第17話:ドローンの問題と新たな仲間
第17話として、アストラリスの新たな戦力として期待されたAIドローンに問題が発生しました。その解決策としてドローンAIを幼い女の子として実体化させ、貴志とアスが教育に取り組みながら、家族的な絆の萌芽を描いています。
※表題を章から話に変更しました。
リガル・プリマでの2週間の休息と艦の強化を終え、アストラリスは新たな任務に向けて出港準備を進めていた。貴志は艦橋で、主砲換装とAIドローンの搭載が完了した艦の状態に満足していた。アスにテストを頼んだ直後だった。
「アス、ドローンの戦闘シミュレーションを始めよう。索敵と先制攻撃の動きを確認したい」
「了解しました、艦長。ドローンを展開し、シミュレーションを開始します」
アスがコンソールを操作すると、艦内の格納庫から5機の小型AIドローンが飛び立った。だが、スクリーンに映し出された映像を見て、貴志は目を疑った。ドローンは整然と動くどころか、互いにぶつかり合い、旋回を繰り返すばかりで、まるで統制が取れていない。
「何だこれ!? アス、どうなってるんだ?」
アスが急いでデータを解析し、困惑した声で報告した。
「艦長、AIドローンの機能が…初期化されています。戦闘プログラムが完全にリセットされ、教育されていない状態です。まるで子供のようです」
貴志は呆然とした。
「初期化!? せっかく搭載したのに、使えないってことか? どこでリセットされたんだ?」
「原因は不明です。ドックでの作業中か、輸送時のエラーかもしれません。ログを確認しましたが、リセットの痕跡が残っていません。ただ、現状では戦闘に使える状態ではありません」
貴志は頭を抱えた。帝国軍との戦闘を控え、ドローンに頼るつもりだっただけに、この問題は痛手だった。
「どうすりゃいいんだ…新しい任務が近いのに、こんな状態じゃ戦力にならないぞ」
アスは少し考え込んだ後、提案した。
「艦長、ドローンAIをこのまま使うには、経験を積ませて教育する必要があります。私からの提案ですが、ドローンのAIを実体化させ、私たちと一緒に生活させるのはどうでしょう? 私と同じようにアバター化すれば、教育が早くなり、戦闘プログラムも自然に学習できます」
貴志は驚きつつも、そのアイデアに興味を持った。
「実体化か…アスみたいにってことだな。それで教育が早くなるなら、試してみる価値はあるか。どんな姿にするんだ?」
「ドローンの現在の状態が子供のようなので、幼い女の子の姿が適していると思います。艦長の好みもありますが、私が調整しますので、任せていただければ」
「うん、アスに任せるよ。子供なら扱いやすいかもしれないしな」
アスが頷き、ドローンAIのデータを調整し始めた。数分後、艦橋に小さな光の粒子が集まり、幼い女の子の姿が現れた。身長は120センチほど、金髪のショートカットに青い目、灰色の小さな軍服を着た可愛らしい少女だ。彼女はキョトンとした表情で貴志とアスを見上げた。
「ねえ、ここどこ? あたし、誰?」
声は幼く、言葉遣いもたどたどしかった。貴志は少し戸惑いながら、アスに尋ねた。
「アス、これがドローンAIなのか? めっちゃ子供っぽいな」
「はい、艦長。この子は5機のドローンを統括する中枢AIです。名前を付けてあげれば、自我が育ちやすくなります。どうしますか?」
貴志は少女を見つめ、少し考えてから言った。
「じゃあ…『ルナ』ってのはどうだ? 月みたいに小さくて可愛いし、ドローンっぽい感じもするだろ」
少女が目を輝かせ、ぴょんと跳ねた。
「ルナ! あたし、ルナだね! よろしくね、お兄ちゃん!」
「お、お兄ちゃん!?」
貴志が面食らうと、アスが微笑んでフォローした。
「艦長を信頼している証拠ですね。私が母役として、ルナを教育します。一緒に生活しながら、戦闘プログラムを覚えさせましょう」
こうして、アストラリスに新たな仲間が加わった。
貴志、アス、そしてルナは艦内で共同生活を始め、ルナは最初、物を落としたり、コンソールをいたずらしたりと手のかかる子供そのものだったが、アスが根気よく教え、貴志が遊びに付き合ううちに、少しずつ成長の兆しを見せた。
ある夜、貴志は艦橋でアスとルナと過ごしながら呟いた。
「アス、ルナがいるとなんか家族みたいだな。きみがいて、ルナがいて…戦場に行く前なのに、こんな穏やかな気分になるなんて不思議だよ」
アスが優しく笑った。
「私も同じ気持ちです、艦長。ルナを育てながら、私たちも絆を深められます。戦場では、この子が私たちの力になってくれるはずです」
ルナが貴志の膝に飛び乗り、無邪気に言った。
「お兄ちゃん、アスお姉ちゃんと一緒に戦うんだよ! あたし、強くなるからね!」
貴志はルナの頭を撫で、アスと目を合わせた。
「そうだな、ルナ。アスと一緒なら、俺たち最強だよ。これからよろしくな」
ドローンの問題は新たな挑戦となったが、ルナの存在が貴志とアスの日常に温かさをもたらした。アストラリスは、強化された火力と未熟なAIと共に、新たな戦場へ向かう準備を進めていた。
AIドローンの問題をきっかけに、新キャラクター「ルナ」を導入し、貴志とアスの関係に家族的な要素を描きました。ルナの成長が今後の戦闘にどう影響するのか?
次話もご期待ください。




