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模型から始まる転移  作者: 昆布


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第20話:黒い霧の追跡

第20話として、アスの知識を活かした黒い霧の調査と、旧式の熱探知装置を用いた探索、そしてブラック・ファントムとのニアミスを描いています。貴志たちの努力が一歩前進するも、敵の神出鬼没さが際立つ展開です。

※表題を章から話に変更しました。

ブラック・ファントムの情報を基に、アストラリスは周辺宙域の哨戒を続けていた。貴志は艦橋でアスと作戦を練り直す中、彼女の知識に頼ることにした。

「アス、酒場で聞いた黒い霧って何か分かるか? ステルス艦なら、レーダー撹乱だけじゃなく、あの霧にも何か秘密がある気がする」

アスがコンソールを操作し、宙域の環境データを表示しながら答えた。

「艦長、周辺宙域で報告される黒い霧は、惑星暗黒物質の一種と考えられます。この物質はレーダーの電磁波を吸収する性質があり、通常の索敵システムを無効化します。ブラック・ファントムがこれを利用している可能性が高いですね」

貴志は眉を寄せた。

「レーダーが使えないなら、どうやって探すんだ? 目視じゃ広すぎるだろ」

「旧式の熱探知装置なら対応可能です。暗黒物質は電磁波(レーダー)を吸収しますが、熱放射までは遮断できません。ただし、探索範囲が狭く、惑星や小型船の熱源も拾ってしまうため、精度が低く、現在ではほぼ使われていません」

「熱探知か…確かに地球でも昔使われてたけど、今じゃレトロだな。でも、他に手がないなら試すしかない。アス、装置はあるか?」

「アストラリスの倉庫に予備が保管されています。調整すれば、黒い霧の中でも使えるようになりますよ」

「よし、頼む。ルナのドローンと合わせて、霧の出る場所を特定しよう」

アスが熱探知装置を設置し、ルナがドローンを展開して周辺宙域の調査を開始した。貴志は艦長席でデータを睨みつつ、待ちの姿勢を取った。


数日間の調査の末、アスが黒い霧の発生パターンを特定した。

「艦長、暗黒物質の濃度が高いエリアを3箇所特定しました。過去の海賊襲撃報告と照合すると、この宙域が最も出現確率が高いです」

貴志はスクリーンに映る座標を見て頷いた。

「ナイスだ、アス。ここで待ち伏せしよう。ルナ、ドローンをスタンバイさせておいてくれ」

「うん、お兄ちゃん! あたし、準備オッケーだよ!」

ルナが元気よく応じ、アストラリスは指定宙域に移動して待機態勢に入った。熱探知装置の狭い範囲を頼りに、貴志たちは息を潜めてブラック・ファントムの出現を待った。

しばらくすると、スクリーンに微弱な熱源が映し出された。アスが即座に分析した。

「艦長、軍用補給艦1隻と護衛駆逐艦4隻が航行中です。距離2光秒、こちらに向かっています」

「補給艦か…絶好の餌だな。霧が出たら、すぐ動けるように準備しろ」

その予感は的中した。補給艦の近くで黒い霧が湧き上がり、熱探知装置に新たな熱源が現れた。アスが叫んだ。

「高速巡洋艦、黒い霧から出現! ブラック・ファントムです!」

スクリーンに映ったのは、黒く塗られた流線型の艦体だった。高速巡洋艦がミサイルを一斉に発射し、護衛駆逐艦2隻が瞬時に航行不能に陥った。補給艦に横付けし、物資を略奪する動きが始まった。貴志が立ち上がった。

「今だ、アス! 最大戦速で突っ込むぞ! ルナ、ドローンを展開!」

「了解しました! 主機及び捕機最大出力、目標に接近します!」

「行くよ、お兄ちゃん! ドローンちゃんたち、出ておいでー!」

アストラリスが猛スピードで飛び出し、ルナの5機のドローンが先行して飛び立った。しかし、ブラック・ファントムの動きは素早かった。略奪を終えた瞬間、再び黒い霧が艦を包み、熱探知装置の視界から消え去った。

貴志がコンソールを叩いた。

「くそっ、到着間際に逃げられた! アス、追えるか!?」

「暗黒物質の濃度が急上昇し、また対象艦との距離が離れ熱源が途絶えました。ステルス機能と霧の組み合わせで、追跡は困難です…」

補給艦からの救難信号が届き、アストラリスは現場に急行した。だが、到着した時には既にブラック・ファントムの姿はなく、航行不能の駆逐艦と茫然とする補給艦の乗組員だけが残っていた。貴志は悔しさを噛み締めた。

「やっぱりステルス艦だ…霧の中で消えるなんて、予想通りだけど手強いな。アス、次はどうする?」

「熱探知のデータを基に、霧の発生パターンをさらに絞り込みましょう。ルナのドローンで小規模な索敵を増やせば、次は逃がしません」

ルナが拳を握って言った。

「お兄ちゃん、あたしもっと頑張るよ! あの黒い船、絶対やっつける!」

貴志はルナの頭を撫で、アスと目を合わせた。

「そうだな。今回ニアミスできただけでも進歩だ。アス、ルナ、俺たちでブラック・ファントムを仕留める作戦を練り直そう」

アストラリスは補給艦を基地に引き渡し、ブラック・ファントムとの遭遇を糸口に、次の戦いへ向けて準備を始めた。黒い霧の中の敵を追い詰めるため、貴志たちの挑戦は続いていた。

アスの知識と熱探知装置を活用してブラック・ファントムに迫るも、敵のステルス性に翻弄される展開を描きました。貴志たちの努力が少しずつ成果を上げて来ています。

次話もご期待ください。

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