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模型から始まる転移  作者: 昆布


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第15話:対峙と報酬

第15話として、帝国軍と連合軍の対峙による緊張感溢れる戦況と、双方の戦略的判断による戦闘回避、アストラリスの戦果が認められる論功行賞の場面、そして貴志とアスの成長が報われる瞬間を描いています。

※表題を章から話に変更しました。


オルテガ・フロンティアの空白宙域は、帝国軍と連合軍の艦隊が対峙する戦場と化していた。帝国軍40隻、連合軍35隻が互いに睨み合う中、貴志はアストラリスの艦橋でスクリーンを見つめていた。アスが状況を冷静に報告した。

「艦長、帝国軍の編成は戦艦10隻、重巡洋艦20隻、駆逐艦10隻。こちら連合軍は戦艦8隻、空母2隻、重巡洋艦15隻、駆逐艦10隻です。連合軍側は既に空母から艦載機を発進させ、攻撃態勢を整えています」

スクリーンには、連合軍の艦載機が編隊を組んで飛び立つ様子が映し出されていた。しかし、帝国軍側には異様な存在感を放つ弩級戦艦が含まれていた。全長1キロを超えるその巨艦は、一撃で連合軍の艦を沈めるほどの長距離レーザー砲を備えている。アスが補足した。

「帝国軍の弩級戦艦『ギガント』、単独で空母を無力化する火力があります。このまま戦闘が始まれば、双方に壊滅的な損害が出る可能性が高いです」

貴志は息を呑んだ。

「全滅か…アス、俺たちはどう動くべきなんだ?」

「連合軍艦隊司令部の指示を待ちましょう。私たちの役割は偵察と支援です。単独で動くのは危険すぎます」

その時、連合軍艦隊司令部からの通信が入った。

「全艦に告ぐ。帝国軍との正面衝突は避け、長距離射程での牽制を行う。無駄な損失は戦略的敗北だ。準備せよ」

ほぼ同時刻、帝国軍旗艦『インペリアル・ドーン』の艦橋では、ヴィクター少将も同様の結論に至っていた。副官レナード大尉の進言を受け、彼は渋々頷いた。

「主作戦でもない局地戦ごときに、貴重な艦を失うのは馬鹿げている。長距離砲で一撃を見舞い、撤退だ。全艦に伝えろ」

双方の艦隊司令部が局地戦での全滅を避ける判断を下した瞬間だった。貴志はアスの指示でアストラリスのレーザー砲を準備しつつ、戦況を見守った。

「艦長、連合軍艦隊が斉射態勢に入ります。私たちも主砲で追従しますか?」

「うん、やろう。アス、タイミングを合わせてくれ」

連合軍艦隊の戦艦と重巡洋艦が一斉に長距離レーザー砲を放ち、青白い光線が宇宙を切り裂いた。アストラリスの4門のレーザー砲もそれに続き、帝国軍の駆逐艦に軽い損傷を与えた。対する帝国軍も弩級戦艦『ギガント』を先頭に斉射を返し、連合軍艦隊の重巡洋艦1隻が被弾して損傷を受けた。

だが、それ以上の戦闘は起こらなかった。双方の斉射を合図に、帝国軍は後退を開始し、連合軍も追撃せずに引き上げを命じた。アスが安堵の声を上げた。

「艦長、双方の撤退が確認されました。私たちも連合軍艦隊本隊と共に基地へ戻ります」

貴志は緊張が解け、肩の力を抜いた。

「助かった…アス、正面衝突しなくてよかったな」

「はい、艦長。この判断は賢明でした。私たちの戦果が無駄にならずに済みます」

アストラリスは連合軍艦隊と共にリガル宙域の基地へと帰還した。


基地に帰還後、連合軍第一艦隊司令部で論功行賞の式典が開かれた。貴志とアスは艦橋から通信越しに参加し、司令官クロノス大将の言葉を聞いた。

「傭兵艦『アストラリス』、貴艦の活躍は特筆に値する。海賊との遭遇戦での勝利、放棄基地の確保、そして帝国軍戦艦1隻撃沈、1隻大破、重巡洋艦1隻大破の戦果を認め、貴志艦長に特務少尉の階級を授与する。さらに報奨金として現金50万クレジットとエネルギー資源10単位を支給する。以後も連合軍への協力を期待する」

通信が切れると、貴志は目を丸くしてアスを見た。

「特務少尉!? 報奨金50万クレジット!? アス、俺たちすげえことになったぞ!」

アスは穏やかに微笑み、貴志の手を握った。

「おめでとうございます、艦長。いえ、少尉。これまでの努力が認められた結果です。私も誇らしいです」

貴志は照れながら笑った。

「アスのおかげだよ。戦艦撃沈なんて、俺一人じゃ絶対無理だった。報奨金で何かうまいもんでも食おうか」

「良いアイデアですね。でも、一部は艦の強化にも使いましょう。次の任務に備えるためです」

「そうだな。シールドも武器も、まだまだ強くできるか。アスと一緒なら、もっと大きな戦いもやれそうだ」

基地の窓から見える星空を眺めながら、貴志は新たな階級と報酬を手に入れた充実感に浸った。傭兵として異世界に転移して以来、彼とアストラリスは確実に成長していた。連合軍との協力関係が深まる中、次の挑戦が彼らを待っていることを、貴志は漠然と感じていた。

帝国軍と連合軍の対峙が戦闘回避に終わり、アストラリスの戦果が正式に認められる場面を描いています。貴志とアスの関係がさらに強固になり、次への準備が始まる転換点となっています。

次話もご期待ください。


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― 新着の感想 ―
階級がつけられてしまうと問答無用で軍属として命令されてしまうのではという恐怖がw
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