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第7話 崖を降る


朝は冷えるが、シャキッと気が引き締まる。


朝日が差して霞掛かった大気がボンヤリと明るくなってきている。


寝袋で寝るのは久しぶりだ、俺はテントで寝るときにマスクをして寝る。


テント内に結露するのを抑えられるし、喉の渇きも防止できるからだ。


夜通しラジオの音楽番組を付けていたので、何かが近寄ってくることは無かった。


ぷぷるんも手触りが良いので、一緒に寝袋に入って抱き枕代わりにしてしまった。


「ぷぷるんおはよう!」


「おはようございます。」


キャンプストーブに火を起こして朝食の準備だ、コッフェルで湯を沸かす。


昨夜ラーメン食べたコッフェルは食べ終わった後に水で流しただけ。


水は節約して、湧水が有ったらそれを優先して使うつもりでいる。


山の朝は清々しい、空気が新鮮で全身にマイナスイオン浴びてますって気分だ。


湯にインスタントのコーヒーを溶かして、モーニングコーヒーを飲むと、何だかやる気が湧いてくる。


キャンプストーブの給電プラグに携帯ラジオのUSBを繋いで充電しながら、カ□リーメイトのチョコ味を食べる。


さっと食べて、コーヒー飲んでテントと寝袋を畳み、リュックに詰めていく。


食器も何もかも片づけて、少し湿り気の有る地面に深めの穴を掘る。


この穴にキャンプストーブの燃え殻を投入して、土を山盛りに掛けて踏み固める。


ストーブが冷めるまで、周囲の景色をぼんやりと観察する。


ここは尾根の先端で、急斜面の崖が10mほど下に降りている。


途中ここよりも低い尾根を挟んでさらに先に、ここと同じぐらいの標高の尾根が見えている。


一旦山頂側に戻って谷筋を迂回するコースか、谷底まで降りてから登って行くコースが取れそうだ。


目標と成る尾根とルートを観察しながら、昨日仕掛けた的の向きを調整する。


向こう側から射撃するときに見えるようにしておかないと、戻ってくるのが大変だ。


そして、この的が迷った時の目標としても使うのでしっかりこていする。


谷底の方は、植生が密集していて見通すことが出来ないが、地形的に枯れ沢もしくは実際に水が流れている沢に成っているような感じがする。


どちらのコースを辿っても半日仕事に成りそうだが、水の確保を考えると沢まで下りてみたい。


ロープが無くても昇り降りは可能だが、滑って転んだら一気に下まで滑り落ちそうな急斜面だ。


「どうしたものか・・・」


「どうしましたか?」


ぷぷるんを見る、リュックにはパラシュートコード100m巻を二本持ってきているので、これにリュックを括りつけて、斜面に生える椿の幹に引っ掛けてゆっくり下ろしていく事にする。


一番下まで下ろしたら、解けない様に頑丈な幹にパラシュートコードを結んで、これを伝って下りて行く方針だ。


帰りは荷物を逆の順番で引き上げて回収する感じか?


昇り降りは子供の体に変身したら楽かもしれない。


「良いこと思いついたから一仕事終わったら変身したい。」


「了解しました。」


斜面に生えた椿の幹は根元で直径15cmほどの太さで、斜面に大きく根を張って斜めに突き出している。


こんな傾斜地で長年の風雪に耐えてきたので重厚感がある。


その低い枝の中でも大人の腕ほどの太さで、ここで首吊ったら見晴らしいいだろうなって感じの枝にパラコードを掛ける。


短い方のパラコードの先端をしっかりとリュックに縛り付けて、右手に軍手を二重にはめて、さらにタオルを巻きつけておく。


この手でパラコードの勢いを消しながら、リュックをズリズリと崖下に降ろしていく。


やはりと言うか予想通り、手に豆が出来た。


辛うじて豆はつぶれなかったし、割れ物とか入っているから慎重にやったが、あれなら合格点だろう。


パラコードを枝から外して、登ってくる時に入りやすそうな所に移動させて、太いミズナラの根元にしっかりと括りつけた。


茂みの奥のくぼ地に移動し、首の後ろの定位置にいるぷぷるんに声を掛ける。


「変身って、あのセリフ絶対必要なの?」


「はい、魔法の呪文でマジカルな力が使えるように成るのです。」


仕方ない、これ見られたらとても恥ずかしいが、ここは山奥の森で茂みの中だ。


覚悟を決めてやってみよう!


「ぷるりん、パラリン、ぽよぽよリン、るるりん、ぱららん、ぽよぽよぴー、ミラクルチャットで美少女戦士ファンシーりなになーれ~!」


一瞬のうちに辺りが光に包まれて、体の大きさがどんどん縮んでいく!


服やズボン、トレッキングブーツも光の中で崩壊していき、手や足がほっそりとして、髪の毛が伸びてさらさらヘアーが肩や背中に流れる。


素材不明のブーツ、スカート、ベストが体に装着され、目の前にライフルが漂う。ライフルを手で掴むと、光が消えていく。


「これが定番の装備なんだな!」


ちょっと自分の姿を見まわして見るが、山の中でこのカラーリングは目立つ。


「ぷぷるん、迷彩服にジャングルハットでジャングルブーツ姿にチェンジだ!」


一瞬で軍服姿に変身した。


体が変わるとき以外は光のエフェクト掛からないから、目立たなくていい。


この格好は昔見た スクワッド 栄光の鉄人軍団って映画を思い出す。


ベトナム戦争の広域偵察小隊でR・リー・アーメイ演じる、ハフナー上級曹長ってカッコよかったな。


しかし、ライフルのピンク色目立つな~!


「ぷぷるんこの銃色変えられないの?」


『これは神様の武器なので、使徒の自分では触ることができないのです。』


「服の一部として銃を納めるバッグとそのスリングならできるか?」


『それなら出来ます。』


迷彩柄のスリングが左の肩から右の腰に掛かって、ライフルバッグが背中に背負われる。


この中にライフルを収納したら両手が空くだろう。


武器は神様謹製(きんせい)、服装はぷぷるんが変身ってイメージなんだな。


先ずはパラコードを頼りに斜面を降りていこう!



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