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第33話 熱核兵器


突如現れた流星の様な光は、タイタンⅡミサイルから投射された、超高速で落下するMrak-6再突入体であった。


大気圏突入時の摩擦熱で燃え尽きる事無く、その内部のWー53核弾頭を搭載したまま、大気の摩擦熱で灼熱した表面からキラキラと美しく輝く尾を引いて地表面に対して垂直に落下してきた。


魔王城の最も大きな象徴ともいえる中央タワー上空5000mに達したところで、Wー53核弾頭のプライマリー原爆が起爆した。


グラウンド・ゼロは魔王城中央タワー付近と成った。


Wー53核弾頭は、いわゆる水素爆弾で熱核兵器とも言う。


原子爆弾と核融合物質を硬い弾殻内に封印したテーラー・ウラム型構造の水爆であったが、核出力は9Mtと1980年以降でアメリカ軍が実戦配備した核弾頭の中でも最大出力の水素爆弾だった。


起爆の順序はプライマリーとして核分裂型の原子爆弾が起爆し、弾殻内を高温高圧のプラズマ状態に状態にしながらX線やガンマ線、中性子線を核融合物質(重水化リチウム)に照射し加熱圧縮する。


中性子線を照射されたリチウムが三重水素に変換され重水と核融合する。


プライマリの爆発は20マイクロ秒程度で終了し、核融合物質にエネルギーのほとんどを集中させると、イオン化した原子核が加熱圧縮して原子核が融合を始める。


核融合で出た中性子線はウランダンパーを再び核分裂に導く。


核融合により温度が急上昇し1億℃まで上昇した内部のエネルギーは弾殻を突き破って外界に放出される。


最初に放出されたガンマ線とX線が拡散し、遅れてプラズマと中性子が広がって行き、10マイクロ秒後には等温球と呼ばれる非常に高温の膨張する泡が形成され6000万℃の等温球は太陽の数兆倍の強い光を放射し始める。


等温球はこの段階で10mほどの直径となっていた。


プライマリーの起爆から100マイクロ秒後には等温球が20mを超えて30万℃の温度まで冷え、放射成長の速度はプラズマの音速と同じになり、火球表面に衝撃波を発生させ、高速で移動するイオンの運動エネルギーが周囲の空気にエネルギーを伝え始める。


深夜の暗がりに突如として発生した太陽とは桁違いの閃光は、魔王城を中心とした半径30km以内の屋外に居た生物に致命的な火傷を発生させた。


5秒近い時間掛けて火球表面から強力な光を放射し続けながら、音速を超えるスピードで成長する火球は、バターを溶かす様に城を削り地表面を掘削しながら膨張を続け、地面に接触した衝撃波は横方向に向きを変えて表面を削って行く。


この瞬間に50km離れた高台からこの状態を目撃していた者は、眩しい閃光が消えた後に、巨大な直径10kmを超える半球形のドームが地上に形成され、なおも膨張している姿を見ることができた。


十分な核融合エネルギーを放出し終えた火球は、ゆっくりと上空に浮上し始め、最終的には20kmを超える巨大なキノコ雲を形成した。


夜間深夜帯であり無風下での爆発であったため、地上から巻き上げられた塵、いわゆる死の灰は魔王城を中心とした周囲100kmの円内に雪の様に深々と降りつもるのだった。


マッハ23と言う運動エネルギーと9Mtの核爆発エネルギーを叩きつけられた魔王城には、普段から上空100mに物理障壁及び魔法防御結界を展開していたが、これを易々と突き破り魔王城とノイエンハウゼンの街を瞬時に蒸発させた。


魔将軍や四天王の中には、転移魔法や瞬時復活のアイテムを所有する者もいたが、アイテムごと消滅したり、転移先も爆発範囲内であったり、復活後も荒れ狂う高温高圧の衝撃波で粉砕される結果となり全て蒸発拡散した。


魔王も強烈なガンマ線照射と超高温、強烈な衝撃波の何れかで死亡したが、核爆発下の火球中心部の事であり、観測できる手段は無かったし、当然のごとく死体も残さずにこの世から消えた。


この時点で火球表面の温度は1万度程度まで低下していたが、地面接触時の衝撃波による圧縮作用で温度は逆に急上昇していき、溶解した地面の物質を衝撃波で押し潰し一部は拡散し舞いあげ、吹き飛ばされて新たに露出した岩盤が同じ効果で削られる事を繰り返して行き、最終的には深さ2km半径約10kmのクレーターを形成した。


この地域の表層土壌を剥ぎ取って露出した岩盤層はウルタリア石で、超高温に曝されて溶融したウルタリア石は表面がガラス状となり、不気味な紫色を放ってクレーター表面を広く覆った。この紫色の石からは極めて強い放射線が常に放射されるようになり、中心付近では500シーベルトを超える電離放射線を放出するようになる。


夜間でも紫色にほんのり光る呪われた石となるのだった。


紫色の石の上で魔王の祭壇が一部溶けながらも残り続けて、紫色の光の中で時折黒い卵を産みだし、幾度か魔王の産卵を継続していたが、強力な電離放射線の被爆ダメージに卵が耐えられず孵化前に消滅する事を数度繰り返えし、やがて祭壇が割れて崩壊沈黙した。


結局魔王城から半径30km以内の木々は衝撃波により押し倒され、生物は致命的な火傷を負ってその後、襲ってきた爆風によりほぼ100%死亡した。


半径50km圏以遠では爆発時の火傷や傷は徐々に少なく成ったが、


その後数十年に渡ってこの地を原因不明の出血、脱毛、疲労、衰弱、下痢、せん妄、昏睡、皮下出血などの病気とも呪いとも思われる様々な症状を発生させた。


ヒール系やキュア系の呪文には一時的な回復効果はあるが、根本的には回復せず、やがて症状は再発した。


解呪系の魔法では治療効果が無かった。


これは、大量に放出されたセシウム137とストロンチウム90等の放射性元素を体内に取り込んだ事による内部被ばくが原因で、被爆地域で吸収した放射性物質が、体内のカルシウム等と結合して骨に沈着したり肝臓に蓄積し、長期的な放射線暴露を受け続ける事による被爆症状のためであった。


人類側の偵察隊が何度も侵入を試みたが、深部偵察で帰って来たものは誰一人居おらず、魔王の情報は完全に遮断された。


爆心地から60km以内では草木や野生動物なども死滅し、苔や地衣類が僅かばかり生える不毛の大地が広範囲に広がり、ここでは原因不明の出血や脱毛を恐れて近づくものは居なくなり、いつしか呪われた地として怖れられた。


それでも人類は魔王の反撃を恐れ、数十年にわたって周辺の監視を継続するのだった。





いつしか夜が明けて太陽の光が窓に入るころ。


手書きの魔法陣の上で呪文詠唱を終えたシャルロッテは、大きくため息を付いて、ベッドに腰かけるとぷぷるんに呼びかけた。


『神威魔法は発動したの?あれだけ長時間呪文を唱えたのに、

 何か音とか光とかエフェクト無いの?

 じゃじゃーん!とかゴゴゴゴーッ!とかは?』


『成功したのか失敗したのかは、呪文と魔法陣が完璧ならば・・・

 しかし、実際に現地を見ないと正確にはわかりません。』


『じゃあ失敗したかも?

 なんか途中で呪文詠唱の区切り間違った気がする!

 今考えると最初の方で、しくじっていたかも?

 アーッ!時間損した!』


『5時間に及ぶ呪文詠唱は、体力知力とともにスタミナが必要そうです。』


『まだまだ、やるには時期尚早だった訳か?

 魔王との戦争も今すぐ決着が付く訳では無いと思うし、

 なんか呪文を一晩中唱えてたら一時的な怒りも収まったよ。

 少し寝るね!』


このようなシャルロッテとぷぷるんの念話が交わされている時、タイタンⅡミサイルサイトがこの惑星の裏側で実際に召喚されていた事実を彼らが知るには、かなりの時間が必要と成る。


疲れて眠るシャルロッテは、入眠30分後ICBM魔王城着弾と同時に、人知れず魔王と四天王及び八魔将軍とその他魔人集団を瞬時に大量殲滅し、経験値爆上げでレベルアップした事にも気が付かず、ただ安らかに寝息を立てるのだった。




朝の食事の準備が出来た事を知らせにマリアが部屋に入ってくると、シーツに落書きがしてあり、シャルロッテが気持ち良さそうに眠っているのを見てマリアは微笑み。


「お嬢様も落書きして遊んで、年相応の子供なんですね。」


年に似合わずひたすら読書や書き物ばかりして、しっかりとし過ぎているシャルロッテをマリアは心配していたが、お絵描き遊びをしていた事に少し安心して、可愛い寝顔を愛おしそうに見つめるのだった。



シャルロッテは自分も、この世界のだれもが気付かぬうちに魔王と集結していた魔族のほとんど全てを瞬時に葬り去っていた、しかしこの事実を知らない全人類は魔王の脅威に対抗すべく準備を重ねていくのだった。



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