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第26話 異世界転生


古代ギリシャの神殿建築を思わせる柱が林立する空間に一脚の椅子が置かれ、そこに座る美しい女性は、薄い絹の様な布を纏い、スラリと伸びる手足豊満な胸、均整の取れた体つき神々しいまでの肌艶、そんな完璧な造形にただ見とれていると、彼女はこちらを見つめながら呟いた。


「伊藤琢磨さん・・・あなたは死にました。」


「えっ???」


ああっ確かに!


弾が当たった瞬間にぷぷるんの強制幽体離脱体験そして、自分の体の頭が吹き飛ぶのを斜め上から他人事のように傍観していた。


あれだと顔が滅茶苦茶どころか霧状に消し飛んでたから、死体を見つけてもらっても本人って分かるだろうか?


彼女は、とても悲しそうな顔でこちらを見つめながら歩み寄ってくる。


「本来、死者の魂は肉体の死と共に崩壊していき、

 肉体が死してなお完全な意識を留めることは出来ません。

 今あなたは私の遣わした使徒の力によって魂の形を維持しています。」


「あなたは異世界の魔王の脅威からこの世界を救ったのです。

 あなたに感謝しなければなりません。」


そして姿勢を正すと美しい仕草で優雅に頭を下げた。


そして真剣な眼差しでこちらをしばし見つめる。


「この世界を救ってくれた貴方の魂をただ消滅させることは惜しい、

 そして私の感謝の印として、二つの選択肢を用意しました。

 今あなたの魂を受け入れられる容器が二つだったからです。

 一つは、貴方と妻である伊藤詩織との間に出来た子供として転生する道です。

 これは再びこの世界の新たな命として生まれ変わる事を意味します。

 そして、もう一つの道はファンシーりなの原型である異世界の幼女と

 魂を交換する道です。」


伊藤詩織と俺の子供・・・・・新婚初夜で決めたって事か?


でも、それを選ぶならば親が自分の子供の将来を奪うって事じゃないか?


高額な預金も置いてきたし、入籍も済ませているから遺産相続も問題ないだろう、俺には親兄弟親戚も無いので、母子共に暮らしていくのに問題は無いはず。


魔人の脅威が無くなったという事は、詩織が付け狙われる心配も無い。


では、異世界の幼女に転生する道はどうだ?


すでに幼女の魂は死んでいるとの事だった。


なぜ?そのような事に成ったのかは分からないが新たな生命、俺の子供の可能性を断つより良い選択に思えた。


彼女は頷くとさらに近寄って説明を始めた。


「異世界の神はとても弱っています。

 魔王の脅威で地位が揺らいでいるのです。

 貴方があの幼女に転生するならば、

 私は貴方に一つだけ望む力を授けたいと思います。

 何を望みますか?」


とても悲しそうな慈しむような複雑な表情で、問いかけてくる。


第一選択はあのスナイパーライフルだろう、幼女の姿でも即実戦配備可能な俺のカスタム仕様で実績もある。


しかし、あれはマジカルファンシーXの前衛あっての代物だ。


単独行や接近戦では不安が残るし、向こうの世界がどんなものか不明だ!


向こうの神は弱っているが、逆にこちらの神は強いとの考えも成り立つ!


そして向こうの世界は魔法の世界だと聞いている。


ならば答えは決まっている。


「神様の持つ魔法と魔法を行使する力、あなたの魔法の力を私に下さい!」


一瞬意外だと驚いたような表情を見せた女神はきっぱりと宣言した。


「いいでしょう!選択はなされました。

 異世界とこちらの世界では物質的な交換はできません。

 新たな力は貴方の魂に刻み込まれます。

 どうか、あちらの世界の魔王を倒し、再びこちらの世界に

 脅威が訪れない様に、その力を揮ってください。」


女神は美しい微笑みを浮かべながら再び頭を下げる。


「私があちらの世界で力を行使することはできません。

 あなたの活躍をお祈りいたします。」




突然、自分自身が一点に収束した様な感覚に驚いていると、バリバリと何か目に見えない壁を突き破るように、どこかに食い込んでいくような感覚、そして体が分解され再び再構成されていくように感じた瞬間、景色が変わった。


しかし、目に映る景色よりも、頭に流れ込む情報の嵐が凄まじい勢いで暴れ濁流の様に記憶と情報が混乱する。


目をつぶり耳を塞いで全身の悪寒、寒気に震えながら大声で叫んでいた。


何時まで続くとも知れない苦痛は突如として消失した。


脱力して目を開くと、だれとも知れない女性が驚いた様にこちらを見ている。


肩を掴んで揺さぶられている事に気が付き、彼女の目をみて視線を合わせる。


「вы заметили!」彼女は何かを語っているが意味が分からない。


彼女は何度か話しかけてから、両手を離して扉から走って出て言った。


豪華な作りの部屋にベッドが有り、そこに半身起こしている状態だ。


体はファンシーりなの体と同じように思われた。


体にはびっしょりと汗が滲んで、まるで1500mマラソン直後のようだ。


『現在、脳内残存記憶の整理が行われています。

 ブローカ中枢及びウェルニッケ中枢、視覚性言語中枢の解析を実行中。』


『ぷぷるん!お前付いて来てくれたのか!』


言語が混乱している為か、思考だけで念話が成立する!


『私は、あなたの魂を維持するためにあなたの霊体情報の一部として

 この世界にやってきました。

 この世界は私の神の領域と異なるため、使徒としての活動は制限され、

 この世界での活動範囲は貴方の思考領域内に限られます。』


それでも誰か分かっている存在が居るって、安心できる!


『ぷぷるん!これからもよろしく頼むよ!』


ぷぷるんの活動を邪魔しないために、一旦寝ることにする。


ベッドに横に成ると自然と眠気が襲ってきた。






「旦那様、ハンス様大変ですっ!」


慌てふためいた女が執務室に入ってくる。


田舎娘で面倒見が良いのが取り柄だが、伯爵邸内でこの慌てようは、教育をもう一度しなければならないと、執事のハンスは眉間に皺を寄せる。


彼女はお嬢様付きのメイドとして、お嬢様に付き添って昼夜分かたず面倒を見させている。


「どうしたのだ!マリア何か有ったか?」


旦那様が少し不機嫌に成って、マリアに質問する。


「おじょっ おじょう・・・お嬢様が、意識を取り戻されました。」


ハンスは身を翻してマリアの方を見る。


旦那様は机に手を付いて立ち上がると、マリアを睨みつける。


「本当か?間違いないのか?」


一瞬怯んだマリアだったが、旦那様を睨み返すように言った。


「まっ・・・間違いありません!」


ハンスは動転しながらも思い返す。


いつも曇った視点の定まらない目で、遠くの方を見ている。


何を話しても、どんな物を見ても反応を示さないお嬢様の意識が戻られたというのか?


神聖魔法の使い手や、司祭、司教、魔術師、薬師、怪しげな呪術師まで呼んで分かったことは、心が死んでしまったということだった。


このままでは衰弱して心の死から遅れて肉体の死へ移行するだけと言われていた。


マリアは毎日流動食と水を飲ませて、下の世話をして体を拭き献身的に世話してきた。


旦那様はマリアに近づき、その両手を肩に乗せて


「本当なのだな。」


尚も確認する旦那様に、マリアは目を逸らさずに深く頷いた。


屋敷の医師と薬師を呼び寄せて、旦那様とマリア、ハンスは様子を確認するため、お嬢様の部屋に向かう。


部屋ではお嬢様がベットに横に成って寝息を立てていた。


一同はマリアを見るが、マリアはプルプルと首を振って。


「ホントに本当なんです!間違いありません!」


必死に旦那様にすがり付いて訴えるのだった。




そんなやり取りをしていると、お嬢様がむくりと起き上がり、目を擦りながら呟いた。


「Я не могу спать, потому что шумно」


共通語では無い何語を話しているのか分からないが、確かに意識が有る。


医師と薬師はお嬢様の脈を取り、舌や目を診察し始めた。


「перестань, это больно」


不快そうな顔つきで嫌そうにしているが、やがて眠そうに目を擦って、再びベットに横に成るのだった。


旦那様はそんなやり取りを茫然とした表情で見て呟く。


「シャルロッテ!」


医師や薬師は詳しいことはまだ分からないが、お嬢様は混乱しているのだろうと言い、ゆっくりと休ませて回復を待つのが良いとの結論に成った。


明日の朝一番で司教様と魔術師協会の会長を呼ぶことに成り、旦那様とハンスは執務室に戻って、それらの手紙を今夜中に届けるための準備に掛かった。


マリアは今日もお嬢様の傍で寝ながら考える。


お嬢様のあんな行動は初めてだ!叫びだしたと思ったら、目線を合わせて確かにこちらを人と認識していた。


共通語ではないが言葉も発していた。


そして、目を擦ったり、医師たちの診察に嫌そうな表情を作っていた。


間違いなく意識を取り戻したのだ!


あの事件から、自分の姉の命と奥様たちの命が失われた時から閉ざされ、死んでしまったと思われていた心が帰って来たのだ!


マリアはお嬢様の寝顔を眺め涙を流しながらいつしか眠りに付いていた。


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