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序章2 ー二人の初心者と管理者ー

目を覚ますと、高く日が上っている。

どうやらかなり長い間眠ってしまったようだ。


汗もかなりかいている。確かこの宿には温泉がついていたはずだ。僕はタオルと着替えを荷物から引っ張り出し、温泉へ出かけた。


体の汗を流し、お湯につかりながら、昨日の世界の声のことを思い返した。


ースキル、<管理者>を習得しました。習得に伴い権限の譲渡を開始します。

ーこれににより一部スキルを制限します。


これを言葉の意味のままで捉えると、何かを管理するスキルを手に入れ、その影響で何らかのスキルが封じられた。と考えるのが妥当だ。このままだと何が起こっているのか分からない。

近くのダンジョンの上層で今できること、できないことの整理をしなければいけない。今からでも向かって、自分の身体に起きたことを調べなければいけない。


そう思い、お湯から上がった。


部屋で軽く武器を整え、昨日潜った迷宮の上層に行く。

迷宮内部で適当な敵を探していると、いろいろな声が聞こえてきた。

「おい、なんでウルフが上層にいるんだ?」「潜る途中じゃない?」「いや、だったら深部入口までてんいするだろ」


周囲が騒がしい。

僕はこの町ではかかなり名前が知られているらしい。ソロで伝説級のモンスターを討伐する冒険者、絶対にパーティを組まない珍しい冒険者、など、いろいろ言われている。

そんな僕は彼らから「ウルフ」と呼ばれている。一匹狼、と言われているようにも感じるけど、そこまで嫌いな名前じゃない。


ただ、こうやって迷宮の上層で騒がれるのは少し困る。僕も今は自分の状態がわからないんだから。

そう思いながら人気のない場所に行き、一つの魔法を唱えた。

偽装(フェイク)


偽装(フェイク)、自分の容姿を数時間変更できる魔法だ。

冒険者になりたての頃は、盗賊などから逃げるためにしか使っていなかったが、有名になった今は顔を隠して行動するときに重宝する魔法の一つだ。


さて、目立たなくなったことだし、今の自分の状態を確認しなければいけない。

まずは目下のゴブリンに狙いを定める。


「ハアッ!」

真上からゴブリンに切りかかる。もちろん一撃で切り殺せる。通常の攻撃は問題なくできるようだ。

そうなるとスキル依存の特技に干渉してくるものだと推測できる。


次はに近くのブラックウルフへと狙いを定め、特技を発動させる。


「ブラッドファン、、っ!?」

特技が発動しなかった。いや、途中で発動が止められたという意識のほうが近い。

技の発動が止まった瞬間、体から力が抜け、剣を振りぬくことさえできなかった。


「特技が封じられている?まるで昨日の竜の様じゃないか、、、」


昨日のスキル絡みであることは確かだ。もう少し検証しないと。

そこで僕は魔法の発動を試みた。


「フレアサークル!」


先ほど攻撃を免れたブラックウルフが、今度は炎の輪に包まれる。

なるほど、魔法は普通に発動できるみたいだ。

その後もいろいろと2時間ほど試し、町へ帰還した。


迷宮から出てそう遠くない店で昼食をとりながら、僕の状態について考えることにした。

今日分かったことは3つだ。


1.攻撃系統の特技発動が中断される

2.魔法は全く問題なく使える。

3.身体強化や、耐性等のスキルは発動している。


根本的な、<管理者>については何もわからなかった。


「この状況、かなり困るな、、」

ソロプレイというのは、様々なスキルによる特技を乱立させることで初めて行うことができる。

魔法で自己強化を行い、効果のある攻撃でデバフや状態異常で動きを止めつつ攻撃を加えることでやっと対等に戦えるのだ。

また、高位のモンスター程体力が多い。そのため、継戦能力もかなり必要となり、精神力を多く使う魔法は無駄が多く使われないことがほとんどだ。

つまりソロプレイにおいては、魔法はほとんど使わず、近接特技ばかり使うのだ。

このままだとソロプレイが全くできなくなってしまう。


「もう少し迷宮に潜って対策を考えないとな」


昼食を終わらせ、もう一度迷宮へ向かうことにした。




迷宮に再び潜ると、昨日声をかけてきた二人組がいた。

(あの二人、冒険者だったのか)

そそくさと迷宮を進んでいく二人を遠巻きに見ていると、怪しい4人組が後ろをつけていることに気が付いた。おそらく二人を狙っている、初心者狩りだろう。


影化(シャドウ)


影のように移動するスキルで、気づかれないよう4人の後を追う。さすがに彼らがやられるのを見ているわけにはいかない。


正直、今人助けをするべきではない。あの4人は恐らく多少の手練れだ。

今の僕は、まともに対人戦ができるかさえ疑問だ。しかし、ここでほおっておけば、彼らは最悪殺され、それが魔カリと売るような場所になってしまう。


案の定、4人組は人気のない所で二人に声をかけた。


「お前たち、そこを動くな。荷物をすべて置いて、迷宮から出ていけ。そうすれば命は助けてやる」

「申し訳ありませんが、あなたたちに荷物を渡す義理はありません。速やかにお引き取り願えないでしょうか。そして真っ当に冒険してもらえると助かるのですが」


なんとも悪役らしいセリフで二人に声をかけ脅す。しかしそれをきっぱりと断る少年。なかなか筋の通っていそうな子だ。


「生意気なガキが!殺せ!女は高く売れる、生け捕りにしろ!」


そう言って襲い掛かる4人組。しかし少年は慣れているのか、後ろの少女にすぐに支持を出した。


「リリ、防御!」

「う、うん!ウォールバリア!」


リリと呼ばれた少女が防壁魔法で少年を覆う。その間剣を抜き切りかかる。



「ブーストブレイド!」

ブーストブレイド。剣術の初歩となる魔法だ。剣を微弱な魔力で振動、加速させることで威力を上げることができる。


「チッ、ガキのくせにまともな戦い方しやがって。おい!後ろの女をやれ!」「了解!」


4人組の魔導士が魔法を放つ、が、その攻撃は少年の剣に弾かれた。


「気が女に逸れたな!死ね!」


後ろから剣技が飛んでくる。特技・鎌鼬。剣を高速で振り、真空波を飛ばす特技だ。少年は足を切り裂かれて倒れた。


「ぐあっ」「お兄ちゃん!」


少女が少年に駆け寄る。それを狙って4人は攻撃態勢をとる。

流石にもう戦えないだろう。僕は影化を解き、魔法を唱える。


「ショックウェーブ、付与拘束<エンチャント・バインド>」


拘束属性を付与した衝撃波がが四人を襲う。


「なっ、動けねぇ、おい!お前、誰だ!」


そういえば偽装(フェイク)の状態だったな。でも、その方が都合がいい。


「知らなくても大丈夫。君たちにはここで倒れてもらうからね。この少年の言う通り、初心者狩りなんてやめて、まともに生活するといいよ」


「知るかよそんなこと!クソッ、解けねぇ、、」


拘束が効いてる間に無力化しなくては。そう思い、魔法を唱える。


「アビス・ギア」


深淵の魔力が4人を飲み込む。闇属性の上位魔法だ。並の冒険者だったら一撃耐えれるかどうかだ。まず追ってはこれないはずだ。


「なっ、上位魔法!?何でこんな場所にそんな冒険者がっ、がぁぁぁっ!」

「さぁ、二人とも今のうちに。リリちゃん、だったかな、走れる?」

「え、あ、、はい!」


足を負傷した兄を担ぎ、足早にその場を去る。


迷宮から脱出した僕たちは、まず病院に兄を連れて行った。


「うぅ、ん」

「目が覚めたかい?」

「さっきの、、、」

「ここは病院だ。念のため運んでおいたよ。妹さんなら横のベッドで寝てるから、静かにね」

「えっと、先ほどは助かりました。ありがとうございます」

「あれはさすがに見過ごせなかったよ。僕はクロム。君と同じ冒険者だ」


彼はバントレットと名乗り、妹がリリだということを教えてくれた。

彼らはどうやら兄妹で、地方から出てきて、冒険者になったばかりだそうだ。

今までも初心者狩りに狙われ、毎日必死に生きてきたようだった。

さすがにこのまま冒険者を続けさせるのはどうかと思うので、明日、知り合いを訪ねて、助言を求めようと決めた。


考えをひとしきりまとめて、伝えようかと思いもう一度彼を見た、その時だった。


[バントレット 戦士] 


そう、無機質な文字で頭上に表示されていた。

今回もご覧いただき、ありがとうございます。引き続き執筆していきます!

いいねとブックマークを押していただけると励みになります。


これからもよろしくお願いします。

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