第24話 乱戦の果てに
空間から沸き立つようにみりが現れて片手を上げて挨拶してくる。
「相変わらずゆいは、いつも早いね~!」
何時ものように振り返って、笑顔で答える。
「えへへ、みりだって!あたしも今INしたところ。」
「皆さんごきげんよう」
そこでるるも登場して皆で情報共有だ。
今回は砕石工場の封鎖された破砕建屋の3階からスタートだ!
敵は、唯一の出入り口となる道路に戦力の大部分を集中している。
その裏を突いて敵の設備内部からの人質救出と脱出となる、救出者は薪の上に縛られている磔はりつけの女性で、それ以外の登場キャラは全て敵と成る。
今回はスタートから2倍ボーナス付きだ!
救助対象者は薬による幻覚洗脳の可能性が有り、無力化しての救出が必須となる。
そうこうしているうちに磔台はりつけだいの周辺でイベント発生だ!
露出過多の衣装を纏う熟女のキャラが演説を始める。
「この女を見なさい、この女は自ら進んで魔女となり
なんの罪もない敬虔な信者を面白半分に虐殺した。
そして魔人様の忠実な僕である我々を殲滅しようと日々活動し、
破壊工作の限りを尽くしてきた。
無念の涙に散って行った仲間の恨みを今晴らそう!
ここに我らの教団裁判所は、彼女に対して火炙ひあぶりの刑の
実行をここに宣言する!」
居並ぶ戦闘員たちの大きな声が波のように押し寄せる。
「ウラーッ!」「ウラーッ!」「ウラーッ!」
賛意を示した唸り声が響き渡り、全員が高く腕を振り上げている。
熱気が冷めやらぬうちに、奥の洞窟から松明を掲げる集団が列に成って磔台の方向に二列に成って静々と進み出る。
全員が黒い尖がり頭の頭巾をかぶって、目の部分に穴が開いていて、体を覆うダボダボの服を纏まとっている。
どこからともなく歌声が上がると、それに全員が答えて合唱が始まる。
「魔人様の忠実な僕しもべの我らは全てを捧げて忠誠を示す」的な歌詞が永遠と続く陰気な歌だ。
「るる、ゆい、この松明集団がこの建物の前に来たら行動開始だよ!」
みりは、機械の残骸に体を寄せて、窓の隙間から周囲を窺いつつそんな指示をだした。
ゆいは小手の具合を確かめながら、みりの目をみて了解と頷く。
「了解です。」
るるは、自分のロッドに祈りを捧げる仕草で静かに答える。
「了解しました。」
松明行列の中央がこの建物の前に差し掛かったところで、みりの合図と共に、二階の窓を蹴破って地上に降り立つ三人の魔法少女たちは、間髪を入れずに目の前の松明行列に殴り込みを掛ける。
みりの炎の剣が一閃されると隊列は大きく乱れ、るるの魔法弾が炸裂して吹き飛ばす。
ゆいの連続パンチで周囲にいた松明の列は崩壊した。
転がる戦闘員の死体の前に立つ三人の魔法少女に向かって、露出過多の衣装を纏う熟女のキャラが誰何する。
「何者だ!名をなのれ!」
「炎の煌きは正義の光、美少女戦士ファンシーみり!」
「青き光は正義の裁き、美少女戦士ファンシーるる!」
「緑あふれる生命の力、美少女戦士ファンシーゆい!」
「「「三人そろってマジカルファンシーX!」」」
三人の決め台詞とそれぞれの決めポーズが決まった!
「おのれマジカルファンシーX生きてここから出られると思うなよ!
皆の者やっておしまい!」
様式美のお約束から乱戦が起こり、魔法少女たちが戦闘員や怪人どもと乱戦を繰り広げる。
「とうとう始まった。」
監視ポイントから脅威と成りそうな存在をスコープで選別する。
この場で一番目立っていたのは、あの熟女だ!
クロスラインを熟女の頭部に合わせて様子を窺う、周囲の戦闘員や怪人に指示を飛ばしている姿からも、それなりの上級将校であることは間違いなさそうだ。
ゆっくりとトリガーに指を掛けて、弾丸の装填されるカチリと冷たい響きを感じながら、トリガーを引き絞って初弾を発射する。
「プスッ!」と静かな発射音と共に、幼児体形でもほとんど感じられないような弱い反動を受けて確かに発射されたことを感じ取ると同時に、スコープに捉えていた熟女の頭部にピンク色の霧が浮かび、スコープ内から彼女の体が消えた。
熟女の上級将校は、右側頭部やや上から入った弾丸が、傾斜角12度で海馬と脳幹を打ち抜いて、左耳のすぐ上あたりを中心にした巨大な穴を穿って、頭部を貫通して行った。
隣に立っていた白くてぶよぶよしている怪人の背中に粉々に成った脳みそと脳漿をぶちまけて紅白のまだらの、まるで印象派の芸術作為品の様な有様の模様を作ると、前のめりにぶっ倒れた。
スコープ越しに見ても「グシャリ!」
という音が聞こえるような倒れかただった。
入り口道路付近に集結していた少し毛色の違う集団に目標を変える。
黒い縞々しましまとか、赤い仮面とか、ピストルぽいのを持ったやつとか、これまでの怪人たちよりも強そうなやつらだ。
魔法少女三人に近づく前に無力化していく。
後は機械的に処理するだけの単純作業だと思っていると、突然この渓谷全体に響く様な大きな「バキューン」と大きな音が聞こえる。
みりのすぐ横に派手に土煙が舞っている。
着弾は少しズレたようだが威力はかなりの物の様だ。
発射点はどこだ、スコープの倍率をズームアウトして、全体を見渡す。
北面の崖上に一瞬光った!
数秒後にまた同じ大きな発射音がこの砕石場全体に響き渡る。
発射点にズームして行くと、ゴテゴテと飾りの付いた人物が、ライフルを構えて笑っている。
『るるが撃たれた!』
今の射撃でるるに当たったのか?次弾を発射させる訳にはいかない、クロスラインを素早く合わせて引き金を引く、あせった射撃でがく引きに成ったのか、弾丸はやつの口に吸いこまれて、ちょうど笑っていた前歯上下6本が瞬時に砕け散って、直進した弾丸は喉の奥に突き刺さると、頸椎を突き破って首の後ろから出て行った。
近くに立っていた彼の部下は、生木を裂くようなバリッ!という音を聞いて振り返った時には、倒れた上官の頭部からおびただしい量の血液が、心臓の鼓動と同時にピューピュー吹き出すさまを目撃した。
倒れた彼の手元にはレミントンM700ライフルにリューボルト6倍スコープの付いた狙撃銃が血まみれに成って転がっていた。
この銃の弾丸はウインチェスター308の170グレイン魔力結印加工弾で、魔法少女に絶大な効果が有ることが実験の結果から判明し、急造されていた。
爆音が聞こえたと思ったとき、少し前でロッドを振り回して戦っている、るるの腕が爆発したように肘から千切れる。
「るるっ!」
ゆいは急いでサポートに入り、るるの近くにいる怪人どもに高速の連続パンチを加える。
「みり! るるが撃たれた!」
みりは一瞬驚くが、るるに近づこうとする敵を一手に引き受け逆に押し戻しながら薙ぎ払っていった。
るるは片膝をついて荒い息で呼吸をしているが、懐からポーションを取り出して一気飲みすると、ロッドを握りなおして立ち上がる。
「ポーション飲んだからまだ行ける!」
片腕の肘から先を失ってもスラリと立ち上がり、凛とした笑顔を浮かべる姿に敵の戦闘員も一瞬たじろぐ。
るるはキリリとした視線を断崖の茂みに目を向けて、
「立ち止まっていると敵の的になります!動きましょう!」
と言って走り出す。
すかさずるるの横に走り寄って声を掛ける。
「近接戦は任せて!」
るるは頷くと、ロッドから魔法弾を放って処刑台に迫る。
周囲の敵をみりが切り伏せて状態を確保している。
突然巨大な閃光が煌き、先ほどるるを襲ったそれよりも大きな衝撃が南側の断崖に衝突した。
「あんな大型兵器だと片手だけじゃ済まない!
急いで人質を確保しますよ!」
るるが叫んでロッドから連続して光弾を放つ!
処刑台に縛られている女性のマーカーは緑だ!
間違いなく救助対象だが、意識が無いようにだらりと首を下げている。
ゆいは素早く処刑台前に移動し、女性に声を掛ける。
「私たちはあなたを助けに来たの!
お願いだから静かにしていてね!」
戒いましめめを解いて抱きかかえる様に女性を降ろす、女性は急にゆいにしがみ付くと、隠し持っていた注射器をゆいの首筋に突き刺して勢いよく薬液を注入した。
「なに?」 視界がぐらぐらと揺れてゆいの意識が遠のいていく。
救助対象の女は目を大きく見開き、大口を開けながら
「アハハ! アハハ!・・・アハハハハ!」と狂ったように笑う。
仰向けに倒れたゆいを膝を付いて見下ろしながら大声で笑い。
「私・・・私がやった! 魔女を倒したのは私よ! 魔人様!」
笑い声は叫び声に変わり、女は涙と涎を垂れ流しながら、なおも笑い続けている。




