第23話 新婚の朝そして
新婚初夜が明ける。
お互いにどのような形が正しいのか乏しい知識を総動員し、朝まで頑張ってしまった。
柔らかな体に可愛らしい声、恥ずかしそうな態度は琢磨を野獣に変えた。
エロビデオとエロ漫画の知識しか無い琢磨にとって、ただガムシャラに45年分溜まったものを吐き出し続ける行為と成った。
夜が明けて横に眠る彼女の顔が一層愛おしく感じられた。
ぷぷるんがいつの間にか近くに歩いて来て、ぼそりと呟いた。
「夜はとてもうるさかったよ!」
それは改めて第三者から指摘され、このおんぼろアパートの防音性能を思い出すと、とんでもなく恥ずかしい事を実感するのだった。
隣は一人暮らしの老人で、上に誰も住んでいないことが、せめてもの救いの様に感じられた。
「琢磨大変だ、また一人魔法少女が輸送される情報だよ!
5日後に採石場のある敵の秘密基地で、魔法少女が処刑される。」
「敷島梓が処刑される?」
もう一人の囚われの魔法少女、敷島梓20歳、我が嫁詩織と共に魔法少女と成って戦っていたが、同じく教団に捕らわれていた、彼女も酷い拷問を受けていたのだろうか?
大きな声を上げてしまい、彼女が目を覚ます。
「琢磨さんおはよう!」
まだ眠そうな目をうっすらと開けて、にこりと微笑む。
次の瞬間、衝撃的な言葉が発せられた。
「あっ! うさちゃんのぬいぐるみだ、可愛い!」
「あの・・・ このぬいぐるみ見えるの?」
彼女はぷぷるんを抱き寄せて、愛おしそうに頬ずりするのだった。
彼女の魔力は尽きていたのではないか?
何やかや色々注入さたからか、それともメンタル面での回復が原因か?
それが何か分からないが、確かに彼女にはぷぷるんが見えている様だ。
「さっき敷島梓って話声が聞こえたけどなに?」
彼女は真剣な顔つきに成って、先ほどのぷぷるんの話の内容を聞いてきた。
「敷島梓の居場所が判明したんだ。」
「えっ! 梓ちゃんが?・・・・」
敷島梓はしばらくの間、彼女と同じ収容施設に捕らわれていた様だ。
同じ魔法少女で有ったのだから、恐らくは凄まじい拷問を受け、身体的にも精神的にも酷いことに成っているに違いない。
「お願いします琢磨さん、どうか梓ちゃんを救ってください。」
彼女の正義感と人生観では、一緒に戦った仲間を見捨てて自分だけが幸せになるような卑怯な真似はできないだろう。
そんな彼女の真直ぐな所も魅力的だ。
「わかりました、準備が必要です。
直ぐにでも行動に移す必要があります。
必ず救い出して、ここに戻ってきます。
それまでここで十分に休養し、回復してください。」
彼は救出作戦の準備のために出ていった。
準備計画は慎重にかつ完璧に行わなければ成らないと彼は言った。
三人の魔法少女がフロントで、自分はバックアップサポートだと、彼が私をあの地獄から救い出してくれなければ、今頃どうなっていただろうか?
当面の生活資金と言って、封筒に入った現金と、通帳と印鑑を彼は置いていった。
伊藤琢磨名義の通帳には、とんでもない額の残高が印刷されていた。
彼女は、即席で作った神棚に、印鑑と通帳を置いて彼の無事と無間地獄の様なあの環境から梓ちゃんが救い出されますようにと祈る。
「・・とり ちゃ・ん・・こ・・り・・ちゃん・・・」
祈り続ける彼女に何処からか途切れ途切れの声が聞こえる。
ジッと部屋の片隅を見ていると、それは少しづつ形が纏まっていき、ぽんすけの形に収束していく。
「ぽんすけ!」
狸っぽい形をしたぬいぐるみの使徒が可愛いしぐさで語り掛ける。
「小鳥ちゃん!魔力が回復したんだね!」
駆け寄ってぽんすけを抱きかかえる。
「ぽんすけ突然見えなく成っちゃったから、とっても不安で寂しかった。」
「小鳥ちゃんの魔力が完全に失われて、
留まっている事が出来なく成ってしまったんだ。
ごめんね。」
良いんだと、ぽんすけを一段とギュッと強く抱きしめた後、高く持ち上げて嬉しそうに話しかける。
「私、結婚したの、今は伊藤詩織って名前に成ったのよ!」
「君の体はとても傷ついているね。」
詩織は悲しそうに視線を落として、ぽんすけが消えた後に酷いことに成って、こんなに成っちゃったと、つとてめて明るく両手をぽんすけに見せるのだった。
「魔法少女ファンシーりりに変身して!」
なんでそんなこと言うの?といった顔に成る詩織に、ぽんすけは魔法少女に変身すると傷や病気が治るかもしれない。
一度試してほしいと、身振り手振りを交えて真剣に説得する。
「分かった!もしも体が回復するなら、
私も琢磨さんと一緒に戦えるのね!」
詩織はぽんすけを床に置くと、何度も唱えてきた変身のポーズを決めて呪文を唱える。
「りりかるマジカル、ぷるぷるりん、ぽぽろん、ぷりぷるり~ん!
ミラクルチャットで美少女戦士ファンシーりりになぁ~れっ!」
部屋全体が急激な光の爆発に包まれて、詩織の体が光の中に閉ざされる。
髪の毛が伸びてクルリと縦巻きの栗毛、衣装は高いヒールのニーハイブーツに
生足の太腿も露わなミニスカート、胸を強調するトップスにリボンやらレースが散りばめられたゴージャスな衣装で、目の前に現れる両端がハートの形に成ったバトンを掴むと、光の渦は突然消えて、美少女戦士ファンシーりりが顕在する。
「あっ!目が見える、目が見えてるっ!」
自分の目の前に両手をかざして掌と指を見る。
『ファンシーりりに成った時は指も大丈夫みたいですね。』
「だったらお願い、元に戻って!」
一瞬のうちに体が変身前の姿に戻ると、まず右手の指が5本有るのが目に入った!
両手の失われた小指と薬指が元に戻っている。
失明しかけていた目でしっかりと見ることが出来た。
砕かれた右足の膝の痛みも消えて、痣もヤケド痕も一切残さずに体の損傷は消え失せた。
伊藤詩織は20歳の傷一つない美しい体を取り戻すことが出来た。
うれしさで、ぽんすけを抱きしめてむせび泣く。
あの苦しかった日々、拷問と尋問の記憶を洗い流すように彼女は泣いた。
伊藤琢磨はレンタカーを走らせて、採石場に接近するための準備を始めた。
前回、今は自分の嫁を救出した回収地点から例の道を見下ろす。
深夜暗闇の中ギリースーツを纏い、ゆっくりと斜面を降りていく。
ドローンや監視はスナイパーライフルのスコープでは発見できなかった、以前の調査では車両の出入り時間は過ぎていて、車両の通過は無いはず。
暗闇の中で道路の反対側にたどり着きたい。
幼女の身長では下草の中に隠れて、どんなに優れたスナイパーでも見つけることは困難だと思われた。
自分と同じ武装の敵が現れる前提で行動するべきだ。
前回の救出回収作戦でファンシーゆいが15分で駆け登ってきたコースを2時間掛けて慎重に降りる、道路は雨水を通す溝を伝って横断したあと、背の高い茂みの中を縫うように進んでいく。
森に入ってからも、獣道を辿りながら足跡を残さない様に慎重に歩を進めるのだった。
茂みの中では草を揺らさない様に、開けた場所では匍匐前進で進み、ようやく採石場の広場が見渡せる位置にたどり着く頃には、朝日の昇り始める時刻に成っていた。
今回の作戦に余計な物は一切持ち込んでいない。
採石場の南側斜面のヌタ場の窪みを偵察ベースに設定した。
この場所の底には粘土状の細かい泥が堆積していて、これを顔一面に泥パックの様に塗布して、白い肌を隠し同じく首筋や手の甲にも泥を塗りこんでおく。
南面から北方向を向くとはいえ、何かの拍子で敵のスコープに捉えられるかもしれない。
倒木の木の下に這っていき木下の隙間に頭を突っ込んで、小さな空間を作りそこから採石場全体を監視する。
中央に薪が積まれて、何かの舞台のように色々な機材が準備される。
そうした作業風景を偵察しながら時間を過ごす。
昼間には広場に出て来て訓練する戦闘員や怪人の姿も見える、新しく建築が始まっている建屋に多くの人員が集まっている。
夜間の機材搬入の車両が続々と到着する中、白いワンボックスの車両が到着して、荷物のように乱暴に降ろされたのは女性だ!
敷島梓に違いない、彼女はそのまま怪人に担がれていき、薪の積まれた木の上に十字架の張り付け台が準備されていて、そこに括りつけられた。
彼女に意識は無い様子で下を向いているが、浅く息をしている様子だった。
時折激しく暴れる彼女に薬が投与されると大人しくなる。
「ぷぷるん役者は揃った。魔法少女の招集だ!」




