第10話:休息と新たな挑戦
第10話として、リガル・プリマでの休息を通じて貴志とアスの関係が深まりつつ、次なる任務への疑問、それが連合軍の侵攻作戦に関連しているという意外な展開、感情の動きと物語の緊張感を描きました。
※表題を章から話に変更しました。
リガル・プリマでの1週間の駐留は、貴志にとって初めての休息らしい時間だった。アストラリスのシールドジェネレーター交換作業が進む中、彼はアスと共に商業惑星の街を歩き回った。市場での買い物や、異世界の料理を楽しむ日々は、戦闘の緊張から解放される穏やかなひとときだった。
ある日、二人は惑星の展望台に足を運んだ。ガラス張りのテラスからは、リガル・プリマの赤みを帯びた大地と、遠くに浮かぶ宇宙船の航跡が見渡せた。貴志は手すりに寄りかかり、アスに呟いた。
「アス、ここに来てからずっと戦闘とか任務のことばっかりだったけど、こうやってのんびりしてるのも悪くないな」
アスは隣に立ち、ハイヒールの音を響かせながら微笑んだ。
「私も同意見です、艦長。この景色を見ていると、あなたと一緒に過ごす時間が特別に感じられます」
その言葉に、貴志は少し照れた。彼女の穏やかな声と、そばにいるだけで安心できる存在感に、彼は徐々に惹かれ始めていた。アスもまた、貴志の決断や優しさに触れるたび、彼への信頼を超えた感情が芽生えているようだった。
夕暮れ時、二人は市場で買った「スターダスト・ティー」を手に、艦に戻って艦橋で飲んだ。貴志がカップを手に持つと、アスがそっと近づき、彼の肩に軽く触れた。
「艦長、私にとってあなたはただの指揮官じゃありません。この宇宙で初めて出会った、大切な人です」
貴志は驚きつつも、その真剣な眼差しに心が温かくなった。
「俺も…アスがいなかったら、ここまで来れなかったよ。お前がそばにいてくれるから、頑張れるんだ」
二人は言葉を交わさず、しばらく星空を眺めた。お互いの存在が、異世界での孤独を埋め合うように感じられた瞬間だった。
休息も終盤に差し掛かったある日、貴志は次のステップを考え始めた。
「アス、そろそろ次の任務を探そうか。シールドも強化したし、準備はできてるだろ?」
「はい、艦長。アストラリスの状態は万全です。リガル・プリマの掲示板で任務を確認しましょう。私も同行します」
二人は傭兵酒場の傭兵掲示板へと向かった。そこには様々な依頼が並んでいたが、一つの任務が貴志の目を引いた。
『軍用駆逐艦向け任務:リガル-オルテガ航路の調査。報酬:エネルギー資源25単位、現金10万クレジット』
「報酬が抜群にいいな…でも、ただの調査って簡単すぎないか? アス、どう思う?」
アスは掲示板のデータをスキャンし、少し眉を寄せた。
「確かに任務内容が曖昧です。報酬の高さも不自然ですね。ただ、『軍用駆逐艦向け』と限定されている点から、特殊な依頼の可能性があります。チャレンジする価値はあるかもしれませんが、慎重に判断してください」
貴志は少し迷った。簡単すぎる任務に疑問を抱きつつも、アストラリスの能力を試すチャンスだと感じた。
「よし、チャレンジしてみよう。アスなら何かあっても対応できるだろ。受理しよう」
「了解しました。任務を受理し、出発準備を整えます。リガル・プリマを出港するのは明日になりますね」
貴志は頷き、アスと共に艦に戻った。新しい任務への期待と、どこか拭えない不安が胸に混在していた。
翌日、アストラリスはリガル・プリマを出港し、任務のブリーフィングを受けるため指定された宙域へと向かった。そこで初めて、任務の全貌が明らかになった。通信スクリーンに映し出されたのは、連合軍の制服を着た厳つい顔の将校だった。
「こちらは連合軍第一艦隊、第1分艦隊旗艦「タルタロス」。分艦隊司令「アレス大佐である」。貴艦『アストラリス』は、本任務において我が艦隊の一艦として登録された。任務内容は、リガル-オルテガ航路の調査及び、他宙域への侵攻作戦への参加だ。詳細は追って伝える。以上」
通信が切れると、貴志は呆然とした。
「えっ!? 侵攻作戦!? アス、何だこれ! ただの調査じゃなかったのか!?」
アスも一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに冷静さを取り戻した。
「艦長、どうやら任務の表記が意図的に簡略化されていたようです。連合軍が絡む以上、報酬の高さにも納得がいきます。私たちが組み込まれたのは、彼らの作戦の一環なのでしょう」
貴志は頭を抱えた。
「連合軍って…俺たち、傭兵なのに戦争に巻き込まれるのかよ。どうすりゃいいんだ?」
「選択肢は二つです。任務を続行するか、ここで撤退するか。ただ、護衛任務の掟を思い出してください。放棄は重罪ですし、アストラリスの戦力なら対応可能です。私がサポートしますから、艦長の判断にお任せします」
アスの言葉に、貴志は深呼吸した。確かに、アストラリスは海賊相手にも勝利した強力な艦だ。報酬も魅力的だし、ここで逃げるのは悔しい気がした。
「…分かった。アスがいるなら、やってみるよ。連合軍だろうが何だろうが、俺たちならやれるだろ」
「はい、艦長。私も全力で支えます。この作戦を乗り切れば、さらに大きな舞台に立てるかもしれません」
アストラリスは連合軍の艦隊に合流すべく進路を調整した。貴志とアスの絆が試される、新たな戦いが目前に迫っていた。
貴志とアスの関係が深まる休息の場面と、任務受理後の意外な展開を描きました。連合軍の侵攻作戦への参加という転換点が、緊張感を高めています。
次話もご期待ください。




