第27話 異世界での決意
朝だ!朝日が顔を出す前に自然に目が覚めた。
隣には昨日の肩を揺すって何かを必死に話しかけていた女性が、ベットに突っ伏して寝ている。
昨夜は付きっきりで近くにいてくれたのだろうか?
自分の毛布を彼女の肩に掛けてやると、足をベットから降ろし、ゆっくりと体重を掛けて立ってみる。
ガクリと膝から崩れる様に足に力が入らない、どの位の期間歩行していなかったのか?もしかして寝たきりだったのだろうか?
少しリハビリが要りそうだし、手の力もファンシーりなの時より弱っている気がする。
全体的に筋肉量が落ちてる感じだが、向こうで変身しているときに、こっちも正常化するための変換が有ったはずだから、その辺は体調が維持されていたのかもしれない。
先ずはつかまり立ちの練習からだ。
ベッドの縁につかまって膝の曲げ伸ばし運動、こきこきしながら曲げ伸ばしで体重の負荷を掛けていると何だか正常に立てる様に成ってきた。
これって、運動神経のコントロールが慣れていないだけだと良いが、呼吸や心臓などの生命維持に関わることは出来てる気がするし、手指の操作も何とか行ける。
こっちに来た直後に混乱してパニックに成っていた時に、整理付けてたのかも知れない。
ああ、何だかかくかくとするが歩くことが出来そうだ、
「立った立ったクララが立った!」
とか言いながらふらふらと歩いてみる。
案外、行けそうな感じに成ってきたころ、ふと視線を感じて振り向く、先ほど毛布を掛けた女性が、目に涙を一杯に溜めて口に手を当てて「お嬢様!」と言った。
あっ!
言葉の意味わかる!
『ぷぷるん言葉の掘り起こしと紐づけ終わったのか?』
『この幼女が知っている範囲の言葉は聞くことも喋ることも可能です。』
おっ!じゃいっちょ喋ってみるか!
『この女性の事知ってるの?』
『記憶にはありません』
だったら
「あなた誰?」
急にこちらに駆け寄って目の前に跪き、目線を合わせながら
「私はマリアです。お嬢様の専属メイドだったミリアの妹です。」
ミリアって?ミリアの記憶が間を置いて思い出されてくる。
とてもやさしい女性、この子の世話をしてくれたメイドだ。
この子も相当懐いていたが、馬車での移動中に魔族の襲撃を受けて、この子の目の前で惨殺された。
なるほど、惨殺映像をビジュアル化して脳内再生される感じは客観的だが、ちょっと精神的ダメージくる映像だ。
生きながら腹を裂かれて、腸管を下から絞られて口から内容物出したり、膝や肘から手足を切断して目の前で食べたり、彼女の悲鳴を聞いて魔族が楽しんでいる。
目をえぐりだしたり、意識の有る状態で脳を指で突いて反応を楽しんだり、この子はこんな状態を見せられ続けて心が空っぽに成ってしまったんだ。
魔族に対する怒りが初めて芽生えた。
俺を銃撃して殺した奴も魔族の一員だったわけで、我が嫁を拷問に掛けたのも同じ流れだ。
ミリアと俺の弔い合戦だ、あちらの神様にも言われたが魔族絶対に許さん!
決意も新たに、マリアに向かって宣言する。
「ミリアの仇は私が絶対に取る!」
マリアは溜めていた涙を溢れさせて大声で泣いた。
そして優しくこの幼女を抱きしめる。
自分も彼女の背中に届くように手をまわして、ギュッと抱きしめる。
そうするうちに自分のお腹がギュルギュル鳴り始めて、マリアとお互いに顔を見合わせて笑った。
「お嬢様お食事をお持ちしますね!」
マリアは涙を拭いながら、そそくさと扉から出ていく。
朝の運動で疲れた、ベッドに横に成って食事の来るのを待とう!
ベッドに寝っ転がってぷぷるんと念話で情報の擦り合わせだ。
『ぷぷるん、記憶の引き出しと言うか元の女の子の記憶って、
俺の記憶を振り返るのと違って、一歩引いてる感じがするんだが、
これって何でだか分かるか?』
『伊藤琢磨の記憶と、この体の持ち主の記憶が同じ領域に重なっていると、
記憶領域を奪い合ってバラバラに寸断された記憶に成ってしまいます。
あなたの寝ている間に、伊藤琢磨として使用していない記憶領域に
彼女の記憶を移動し新たに整理保管しなおしたのです。
伊藤琢磨としては元々使用していなかった領域ですので、
彼女の記憶を呼び出すときに違和感を覚えるのかもしれません。』
『なるほど、だからミリアの記憶を取り出すのに違和感が有ったんだな、
再現映像フィルムを見てる感じで、実体験としての記憶って感じが
しなかったが、彼女の受けた精神的心のダメージを考えたら、
自分の精神にとってはクッションに成って都合が良かったのかもしれない。』
『記憶領域は伊藤琢磨の状態で再構成されていて、
そこに付加される形で元の彼女の記憶が有ります。
元々彼女の記憶は貴方の1%もありませんから。』
『元々の彼女って4歳だったよな、幼稚園の年中組程度の記憶って事だが。』
『簡単な文字や1~10までの数字、話し言葉や絵本の読み聞かせなどと、
近しく関係する人物の名前などは記憶に有るようです。』
『彼女の記憶の範囲で話をしないと、ボロが出そうだな。
ところで、俺って今何て名前だ?』
『貴方はシャルロッテ・フォン・ブラウンシュヴァイク、
近しい人から行くと父はベルンハルト、
母はソフィア(死亡)、兄アルベルト(死亡)、
執事のハンス、家庭教師のゾフィー、騎士団長、医師、薬師・・・・』
順番に名前と映像がこの子の記憶から再生される。
『俺の記憶領域ってどのぐらい空きが有るの?』
『全容量の約50%がブランク領域です。』
『約50年分の記憶で50%なら意外と空き容量有るんだな!
年取ると忘れたり書き換えたりで残量も十分OKだな。』
『とんでもありません!ふつうの人間なら5%も使いません。
あなたは神の魔法能力を望みました。
本来の貴方と彼女の占有する記憶領域は5%程度で、
残りの45%は神様から頂いた魔法の記憶です。』
『俺って魔法使えるの?』
『貴方の魔力は神様と同じ無限です。
魔法は神威系魔法を使用可能です。』
『神威?』
『神威とは神の偉大さ神の力を示す魔法で、神罰とも言えます。』
『罰当たりってやつだな!何だかヤバそうな匂いがプンプンする。
どんな感じに成るのか教えてくれ。』
『神威魔法には、魔法系統がいくつか分かれています。
貴方の使用可能な魔法は魔力単体で使用可能な魔法となります。
神様の持つスキルが有ればさらに多くの魔法を発動できます。
しかし貴方には神様のスキルは有りません。
スキルなしで発動可能な魔法は、
地震系魔法、火山系魔法、瘴気系魔法、呪詛系魔法、気象系魔法、
天体系魔法、終末系魔法、召喚系魔法、時空系魔法、となります。』
『使える呪文だけでもかなりの物だ、一番すごいのってどの呪文?』
『時空系魔法の次元世界消滅が最強です。
この時空世界が全てリセットされます。ビックバンからやり直せます。』
『・・・・それって俺、死ぬだろ!』
『基本的に発動は貴方を中心にして発動します。火山や地震、気象、瘴気、
呪詛は発動中心が貴方です。天体や終末、召喚は貴方が中心とは限りません。』
『例えば天体系魔法って、どんな感じなの?』
『隕石爆撃、衛星落下、惑星衝突、恒星消滅、ブラックホール接近、
近接恒星の超新星爆発などです。』
『この神威しんい魔法は迷惑な自殺魔法か?』
『貴方にとっては致死的な威力ですが、
神様のスキルや防御力では特に何も影響しません。』
『基本的に攻撃特化してるけど、回復とか施すようなのは無いの?』
『癒しや回復は神様の持つスキルですので、魔法としては持っていません。
ちなみに私も神様のスキル使徒創成で作られました。』
『ぷぷるんは召喚魔法で呼んだのかと思っていたが・・・・、
だとすると召喚も酷いことに成りそうな気がする。』
この神威魔法とは、この世界に回復不能で深刻なダメージを与えてしまう様な、一撃必殺の長期影響必至の範囲攻撃魔法だ!
敵も味方も無関係なし、第三者を含めたその他大勢も巻き込む迷惑至極の魔法。
『神威魔法は使えん! 自殺覚悟の自爆魔法だ。』
『その通りです!もしもあなたが元の世界で魔人討伐に失敗して、
神様が直接手を下すことに成っていたら、あの惑星は崩壊消滅の危機に成ったと思われます。』
『だから神様は俺みたいなのを間接的に使って対処していたのか、
だったら俺が人類消滅の危機から救ったって話も、ある意味事実だ!』
先ずはこの世界を知ることだ、そしてやれることを考えていくしかない。
しかし魔王討伐って、どうすりゃ良いんだ?
魔力は無限って事だったが、そもそもこの世界で使えるのかどうか試す必要もありそうだ。
まだ4歳だし時間はある!
この世界に付いての知識が必要だ。




