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模型から始まる転移  作者: 昆布


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第95話:塵の下に眠るガンマの技術

第95話として、2階の探索を終え、3階の探索で新たな部屋での出来事を、緊張感と楽しく探索が進む様子を描写しました。

【塵の下の技術と通貨】

金塊の発見に一行が沸いた後も、貴志は気を緩めなかった。


「油断せずに、部屋をくまなく調べよう。まだ何かあるかもしれない」


貴志の言葉に皆がうなずき、再び探索を開始する。部屋に点在する崩れた棚や積まれた箱、壁に並ぶ古い収納ケース。どれも長年の埃に覆われ、時折蜘蛛の巣が張りついていた。


アスは無言で棚の奥を調べ、ひとつの金属製の箱を開けた。

「……これは」


箱の中には、厚みのあるモニターと一体化した古いコンピューターが収められていた。キーボード部分は一体型で、外部端子の形状は現代のものと大きく異なっている。


「艦長、これは古代の情報端末。おそらく軍用、あるいは重要機密の保管用だったと思われます」

アスは慎重に埃を払い、端末の背面を確認した。「電源ユニットは崩壊していません。起動できる可能性はあります。データが無事なら、極めて貴重な情報が含まれているかもしれません」


貴志は興味深く覗き込み、思わず笑った。

「転生前のオレが使ってた古いノートパソコンに似てるな……タイムカプセルみたいなもんだ。持ち帰って起動させてみよう」


ルナがドローンでモニターを照らし、無邪気に言った。

「お兄ちゃん、これで昔のゲームとかできるかなー? ロボットの戦争とか、あったりして!」


「ゲームじゃないだろ、多分……でも面白そうではあるな」

貴志はそう返しつつ、端末を大事そうにシートで包んだ。


【紙幣と過去の匂い】

その間、ルミは部屋の隅に残された崩れた書架に目を留めた。重ねられた資料の束を慎重にどけていくと、そこから古びた束が出てきた。


「艦長、これも……紙幣みたい」


ボロボロで破れかけた紙幣は、先ほどの紙幣ほど崩壊していなく黄ばんだ色合いの中にかろうじて印刷された人物像や数字が浮かんでいた。慎重に両手で束を支えながら、ルミは静かに微笑む。


「なんだか、手が震えるね……人がいた証って感じがする」


アスが側に寄り、紙幣をスキャナーで分析した。

「当時の政府通貨。主に地球圏外のコロニーで使われていた型です。保存状態は悪いですが、文化的には価値があります。コレクターなら、高値で取引されるでしょう」


キャスがすかさず紙幣を手に取り、ふわりと振ってみせた。

「お金だよー! 使えないけど、お宝っぽいねー! 額面は……これ、10万単位!? すっごーい!」


ルナがドローンを操作し、紙幣にスポットライトを当ててくるくると旋回する。

「お兄ちゃん、このお金って昔の人の夢とか希望とか入ってるのかな? 面白いねー、紙で価値があったなんて!」


「そうだな。時代の象徴みたいなもんだ」

貴志は感慨深く呟きながら、その紙幣も慎重に保存袋へと入れた。


【探索の終わり、そして次へ】

一通り探索を終えたアスが、全員を振り返って冷静に総括した。


「艦長、この階層の貴重品は以上です。金塊、古代端末、そして紙幣。価値としては金塊が最上ですが、情報資産も重要です。現段階では、これが最大の成果と言えるでしょう」


キャスが少し肩をすくめながら、にこやかに言った。

「金塊ゲットで満足だけどさー、もっとド派手なお宝、次の部屋で見つけたいなー!」


ルナがドローンを抱えて元気よく跳ねる。

「お兄ちゃん、次行こうよー! もっとすごいの、きっとあるよー!」


ルミは金塊を大切に見つめながら、優しく頷いた。

「私も楽しみ。これだけでも十分嬉しいけど……奥には、もっと秘密がある気がする」


貴志は皆の顔を見渡し、頷いた。

「よし、金塊と情報、それに紙幣……どれも価値ある成果だ。だけど、遺跡の奥にはもっと重要な何かがあるはずだ。気を引き締めて、次に進もう」


彼の声に、全員が頷いた。


仲間たちと共に、貴志は再び奥にある階段に向かい歩き出した。その奥には、かつて栄え、滅びた文明の記憶が、まだ静かに眠っている。


【3階への挑戦とセキュリティの謎】

埃と錆の匂いが立ち込める階段を、6人は慎重に上っていった。ドローンが発する淡い白光が、古びたコンクリートと金属の継ぎ目を照らし出し、長年閉ざされていた空間に静かに命を吹き込んでいた。


貴志は先頭で手すりに軽く触れながら、歩を進めていた。

「この感じ……」

彼は低く呟き、ふと目を細める。

「転生前の地球で、オフィスビルの非常階段を登ったときのことを思い出すよ。手すりの形、照明の配置、床の感触、全部そっくりだ。きっとこの場所も、昔は働く人たちで賑わってたんだろうな」


彼の言葉に、後ろからルナがドローンを操作しながら元気よく応じた。

「お兄ちゃん、今は真っ暗だけど、ドローンでピカピカ照らすよー! 階段も探検みたいで楽しいねっ!」


キャスはリュックを揺らしながら、陽気に笑う。

「ねぇ貴志さん、3階には金塊がもっともっといっぱいあるかもよ? ぜーんぶ持ち帰れたら、豪邸建てられるかも~♪」


ルミは手すりにそっと手を添えながら、小さく頷いた。

「階段って、ちょっとドキドキする。でも、こうしてみんなと一緒なら……探検って、本当に楽しいって思えるの。ふふっ」


その後ろで、アスが冷静に足元をスキャンしつつ警告を発した。

「艦長、金属疲労がひどい箇所が数段あります。踏み抜く危険は小さいですが、重心に気をつけて。全員、歩幅を合わせてください」


「了解。慎重にな」

貴志は頷き、皆に注意を促しながら歩を進めた。


そして数分後。


古びた階段の終わりに、重厚な金属製の扉が姿を現した。ドアは高さ2.5メートル、幅1.5メートル。中央にパネルが埋め込まれ、まるで現代の電子錠のような端子とモニターが設置されていた。


「……扉だな。これは……電子制御か」

貴志は扉に手を触れ、パネルを確認した。

スクリーンには微かに光が灯り、“ERROR: USER AUTHENTICATION REQUIRED”と古代言語で表示されていた。


「凄い。1000年は経っているのに、まだパワーは残ってる……でも、セキュリティが生きてるのか」

アスが前に出て、携帯端末を取り出し接続を試みる。


「艦長、こちら側の信号ポートは旧式ですが、プロトコル変換すればハッキング可能です。ただし、解除には時間がかかるかもしれません。ロックが厳重です」


キャスが覗き込みながら、目を輝かせた。

「ねえねえ、この奥、やっぱり超お宝があるってこと!? 警備されてるって、そういうことでしょ!」


ルナもすぐに反応する。

「うわー、なんかRPGのダンジョンの最上階って感じ! ボスとかいないといいなー!」


ルミは扉をじっと見つめ、静かに言った。

「この扉、何を守ってるんだろう……金塊より、もっと大事なものかな?」


「だろうな」

貴志は確信に満ちた声で頷く。

「セキュリティが生きてるってことは、まだ“守らなきゃいけないもの”があるってことだ。生きた記録か、封じられた技術か、あるいは……」


一瞬の沈黙のあと、アスが冷静に提案した。

「5分、時間をください。システムに侵入して、解除を試みます。万一、セキュリティAIが残っていた場合には、応答があります」


「わかった。後ろはオレが見る。キャス、ルナ、ルミ、動くなよ。万一の衝撃トリガーに備える」

貴志が優しく言いながら、腰の武器ホルスターに手を添えた。


薄暗い階段の最上階で、一行は息を潜めた。

ドローンのライトが青白く扉を照らす中、アスの指先が端末をすばやく操作する。パネルの文字が次々と流れ、内部プログラムが解析されていく。


貴志は静かに思った。


この先にあるのは、単なる財宝じゃない。

歴史だ。記憶だ。……そしてたぶん、真実だ。


そのとき、パネルの表示が切り替わった。

《認証解除完了――ようこそ、Administrator-02》


貴志は頷き、目を細めて先を見た。

「行くぞ。ここからが、本当の核心だ」


【責任者室の開扉と“記録の守護者”】

カチリ。


電子錠が微かな音を立てて開錠された。


低く、重い音が響く。

「ゴウン……ガゴン……」

扉の錠が、ゆっくりと外れる音が階段にこだました。

扉の継ぎ目に蓄積していた粉塵がふわりと舞い、時間の流れを刻むかのように空気がざわめいた。

そして、重たい扉が完全に開かれたその先には。


「開いた……!」

キャスが小声で叫び、ルナがドローンを奥に飛ばす。


「わー……! 真っ暗だけど、なんか奥が広そうだよー!」


アスが手を止め、淡々と報告する。


「開錠完了。艦長、内部はまだ未確認です。光源を優先してドローン投入を推奨します」


「了解。ルナ、先にドローンを頼む」

貴志の声に即応し、ルナが目を輝かせて操作パネルに触れる。


「了解だよー! いってらっしゃい、ドローンちゃん!」


ピィ――と音を立て、ドローンが滑るように扉の向こうへ進入する。

ドローンのカメラが映し出したのは、通常のオフィスとはまるで異なる空間だった。


「うわ……」

キャスが息を飲む。


「ここ、全然雰囲気違うよ……なんか、すごく綺麗……」


そう、それは荒廃した3階の他の部屋とは明らかに異なっていた。

床には厚みのある灰色のカーペットが敷かれ、壁面は高級感のある木目調のパネルに覆われている。大型のデスク、モニター、書類棚のような構造物が整然と並び、中央には円形のホロテーブルが鎮座していた。


貴志が思わず唸る。


「……こりゃ、完全に重役の部屋だ。転生前で言えば、役員室か……いや、研究管理者の指令室って感じかもしれん」


「確かに空調系統も独立してた可能性が高いですね」

アスが頷く。

「それが内部の保存状態の差に繋がったのかと。特に、あのホロテーブル……」


「うん。起動しそうだ」

ルミがホロテーブルの中央に光るインジケーターを見つけ、小さく声を上げた。


「これ……通電してるかもしれない」


「触れてみる価値はありそうね!」

キャスがわくわくしながら進みかけるのを、アスが制止する。


「待ってください。センサー反応あります。反応範囲は室内……静止型セキュリティAIの可能性あり。ルーチン起動の兆候がある」


貴志が即座に判断する。


「全員、ゆっくり中に入れ。アス、先にプローブを飛ばして状況を確認しろ。念のためブラスターを解除しておけ」


「了解」

アスがサブ端末を操作すると、球形のプローブがホロテーブルの上を滑るように移動し、中心部のパネルに接続された。


数秒後。


「ピピッ――」


室内の空気が変わった。


ホロテーブルの上部が回転し、突如として青白いホログラムが立ち上がる。人型を模した像が、静かに光の中から姿を現した。


《……アクセス権限確認中……》

《データ保持者プロトコル“Code-Alpha-04”起動》

《管理者ID:未登録。外部アクセス経路により暫定権限発行》


像はゆっくりと顔を上げ、やや機械的な女性の声で語り始めた。


「ここはプロジェクト・ガンマの中央記録保管室です。あなたがたは、情報継承権限を仮承認されました。セキュリティ・レベル:制限付き公開」


ルナが目を丸くしながら声を上げた。


「わぁ……喋ったよ、お兄ちゃん! この人、ホログラムなのに、ちゃんと話してる!」


「……記録を守る存在、か」

貴志は神妙な面持ちで前に出る。


「あなたは、この遺跡の記録管理者……つまり、管理AIか?」


「その通りです。私は“オフィシア・ガンマ。情報記録保持ユニット”。あなたがたが来訪者であり、記録保持目的と確認されました。アクセス承認され次第、限定的な記録の開示が可能です」


アスが前に進み、端末を提示する。


「この端末に転送できるデータはありますか?」


「はい。ただし、機密度分類により一部は再認証が必要となります。次の命令をどうぞ」


キャスが目を輝かせながら口を挟んだ。


「ってことは、ここにすっごい記録とか秘密とか、あるんだよね!? ね!? 昔の超技術とか、空飛ぶ車とか出てきちゃうの!?」


ルミはホロ像を見つめたまま、小さく言った。


「ここにいた人たちの、記憶が残ってるのかな……?」


貴志が深く息を吸い、決意を込めた表情でAIに向かって言う。


「俺たちは、この星の真実を知りたい。そして、もしまだ使えるものがあるなら、それを持ち帰って未来に繋げたい」


ホロ像は静かに頷いた。


「確認しました。初期記録を解放します。プロジェクト・ガンマに関する第一層データを再生します」


そして。


ホロテーブルが再び光を放ち、空中に浮かび上がったのは、都市のような構造物、巨大な実験施設、そしてそこに暮らしていた人々の映像だった。


映像の投影が終わると、3Dホログラムの背面に重厚な扉が現れ、扉が開こうとしていた。


その先には何が待っているのか…

3階でのセキュリティエリア探索とセキュリティ解除をワクワク感たっぷりに描きました。

次話では、新たな出会いが?

ご期待ください。

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