6. 管理者の追憶(2)
迷宮攻略を初めて3週間。僕たちは中層まで攻略していた。
各々の能力と連携のおかげで、冒険者の中でもかなりの攻略速度なようだ。
そのおかげで、街でも名の知れるパーティーとなっていた。
「俺たち、もしかしたら結構強いのかもな」
「あぁ、このまま中層も攻略していこう」「このパーティーなら負けるなんてありえませんから!」
今思えばこの時、僕を含め全員が調子に乗っていたのだと思う。冒険者がどういうものなのか、わかっていなかった。
そして悲劇は、中層攻略を始めてしばらくした頃に起こった。
中層終盤、55層でボスを討伐していた時のことだった。
「決めるぞ!セイクリッド・ブレイド!」
ーガギャァァァァ
ボスの断末魔がフロア中に響き渡り、消滅する。
「ふぅ、何とか今回も倒せたね」「倒せて、よかったです、、、」
「見たか!俺の奥義!めっちゃかっこいいよな!」
流石に中層後半になると戦闘も大変になる。みんなの善戦でつかめる勝利だ。みんなで勝利を分かち合い、興奮を抑えていた時だった。
そんな時だった。
ードォォン!
先ほどまでボスがいた地点で、大きな音を立て砂埃を起こすモンスターの影。
そのボスの影は、両肩に大きな兵器を浮遊させたモンスターだった。さっき倒したボスの2倍以上もあるその巨体は輝く体を持っていた。
「なんだこいつは、、、、まさか、特異点!?」
「全員下がれ!撤退だ!今の僕らではきっと勝てないっ!!」
特異点とは、極稀に現れるモンスターであり、その存在はまだ謎が多い。
分かっていることはその強さが尋常ではないこと。そして、現代の知識では読み解くことのできない魔法の施された兵器、古代兵器を所持していることの2点だ。
カインは無言で剣を構えユニークと対峙する
「カイン!下がれ!撤退と言っているだろう!」
「こいつが逃がしてくれると思うか?どっちにしろ俺たちが抑えなきゃ上の層に被害が出るだろ!」
「でも、クロムの言う通り勝ち目もないんだよ、、、?」
各々が困惑する中、カインはユニークに向かって走り出した
「おい!やめろ!」
「お前らが行かなくても俺はあいつを止める!」
「っ、ガルム。やれるだけでいい、あいつの負担を軽減するんだ。ルイスはそれぞれの体力に応じて回復を」
「仕方ないな。やってみるが、期待はするなよ」「え、援護します!」
僕は気は乗らなかったが、カインを見捨てるわけにもいかず彼の援護を始める。
だが、これで勝てるとは到底思えなかった。
「仕方ない。まだいまいち使いこなせないけど、やるしかない、か。」
僕はそう呟き、ある程度のバフをかけたあと、声を張り上げた。
「僕はこれから危険を伴いかねない魔法を使う。危ないと思ったら迷わず逃げてくれるか」
「おい、何する気だ!」「クロムさんが危険な目にあうのはだめです!」
ルイスもガルムも反対する。仲間が犠牲になるかもしれないのだ。当然の反応だと思うが、ここで何もしなければ全滅するだけだ。
僕はできるだけみんなを安心させるため、言葉を続ける。
「古文書を読み解いて見つけた魔術だ。ある程度の挙動は予測できるから、あくまでもしもの時の話だ」
「、、、分かった。気をつけろよ」「クロムさん。信じますね!」
カインはこのことを昔から知っている。返事は無くても理解してくれるはずだ
僕は空中に魔力を集中させる。深く地の底から力を引き出すイメージで。そして、その力を集まりを高速で回転させる。
僕の頭上には深い闇の色をした流動体が高速回転していた。
「これ、もしかして深淵の魔力、ですか?」
「あぁ、これであいつを倒す。カイン!いったん後退、僕が一撃を打ち込む!」
「っ、了解!今だ!」
カインが左に大きく飛ぶ。僕は魔法を発動させる
「深淵転刃!」
回転する闇の刃がまっすぐとユニークへと飛んでいく。刃はユニークに衝突しても回転を止めず、周囲には魔力片と火花が飛び散る。
やがて闇の刃は爆発し、周囲を土煙で覆う
「多少はダメージを与えられたか、、、?」
「よく見えません、、、、皆さん無事ですか?」
「俺とガルムは無事だ。クロムも、大丈夫そうだな。」
全員の安否を確認したものの、土煙が晴れて見えたものは絶望の後継だった。
ほとんど無傷のユニークが兵器に魔力を充填して構えている。禍々しくも神々しいその外装は美しく輝いていて、僕らは恐怖を覚えた。
そして、兵器から光の波動が放たれる。
「防御ぉぉぉぉぉお!」
僕は喉の奥から声を上げ、防御魔法を発動させる。
兵器が光輝き僕らを砲撃する。着弾と同時に大きな爆発を引き起こし、防御魔法を張った場所以外の周囲をえぐった
防御魔法で何とか即死は免れたが、今ので防御壁は砕け散っている。次を撃たれれば命はない。
「一か八かで逃げるぞ。あいつには絶対に勝てない。拘束鎖!今だ!」
魔力により生み出した鎖でユニークを拘束。僕らは全力で走りだした。
拘束は5秒ほどで解かれ、こちらに向けて再び砲撃準備をする。
「っ、次の砲撃までには階段に着く!お前ら、走れ!」
そんな中、ユニークが咆哮をあげる。
「きゃあっ!」
咆哮により起こされた衝撃波で、ルイスが足元をすくわれて転んでしまう。
「ルイスっ!」「バカ!お前まで死ぬ気か!」
ルイスを助けようと身をひるがえしたが、カインに腕を引っ張られ、階段まで連れていかれた。
「離せカイン!ルイスを助けないと!」「落ち着いて考えろ!もう間に合わない!」
僕は冷静さを失い、大きな声で喚いた。そんな中、ルイスがよく通る声で話しかける。
「三人とも、ごめんなさい。もう、手遅れ、みたいです、、足、動かないので、、」
「そんなこと言ってないで!這いつくばってでもこっちに来るんだ!まだお前は死んでない!」
そんな会話をよそに、ユニークは光の波動を放つ。
後ろから光が迫る中、ルイスは言葉を続ける。
「みなさん、最後に、、言わせてください。今まで冒険ができて、本当に良かった。ありがとうございました。本当はもっと一緒にいたかったけど、残念だなぁ」
笑いながら泣いていた。これほどまでに痛々しい顔は生まれて初めて見たと思う。
「そうだ。これだけはちゃんと伝えないとね、みんな。私からの最後の言葉。よく聞いてね」
そして、光が到達する瞬間。彼女の口元はこう動いた。
ーどうか、自分を恨み、呪わないで。未来を見て歩き続けて
輝きに飲まれたルイスは、尋常じゃない声を上げる。
「いやぁぁぁぁ!」
その直後に発せられた断末魔はフロア中に響き渡った。
「っぁぁぁぁぁああああっ!」
僕は地面に拳をたたきつけて、言葉にならない叫び声をあげていた。この怒りのやり場を、恨みを、どこにもぶつけられない現実を憎んだ。
「、、、今なら逃げられる。早く地上に行ってこのことを知らせないと」
「被害はこれ以上出したらダメだ。クロムも、行くぞ、、、、」
カインが力ない声で呟き、ガルムも同意する
その後冒険者協会に戻った僕たちは、このことを伝えた。
すぐに討伐隊が編成され迷宮に送られたが、すでにユニークは逃亡した後だった。
迷宮55階層は地形が大きく変わり、捜索も難航していた。
ルイスの亡骸は、2週間後に見つかった。黒焦げになり、元の面影は全くなかったそうだ。
「なぁ、すまないんだが俺、このまま冒険続けられそうにないわ、、、」
ルイスが死んだあとすぐ、ガルムのこの一言でパーティーは解散になった。
さっきぶりですね!どうも桜樹です。
過去編後半、いかがでしたか?
見る人によっては悲しいお話だと思います。私も書きながら若干悲しくなっていました。
折角できたパーティーは不慮の事故で解散してしまいました。
クロムはこの後、どう冒険しながら、今に至るのか、続きを楽しみにしていてくださいね!
いいねや評価、コメントがモチベーションにつながりますので、よければ押していってくださいね!
続きが気になる方は、ブックマークもお忘れなく!
それでは次のお話で会いましょう!




