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第1話 賢者の帰還

妄想から構想を経て、ようやく出発です。

ダンジョン都市「ヴァルハラ」の探索者ギルド。そこには沈痛な空気が漂っていた。灰魔導士フィオーレのために、遺体のない葬儀が行われていた。彼女は1年前、仲間を救うために転移魔法の罠に飛び込み、二度と戻ってこなかった。フィオーレが消えた後も、仲間たちは彼女を探し続けた。リンクアイテムが微弱ながら反応を示していたからだ。しかし、ついにその反応が途絶えた。それが、今日の葬儀を行う決定的な理由だった。




葬儀に集まった探索者たちは、フィオーレの仲間たちを見つめ、静かにその場に立っていた。リーダーのナイト、ガライスは、仲間たちと共に祭壇に飾られたフィオーレの短剣と魔導士服を見つめ、深い息をついた。


「こんな形で彼女と別れることになるとは……」


彼の低い声がギルドホールに響いた。ガライスはこれまで数多くの戦場をくぐり抜けてきたが、フィオーレを失ったことは彼にとって特別な痛みだった。彼女はパーティにとって不可欠な存在であり、彼女の犠牲がなければ、仲間たちは今ここにいなかっただろう。




ヴァネッサは、黒魔導士としてパーティを支えてきたが、今はその冷静さを失い、静かに涙を流していた。


「彼女がいなければ、私たちはここにいなかった……。いつも自分を犠牲にして、私たちを助けてくれていたのに……」


フィオーレは、戦闘で目立つことはなかったが、彼女の魔法が生活面や物資管理、移動中のサポートにどれほど貢献していたか、仲間たちは痛感していた。




サラもまた、白魔導士として仲間たちを守る役割を担っていたが、フィオーレの献身に対してもっと感謝すべきだったと後悔していた。彼女はフィオーレの短剣に手を合わせ、涙ながらに呟いた。


「フィオーレがいなかったら、私たちは絶対にここまで来られなかった……もっと早く、彼女に感謝すべきだったのに……」


サラはフィオーレがいつも気遣ってくれていたこと、そして彼女が少ない魔力を駆使して仲間たちを支えていたことを痛感していた。




しかし、最も深い後悔を抱いていたのは、戦士のヴォルフだった。彼は前衛で仲間を守る役割を担っていたが、彼が罠にかかったことでフィオーレが犠牲になってしまった。


「……俺のせいだ……。俺が罠にかかったせいで、フィオーレが……」


ヴォルフの声は震えていた。彼はずっと自分を責め続けていた。フィオーレは、彼を助けるために転移魔法の罠に飛び込み、そのまま行方不明になったのだ。彼女は仲間を守るために命を投げ出した。しかし、彼女の犠牲がヴォルフにとってさらに重いものとなっていたのは、後に知ることになる彼の家族の状況だった。




ティナは、フィオーレを姉のように慕っていた狩人だった。彼女は涙を拭いながら呟いた。


「フィオーレがいなかったら、私の弓もすぐに使えなくなっていた……彼女がいつも、私たちのために動いてくれてたから、私は安心して戦えたんだ……」


フィオーレは、ティナの弓矢や装備を魔法で管理し、物資を効率よく保管する役割を果たしていた。彼女の細やかなサポートが、パーティ全体の戦闘力を高めていたのだ。




カゲロウは、パーティの一員であり、忍者として隠密行動や罠の解除を担当していた。しかし、今回ばかりはその役割を果たすことができなかったことに深い自責の念を抱いていた。


「俺が……もっと早く罠に気づいていれば……」


彼は、フィオーレが罠にかかる瞬間を思い返し、自分の無力さを痛感していた。彼の迅速な行動があれば、フィオーレはまだ生きていたかもしれないという思いが彼を苦しめていた。




ギルドホール全体が静寂に包まれた中、突然、後方から一つの声が響いた。


「だれの葬儀?」




その声に、場内は一瞬で凍りついた。集まった冒険者たちは一斉に声の主に視線を向けた。そして、目を疑うような表情を浮かべた。


「……え?」


その声の主は、なんとフィオーレ本人だった。彼女は、まるで何もなかったかのように、元気そうな姿で立っていた。灰色の魔導士服を着た彼女は、全く疲れた様子もなく、明るい笑顔を浮かべていた。




フィオーレは、呆然としている仲間たちを見つけると、手を振りながら声をかけた。


「ただいまー!」


その声は軽やかで、まるで自分が1年間も行方不明になっていたことをまるで意識していないかのようだった。




ホール全体が静まり返る中、フィオーレは歩み寄り、仲間たちの目の前に立った。そして、ヴォルフに向かって笑顔で話しかけた。


「ヴォルフさん、妹がいないから心配してたけど、隣のおばちゃんがヴォルフさんの家にいるって教えてくれて安心したよ!ありがとうね~!」


フィオーレは、呑気な口調でそう言った。彼女の無邪気な笑顔に、ヴォルフは言葉を失い、仲間たちも戸惑った表情を浮かべていた。




ガライスがようやく口を開き、声を震わせながら尋ねた。


「フィオーレ……本当に、お前なのか?」


彼の目には、まだ信じられないという表情が浮かんでいた。




フィオーレは笑顔を浮かべたまま、元気よく答えた。


「うん、私だよ!ちょっといろいろあったけど、無事に帰ってきたんだよ。ごめんね、みんな心配かけちゃって!」


その明るい調子は、彼女が1年間も行方不明だったことをまるで気にしていないかのようだった。




ヴァネッサは驚きのあまり、呆然と立ち尽くし、声を震わせながら呟いた。


「本当に……フィオーレなの?」


彼女は信じられないという表情でフィオーレを見つめていた。




サラもまた、震える声で尋ねた。


「フィオーレ……あなた、本当に生きてたの?」


サラの目には、混乱と驚きが浮かんでいた。




「うん、もちろん!帰ってくるまでに少し時間がかかっちゃったけど、まあ無事だったから大丈夫!」


フィオーレは明るく言ったが、その口調はまるで長い旅から帰ってきたかのようだった。彼女にとって1年間の行方不明は深刻な出来事ではなく、単に時間がかかった冒険の一部だったようだ。




仲間たちは、彼女の元気な様子を見て、次第に現実を受け入れ始めていた。フィオーレは確かに目の前に立っている。そして彼女は、何事もなかったかのように微笑んでいた。




「でも、俺たちは1年間ずっとお前を探していたんだ……」


ヴォルフが絞り出すような声で言った。彼は、フィオーレが自分を助けるために罠に飛び込んだ瞬間を、今でも鮮明に覚えていた。そして、その責任が彼をずっと苦しめていた。




「本当にすまない、フィオーレ。お前が俺を助けるために命を賭けたって、ずっと思ってたんだ」


ヴォルフは深く頭を下げ、フィオーレに謝罪した。彼の目には、1年間抱え続けてきた後悔と罪悪感がにじんでいた。




フィオーレは、ヴォルフの様子に少し驚いたが、すぐに柔らかい笑顔を浮かべた。


「そんなこと気にしないでよ、ヴォルフさん。私は全然平気だったし、みんなが無事で何よりだよ。それに、妹もヴォルフさんが面倒見てくれてたんでしょ?本当にありがとうね!赤ちゃんにも会わせてね」


フィオーレは軽い調子でそう言い放ったが、その無邪気な言葉はヴォルフをさらに動揺させた。




「フィオーレ……お前、息子が居るのを知っていたのか……?」


ヴォルフはフィオーレをじっと見つめ、彼女が妻のお腹に命が宿っていたから自分を助けたのだと感じた。




ガライスがフィオーレの肩に手を置き、静かに言った。


「フィオーレ、お前が戻ってきてくれて、本当に嬉しい。みんな、ずっとお前のことを心配してたんだ。だが、お前が無事で何よりだ」


ガライスの目には、安堵と感謝が浮かんでいた。彼もまた、1年間の捜索が終わり、フィオーレが生還したという奇跡に感動していた。




ヴァネッサも、フィオーレの元気な様子を見て、ようやく笑みを浮かべた。


「フィオーレ……無事でいてくれてよかった。本当に……」


彼女は涙を拭いながら、心からの感謝を込めて言った。




サラも涙を流しながら笑顔を浮かべ、フィオーレを抱きしめた。


「もう二度といなくならないでね……」


サラは、フィオーレのぬくもりを感じ、彼女が生きて戻ってきたことを実感していた。




「みんな、ありがとうね!もう心配かけないから、大丈夫だよ」


フィオーレは明るく言い、仲間たちの輪に戻った。




ギルドホールには再び活気が戻り、フィオーレの帰還に集まった冒険者たちも驚きの声を上げていた。多くの者が、彼女が戻ってきたことに驚愕しながらも、次第に笑顔を取り戻し、フィオーレを迎え入れた。




「フィオーレ、お前が生きて帰ってきたなんて……信じられないな!」


「本当におかえり!無事でよかった!」




集まった冒険者たちは次々とフィオーレに声をかけ、彼女の帰還を喜んだ。誰もが彼女の生還を奇跡だと感じていた。1年間行方不明だった探索者が、まるで何事もなかったかのように元気な姿で帰ってくるなど、誰も予想していなかったことだ。




ガライスは、集まった冒険者たちに向かって静かに言葉を放った。


「フィオーレは、1年間行方不明だったが、こうして無事に戻ってきた。彼女は我々にとって特別な仲間だ。彼女が戻ってきたことを、我々全員で喜ぼう」


その言葉に、冒険者たちは大きく頷き、フィオーレの帰還を祝う声がギルドホール中に響き渡った。




ヴォルフはまだその場に立ち尽くしていた。彼は心の中で何かが変わるのを感じていた。フィオーレが自分を助けた理由、そしてその犠牲の大きさを彼は知っていたが、彼女がその事実を知らないことに気づき、複雑な思いが胸を締め付けた。彼女が助けたのは、ただの仲間ではなく、新しい命も含まれていたのだ。だが、その事実を彼女に伝えるべきかどうか、彼は迷っていた。




「……フィオーレ、ありがとう……」


ヴォルフは静かにそう呟いたが、その言葉は誰にも聞こえなかった。




一方、フィオーレは笑顔でギルドホールを見渡し、みんなに元気よく手を振った。彼女にとって、この瞬間がどれだけ特別なものなのかはまだわかっていない。彼女が戻ったことで、仲間たちの間に再び絆が深まり、冒険者たちも彼女の無事を祝福していた。




「さあ、みんな!これからも一緒に頑張ろうね!」


フィオーレは明るく声をかけ、仲間たちを鼓舞した。彼女の無邪気な笑顔は、1年間の苦しみや悲しみを忘れさせ、再び仲間たちを元気づけた。




こうして、フィオーレの帰還により、仲間たちは再び一つに戻った。彼女の存在がどれだけ大切だったか、改めて痛感しながら、彼らはこれからも冒険を続けることを決意した。そして、ヴァルハレムへの新たな挑戦が再び始まろうとしていた。




フィオーレが無事に戻ってきたことは、彼らにとって最大の喜びであり、これからも彼女と共に歩んでいく決意を胸に、仲間たちは新たな冒険に向けて動き出すのだった。

インスタグラムで世界観のイメージ画像を載せてます。良かったら見てください。

@wizardzcat

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