第94話:休憩、そして探索
第94話として、ちょっとした休憩から始まり、やっと初めてのおたからを見つけるところまでを楽しく描きました。
【遺跡の中のひととき】
静寂に包まれた古代遺跡の一室に、わずかだが確かな人の気配が満ちていた。ルナの超小型ドローンが天井近くをふわりと浮遊しながら、広く明るい照明を投下しており、そのおかげで部屋はほのかに温もりを帯びていた。かつての機械たちが沈黙したこの空間に、今は静かに湯が沸く音と笑い声が響いている。
「お兄ちゃん、ドローンでずっと照らしてるよー! 休憩もバッチリだねっ♪」
ルナが誇らしげにドローンを操作しながら、にこにこと笑顔を浮かべる。
「ルナ、いつもありがとう。君のライトは、本当に頼りになるよ!」
貴志は優しく微笑みながら、ルナの頭を軽く撫でた。ルナは嬉しそうに目を細めた。
アスはいつものように冷静な動作で、床に広げたシートの上に小型の簡易ポットを設置し、持ち込んだ純水パックを接続して静かにスイッチを入れる。すぐに湯気が立ち上り始めた。
「お茶を淹れます。少しリラックスしてください」
淡々とした口調ながら、その言葉にはどこか柔らかさがあった。
「アス、気が利くなぁ。お茶、楽しみだよ!」
貴志がシートに腰を下ろしながら、穏やかな笑みを浮かべる。彼の言葉に、アスの口元がわずかに緩んだ。
その頃、キャスは大きめのリュックから、なぜかやたらと丁寧にパッキングされたスナックセットを取り出していた。
「貴志さん、お菓子持ってきたよー! クッキーとドライフルーツと、ちょっとだけグミもねー! 遺跡でおやつ、最高すぎるよねー♪」
そう言いながら、彼女は器用に包装を解いてクッキーを頬張る。
「私のお菓子もあるよー♪ お兄ちゃん、チョコ食べる? エネルギー補給しよっ!」
ルナも元気よくチョコレートを取り出し、貴志の膝の上にぽんと乗せる。
「おお、ありがとう。遠慮なくいただきます!」
ルミは静かに笑みを浮かべながら、手提げ袋の中からナッツと小分けのビスケットを取り出していた。
「みんなの分もあるよ。ゆっくり食べて、元気出そうね」
四人の少女たちが囲む休憩シートには、まるで遠足のような明るい雰囲気が漂っていた。だが、ただの軽やかさではなく、ここまで無事に探索を進められたという安堵と信頼感が、確かにそこにあった。
アスが人数分のカップにお茶を注ぎ終え、落ち着いた声で言った。
「どうぞ。温かいうちに。……でも、食べ過ぎには注意してくださいね。まだ、探索は続きますから」
「はーい!」
キャスとルナが元気よく返事を返す。
「……アスも、少し休んで。お茶、ありがとう」
ルミが静かにアスの隣に座り、そっと微笑みかけた。アスは一瞬、目を伏せてから、小さく頷いた。
【遺跡の核心へ】
休憩の穏やかな時間が流れる中、貴志はアスの隣に座りながら、そっと問いかけた。
「なあ、アス。この部屋にある箱の中、貴重品とか、あると思うか?」
アスは少し考え、部屋の中央付近にある重厚な金属製の箱に視線を移した。
「この箱、金庫のようです。構造的にはデータストレージまたは高価値資材の保管目的でしょう。中身次第ですが…かなり重要なものが入っていた可能性はあります」
「開けられそうか?」
「はい。幸いにもこの時代のロック装置はバイオキーや多層パスコードではなく、物理磁気ロックと簡易暗号式。手持ちのオートロック解錠システムで対応可能です」
貴志が嬉しそうにうなずいた。「よし、それなら期待できるな。…お宝、待ってるかもしれんな」
「ですが……艦長」
アスの目が真剣な色を帯びる。
「開封は慎重にお願いします。情報端末や武装デバイス、あるいは封印されていた生体反応物の可能性も、ゼロではありません」
「……了解。そうやな。ここまで来て油断はあかん」
彼は最後の一口のクッキーを噛み砕きながら、じっと金庫を見つめた。
【静かなる緊張の余韻】
ルナはドローンのライトを微調整しながら、「お兄ちゃん、開けるとき、ちゃんと私も映すからねっ!」と笑い、キャスはすでにブラスターを腰に戻しながら、浮き足立っていた。
「わくわくしてきたー! 絶対、中に何かあるよー!」
ルミはそっと自分のカップを抱え、瞳を静かに輝かせていた。
「この空間が、1000年も前からずっと残ってて、私たちに見つけられるのを待ってたのかもね……」
そして。
休憩が終わり、探索は再び再開される。
この部屋の中に眠る記録と遺物が、彼らの旅の意味を変えていくことになると、誰もまだ知らなかった。
【金属箱の解錠と、新たなの発見】
短い休憩を終えた一行は、部屋の中央に鎮座する古びた金属箱、重厚な蓋と腐食した外装に包まれたそれに、慎重に近づいていた。千年の静寂を破るように、キャスとルナが興奮を抑えきれずに貴志に詰め寄る。
「貴志さん、今度はちゃんとしたお宝はー? お宝あるよねー!?」
キャスは目を輝かせ、箱の周りをぴょんぴょん跳ねるように回っていた。
「お兄ちゃん、早く開けてみてよー! 何かすごいもの出るよー!」
ルナはドローンを箱のすぐ上に飛ばし、ライトを一点集中で照射する。ドローンの光が金属の表面に反射して、鈍い輝きを放っていた。
アスはそんな二人の様子を無言でかわし、静かにオートロック解錠システムを起動した。彼女の手は確実かつ素早く動き、端末から箱の古いロック機構へ細いケーブルを接続する。表示パネルが青く点滅し、次の瞬間。
「カチッ」
乾いた音が響いた後、ゆっくりと蓋が緩み始めた。そして、内部の圧が解放されたのか、「ゴゴン…」という重い金属音とともに蓋が開き。
モワッ…
箱の中から長年封じ込められていた埃と空気が噴き出した。一瞬にして部屋に細かい粒子が舞い上がり、ルナとキャスが慌てて後ずさる。
「わっ、ホコリまみれーっ!」
「うわああ、目に入ったー!」
「みんな、離れてろ!」
貴志が即座に指示を出し、アスが腰に装備していた携帯エアーブローを取り出して起動した。高圧の空気が「ブオオオッ」と箱の中へ吹き付けられ、灰のような埃が一気に宙を舞った。数秒後、視界がようやく晴れてきた。
【錆とコイン、そして金の棒】
最初に姿を現したのは、無数の薄くて丸い金属片だった。表面はくすみ、赤茶けていたが、どこかしら丁寧に作られていた。
「これ、コイン……か?」
貴志がひとつ手に取り、指先で軽く弾くと、微かな金属音が鳴った。
アスが即座に分析を開始。携帯スキャナーをかざし、画面に表示される構成成分と年代の推定値を見つめながら、冷静に言った。
「古銭ですね。鉄と銅が主成分です。一部に希少金属が混ざっていますが、歴史的価値が中心でしょう。収集家には需要がありますが、現実的な資産価値は低いと思われます」
「えーっ、コインかぁ……」
キャスが少しガッカリしたように肩を落とした。
「お宝って感じじゃないよー。もっとこう、キラキラしたのがさー!」
しかし――その直後、アスの動きが止まった。彼女は箱の底に注意を向け、何かを慎重に取り出した。
それは、確かにキラキラしていた。
「……艦長、これは……金です。間違いありません」
彼女の瞳が、珍しく喜びに近い光を帯びていた。
「純度は高め。腐食も少なく、加工痕がありません。……インゴット、いや、鋳造前の延べ棒かもしれません」
その言葉に、部屋の空気が変わった。
「お宝だー! 金だよー! やったねーっ!!」
キャスが思わず声を上げ、跳ねるように喜んだ。
「お兄ちゃん、金だよー! すごいよー! 私たち、お金持ちじゃないっ!?」
ルナもドローンを旋回させながら叫び、ドローンはまるで嬉しそうに空中でくるくる回っていた。
ルミは金の棒をそっと見つめ、掌を口元に当てながら、感嘆の息を漏らす。
「……すごい……こんなに綺麗な金属、初めて見た。……嬉しいね、みんな」
貴志はアスから金の棒を受け取り、じっと眺めた後、ゆっくりとうなずいた。
「……アス、ナイスだ。よう見つけてくれた。キャス、ルナ、ルミも、よう動いてくれたな」
彼は皆を順番に見渡しながら、穏やかに言った。
「この遺跡は銀行や会社のような、お金や貴金属を扱う場所だったらしい。やっぱりタダもんやないな……」
【静かなる予感】
そのとき、アスが箱のさらに奥を覗き込み、ふと眉をひそめた。
「……艦長。まだ何かあります」
彼女が手を差し入れ、そっと取り出したのは、小型の記録媒体らしき円盤状の装置だった。埃をぬぐうと、表面には不明な言語の刻印と、再生用のインターフェースらしき端子が確認できた。
「これ……ただの金庫じゃなかったみたいだな。財宝と、記録……両方入ってた」
一行の目に、再び探究心の光が宿る。
未知の情報。失われた歴史。まだ眠る何か。
金の発見は、ほんの序章に過ぎなかった。
遺跡でのちょっとしたひとときから、おたから発見まで、ワクワク感が楽しめるように描きました。
次話では、驚きの大発見に遭遇します。
ご期待ください。




