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第25話 魔人相討つ



誰かが撃たれた様だ、奴に第二射は撃たせなかったが・・・


確認のため魔法少女たちにスコープを合わせると、るるの左肘から先が無くなっている。


出血は止まっている様だが大丈夫なのか?


まだ、断崖にスナイパーが隠れているかもしれない、熱源モードで崖や砕石の搬送コンベアーを見ていくと等間隔に不審な動きの戦闘員や怪人が張り付いている。


次をやらせる訳にはいかない。


長物を持つ奴らから順に仕留めていく。


敵の武装が機能しなければそれでいい、正確性よりも速度優先で見える範囲のスナイパーらしき敵を片づけて行く。


『りな危ない!』


声に反応して咄嗟に体を捻るが、肩に激痛が走る。


とてつもない衝撃を伴って、肩を何かがかすって行った。


動かなければ脳天に命中していただろう。


「ぷぷるん今のはなんだ!」


『大型の魔力弾攻撃です。

 魔法少女の魔力防御が無効化されます、当たると命に関わります。』

 

カウンタースナイパーと言うよりも大砲がいるのか!

こちらが倒した敵の戦闘員の配置から、こちらの位置を割り出した?

だとしたら、ここに居続けるのは危ない!


背後のプールに飛び込むように、体を躍らせて飛びのくと同時に、爆発の様な衝撃が起きる。


次弾発射までのタイミングは数秒だ、機関銃の様な連射だったら危なかった。


左腕に力が入らないが苦労して、茂みの中を匍匐前進で移動する。


あちらに大砲が居るなら、こちらもそれなりの対応をせねば成らない。


自由の利かない左腕をぶら下げての移動では、時間がかかりすぎる。


すでに南面のこの辺りに自分が存在している事を知られている。


今頃地上の部隊がこちらに急行している事だろう。


あまり時間は無いし、勝負を付けるには、今しかない!


伏射の姿勢で地面に体を投げ出し、ライフルを構える。


「ぷぷるん服をゆっくりと盛り上げて俺の背中に人間が立っているように偽装できるか?」


『分かった!やってみる!』


背中にバルーンが膨らむように服が盛り上がる。


「頼む!掛かってくれ!」


北面の崖に発射光が一瞬フラッシュしたと同時に、背中の服が破裂した。


フラッシュが見えた位置にクロスラインを合わせる。


なんだアレは?


真っ黒な顔に真っ黒な衣装の存在が、片腕の肘から先が大砲の様な筒状の長いパイプが付きだしていて、それがこちらを向いて狙いを付けている。


下半身はタコの様な軟体生物の様に足をヌメヌメと忙しなく動かして。


スターライトスコープの映像に何かを合わせてクリアーになった映像は、極めてグロテスクな物だった。


「ぷぷるんアレは?」


あれはヤバい!直感で体に警報が発せられるように!


ぷぷるんの答えを聞く前に素早くクロスライン中央を奴の頭部に合わせて、トリガーに指を添え、続けて指を引き絞る。

流れる様な一連の動作で弾丸を発射する。


同時に大砲の砲口にフラッシュが煌く、次弾発射が予想より早い!


発射されたお互いの弾丸は広場中央の磔台上空60m付近で、僅か5cm距離を置いて相対速度約1600m/sのスピードですれ違った。


敵に対して小口径高速弾であるりなの弾はほんの数ミリ秒早く、敵の真っ黒な頭部に吸い込まれると、魔石結晶の効果で、対象の持つ魔力を急速に吸収して膨張し、敵の体の内部から爆発的な衝撃波を伴って粉微塵に破壊した。


その2ミリ秒後に到達した敵の20mm魔法結印弾は、りなの眼球を打ち抜く弾道を辿ったが、体に接触する寸前魔法結印が効果を発揮し、ファンシーりなの変身能力を奪い去った。


体は異世界体と交換されて元に戻り、魔法防御力の完全に失われた琢磨の体に突き刺さった弾丸は脳の大部分を微細なピンク色の霧に変えて、首から上の構造を破壊した。


首の無い琢磨の体が大地に転がった。


しばらくの間、心臓の鼓動は反射的に行われていて、頸動脈から一定のリズムで血液を送り出し体はぴくぴくと痙攣して大地に血液をしみこませていたが、やがて静かに動きが止まって行った。


ひと知れず行われた死闘の直後、戦闘員と怪人に施されている脳にインプラントされた魔人の祝福の効果が失われ、戦闘員と怪人はその場に崩れ落ちた。


寸刻前まで行われていた乱戦が嘘のように静まり返り、この広大な施設において、生きて立ち尽くすのはみりとるるの魔法少女二名だけとなった。


そんな中で敷島梓は、状況も分からず狂ったように笑い続けるのであった。




「あっ!」


ふと、声を上げる詩織に、ぽんすけは不思議そうな仕草で問う。


「どうしたの詩織?」


「今、琢磨さんに呼ばれたような気がしたの。」


詩織は嬉しそうに少し頬を染めて微笑むと、琢磨の無事の帰りを願った。


「あれ!」


ぽんすけの体が霞み実体がおぼろに成って行く。


「伊藤詩織さん魔人の討伐は完了し、自分の使命も完了しました。

 どうかこれからのあなたの人生が幸多かれと願います。

 これまでありがとう、さようなら!」


ぽんすけは、魔力が失われた時と同様に消えてしまった。


「ぽんすけ・・・。」




WHO世界保健機関の緊急発表によると、


以前から周辺国に対して挑発的な行動を繰り返していた全体主義国家で、大規模なパンデミックが発生し、人口の95%が死滅する事件が起きていた。


突如として発生した致死的な感染症と思われていたが、この国で指導部も含めて、ほぼ全員の国民に対して強制的に脳の一部を改造していた事が分かった。


その機能が失われたことによるショック死であったことが判明するまでかなりの時間を要した。


そして、周辺国でも、政治的中枢のいくつかの重要人物が即死したり、薬物の禁断症状により発狂する者が出て来て混乱が起きていた。


宗教団体による薬物製造工場が摘発され、教団施設から大量の死体や人体改造の設備、人体改造で死亡した亡骸が発見されて、連日ワイドショーを賑わせた。



同じころ蛭間大輔は自宅のベットで死亡しているのが発見された。


彼は死亡後数日が経過しており、普段から自宅の自分の部屋に引き籠っていて、家族と顔を合わせることも稀だったため、食事を運んでいる母親が数日間食事を取っていないことを不審に思い部屋を覗いたところで死亡しているのを発見した。


死因は心臓麻痺と診断された。享年30歳であった。



火星軌道の周辺に遊弋する一隻の宇宙船。


銀河帝国第二方面軍の三等ミサイル駆逐艦が銀河中央に向けてワープを行うための準備に入っていた。


「艦長、あの星壊さないですみましたね!」


「ああ。」


あの星に侵入した異世界構造体は、どうやら原住民の力で排除できたようだ。


中央の予測では、数十パーセクの範囲が瞬時に失われる可能性が有ったらしいが?


しかし、その脅威も取りのぞかれた。


また何らかの脅威が発生するまでこの惑星は、自然保護区として守られるだろう。


「艦長準備が出来ました。」


「ああ。」


三等ミサイル駆逐艦は恒星破壊ミサイルを搭載したまま、銀河中央領域にワープしていった。




見知らぬ存在が目の前に現れて言った。


「伊藤琢磨さん・・・あなたは死にました。」


「えっ???」




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