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第32話 ノイエハウゼンの夜



ノイエンハウゼン城は広大な敷地に巨大な尖塔の教会を持つ城である。


この地方特産のウルタリア石だけを使った純白の城は、白亜の城と呼ばれ、

この城を中心として発展したノイエンハウゼンは、聖教国首都として600年余りのあいだ聖教会が維持し続けてきた。


聖教会はノイエンハウゼン城地下に存在する魔王の祭壇を封印し、勇者の捜索と育成を行うネットワークを形成してきた。


中央大陸に張り巡らされたネットワークにより互いに対立する人類社会を宗教で繋ぐものでもあった。


今から100年ほど前、今代の魔王復活によって国家としての聖教国は幕を閉じる。


当時近隣国に逃れた人々によって、聖教会内部の対立によるものとも、魔王の力を利用し覇権を狙って失敗したとも伝えられるが、魔王がどのような手段で封印を破り復活を遂げたのかは定かではない。


聖教国領内の人間は捕らえられ、娯楽としての拷問や、嗜好品食材として流通消費されていった。


一部には人間を繁殖させて出荷する事業なども行われていると言う。


中央大陸西部の人類国家は度々魔王の侵略を受けて、勇者探索と再封印の作業を開始する。


首都放棄後も聖教会のネットワークは維持されており、探索により見出された勇者を先頭に第一次魔王討伐軍が魔王支配地域に進攻するが、ノイエンハウゼン手前で敗北し勇者が殺害されてしまう。


その30年後、次に発見された勇者と人類屈指の精鋭を中心とした第ニ次魔王討伐軍は、前回の失敗を教訓として、徹底的な魔族狩りと焦土戦術を行い侵攻途上の大地を不毛の土地に変えながら進軍を開始した。一時ノイエンハウゼン城の攻略にまで取りかかり、魔王と勇者の一騎討にまで至ったが、勇者が敗北し第二次魔王討伐軍は瓦解した。


二次にわたる大規模な出兵による負担と、魔人魔獣たちの侵入に耐えかねた周辺国家は、崩壊し逃げ遅れた人類は、魔人たちの手軽なおもちゃとして娯楽の名のもとに殺害されていった。


しかし、魔王も勇者との戦いで少なからず傷ついていたことから、積極的な進出を行わなかったため、魔王支配地域と人類社会との間には、広大な無人地帯が形成されて、休戦協定なき休戦状態が50年ほど続いた。


このころからノイエンハウゼン城は魔王城と呼ばれるようになり、魔王支配地域は魔王国と呼ばれるようになっていた。


その間に魔王は軍備の増強と異世界への干渉を行い、着々と戦力を向上させていった。


第三次魔王討伐軍は、大陸西部諸国に加え大陸中央の人類社会から募った精鋭と大魔法使いそれに教会屈指の聖女、エルフ、ドワーフ、などの人類種族からなるこれまでに無い強力なものであった。





第三次魔王討伐軍の先鋒は故国を追われたノイエシュタットの騎馬隊が乾坤一擲の突撃から始まった。

怒れる騎馬隊の怒涛の突撃で、魔人たちの隊列に隙が出来たところを魔法使いのジルは見逃さなかった。


彼は人類最強と言われる魔法使いで、白い顎鬚と刻まれた皺は、彼の知識を蓄えた年月の多さを示していた。


素早く杖を構えて呪文の詠唱を行うと、凄まじい閃光と爆音を発して火炎レーザーが撃ち込まれる。

魔法の着弾点と成った周辺の地面は溶けた赤いチーズの様にぐつぐつと泡立っている。

放射される熱量も凄まじく、魔法の通過した直線上の空間に立っている者は無かった。


動揺した魔人の隙を突くように、25歳と若く活力に満ちた剣士ルパートは勇者の剣と勇者の楯、勇者の鎧を身につけて敵中央に切り込む。


ハルバートを手に全身プレートメールの騎士ホフマイヤーは力強く忠誠心に篤く寡黙な男だったが、彼のハルバートが一振りされるたびに多くの敵が沈黙した。


そしてドワーフの戦士ウルバルトは得意の両手斧を振り回す。


彼らが前線に躍り出ると、魔人たちを圧倒していく、時折隙を突いてくる敵に対し的確な弓捌きでサポートするハイエルフのエシュリーは金髪のしなやかな長髪に森の妖精を思わせる神秘的な雰囲気を纏い、時に精霊魔法を繰り出す。


そして、傷付き疲労が溜まった時の癒しは聖女アルメリアが聖魔法で対処した。


アルメリアは18歳の若さであるが、歴代聖女最高の魔力と聖魔法の使い手として勇者パーティーに自ら志願してきた。


彼ら勇者パーティーは、魔王城に侵入して奮戦し、魔王城城下の建物は討伐軍が破壊して回った。




剣士、騎士、魔法使い、聖女、エルフ、ドワーフ、からなる勇者パーティーは、魔王城の謁見間まで侵入するに至ったが、八将軍及び四天王と呼ばれる魔王側近によりことごとく殺害され、最後に捕らえられた聖女は自殺する事も出来ずに拷問凌辱を加えられた上でゾンビ化処理され、首を刈り取られた後でメッセンジャーとして送り返されてきた。


その聖女の語るところによれば、魔王は神をも超える存在であり、全世界は魔王の所有物である。従って下等種たる人類の生存は魔王の許可のもとで行なわれなければならない。人類は家畜としてのみ生存できる。人類は無条件で武装解除し年間5万人の家畜奴隷を献上する事で今後も生存する事を認めるといった内容だった。


これを伝え終えた聖女は、浄化魔法による自らの消滅を要求し永遠の眠りについた。


魔王の圧倒的な力と自信に恐怖した大陸中央諸国は人類の結束を訴え、宗派や国境の紛争を一時棚上げし、人類統合軍の創設を提案して大陸全土の人類諸国に対して合流を呼び掛け、これに答えた人類諸国は大陸中西部へ集結しつつあった。






夜の深まりとともに賑わう魔王城の城下にショッピングに出てきた魔人のデラは、城下から魔王城を見上げてしばし佇んでいた。


魔王が住まう魔王城は白く美しい城で、聖教会が600年に渡って支配してきた。今代魔王の復活により聖教会は滅ぼされて、城と城を中心とする地域が魔王の国と成った。


幾度かの人類との戦争でも城の美しさは損なわれる事なく、魔王支配のもとでもその美しい姿を今に留めている。


城下には先の戦争復興による建築ラッシュが続いており、戦争で侵入してきた人類を捕らえて売る奴隷市がそこかしこに立っていて活気づき、魔人たちの購買意欲を刺激していた。


普段は魔人の狩人が、人類繁殖地に侵入し獲物を狩ってきているが、戦争に成ると大量に獲物が捕えられるので、狩人や人間繁殖小屋の採算が取れなくなって安売り処分が行われているという。




ふと立ち寄った奴隷市ではノイエシュタットの女騎士が競売に掛けられていた。


競り落とした魔人はデラの知り合いで、暴れまわる女騎士の顔面をぶちのめして袋詰めにしていた。


人間は前歯を折ってしまえば自分の舌を噛み切れなくなるので、楽しみが増えるのだ。


「こういった生意気なやつを精神的に屈服させてから、少しずつ食べるのが旨い。やはり天然物は養殖物とは違うね!」と言って後日じっくり仕上げたら連絡するから食べにおいでと誘ってくれた。


泣きわめいて助命懇願する人間を少しずつ死なない程度に千切っていって、最後に絶望したところを見ながら血を抜いて刺身にするのが最高だ!


踊り食いにするのも悪くない、生きたまま脳を露出させて針を刺して遊ぶのも楽しい!


魔王城下は夜に成ると賑わう、昼の太陽光線が苦手だったり夜行性の魔人が多いため、夜に屋外でショッピングを楽しむ者が多いのだ。


デラは思う、今代魔王様が国を治めてくれて我々は豊かに成った、今日は奮発して養殖物の人間の半身を買って帰る事にする。


もっと美味しい人間を手に入れるために仕事を頑張らねば成らない。


デラの仕事は異世界にゲートを繋ぐ為の魔法陣の構築作業員の一人だ。


手始めに魔人幹部を異世界に送り、向こう側とこちら側に魔法陣を作って、人間どもを大量に捕獲する計画らしい。


今夜は魔王城でも勇者たちの生首を並べて、ノイエシュタットの王族をつるし切りにする魔王主催の戦勝記念パーティーが催されているとかで、城下はとても賑わっていた。


デラは魔王城を再び眺め、その上から流れ星が煌くのを見上げていた。

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