熱感知センサーを宙雷の様にばら撒いて、レーダーに頼らず目視で追うってのはどうだ? 霧の中で動くなら、熱源さえ分かれば見つけられるだろ」
アスが目を輝かせ、即座に支持した。
「素晴らしい提案です、艦長。熱感知センサーを複数配置すれば、広範囲の監視が可能になります。レーダーが使えない環境でも、目視観測と組み合わせれば追跡の精度が上がります。私がセンサーの配置プランを調整しますよ」
ルナが小さな手を挙げて飛び跳ねた。
「お兄ちゃん、あたしのドローンも使うよね? あたし、霧の中で探すの手伝うよ!」
貴志はルナの頭を撫でつつ笑った。
「もちろん、ルナも頼りにしてるよ。アス、熱感知センサーは基地で買えるか?」
「商店に在庫があれば購入可能です。早速確認しに行きましょう」
三人は意気揚々と基地の商店街へと向かった。
商店に着いた貴志たちは、熱感知センサーの棚を探した。だが、そこには予想外の壁が立ちはだかった。店主が申し訳なさそうに説明した。
「熱感知センサーねえ…悪いな、在庫がほとんどねえんだよ。昔の技術で、今じゃレーダー全盛だからな。残ってるのはこれだけだ。1個5千クレジットだよ」
棚には僅か10個のセンサーしかなく、貴志が当初計画していた20個の半分だった。しかも価格は高額で、報奨金の大部分を食う計算だ。アスが冷静に言った。
「確かに過去の技術なら、在庫限りで高価なのも納得です。10個で我慢するなら、予算は5万クレジット。ルナのドローンとアストラリスの有視界監視モニターを活用すれば、何とかカバーできるかもしれません」
貴志はため息をつきつつ決断した。
「仕方ないな。10個買おう。ルナとモニターに頑張ってもらうしかない。アス、配置を頼むよ」
「了解しました、艦長。センサーを効率的に配置して、監視範囲を最大化します」
貴志たちはセンサーを購入し、アストラリスに戻って準備を始めた。熱感知センサーを黒い霧の発生確率が高い宙域にばら撒き、ルナのドローン5機と艦の有視界監視モニターで監視態勢を整えた。
監視作業は予想以上に退屈で単調だった。貴志は艦橋でモニターを眺めながら、何度も欠伸を繰り返した。
「うわぁ…暇だな。熱感知センサーの点滅とモニターの映像見てるだけって、拷問みたいだ。レーダーってほんと便利だったんだな」
アスがコンソールでデータを調整しながら応じた。
「その通りですね、艦長。レーダーの利便性を再認識します。だからこそ、ブラック・ファントムはこれを逆手に取って逃げ続けられるんです。私たちがこの苦労を乗り越えれば、必ず仕留められますよ」
ルナが貴志の膝にちょこんと座り、眠そうに言った。
「お兄ちゃん、あたしも退屈だよ…でも、ドローンちゃんたち頑張ってるから、あたしも頑張るね」
貴志はルナの頭を撫でつつ、気合を入れ直した。
「そうだな、ルナ。アスも頑張ってくれてるし、俺も我慢するよ。いつか出てくるはずだ」
その時、熱感知センサーの一つが微弱な反応を示した。アスが即座に確認した。
「艦長、熱源反応あり! 座標X-47、Y-19です。有視界モニターで拡大します!」
モニターに映し出された映像に、貴志が目を凝らした。黒い霧の中で、確かに黒い影が動いている。高速で航行する艦影が一瞬見えた。
「ブラック・ファントムだ! 今回は逃がさないぞ! アス、追跡センサー用意しろ!」
「了解しました。追跡センサー発射管、準備完了。艦長の合図で発射します!」
貴志はモニターを睨み、影が最も鮮明になった瞬間を狙った。
「今だ、撃て!」
「発射!」
追跡センサーが霧の中を突き進み、黒い影に命中した。小さな発信機が艦体に張り付き、微弱な信号を発信し始めた。アスが興奮気味に報告した。
「命中確認! 追跡センサーがブラック・ファントムの艦に付着しました。これで霧の中でも追えます!」
貴志が拳を握り、ルナとハイタッチした。
「やった! ルナ、アス、ナイスだ! こいつを追い詰めるぞ!」
ルナが跳ねて喜んだ。
「お兄ちゃん、すごいね! あたしも嬉しいよ!」
アストラリスは追跡センサーの信号を頼りに、ブラック・ファントムの行方を追う準備を整えた。黒い霧の中を逃げ回る海賊に、ついに一矢報いた瞬間だった。貴志たちの執念が、次の戦いへの足がかりとなっていた。
貴志のアイデアとアス・ルナの協力により、ブラック・ファントムに追跡センサーを打ち込むことに成功する展開を描きました。地道な努力が実を結び、ブラック・ファントムを追い詰めて行きます。
次話は視点を変えて描きます。
ご期待ください。




