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第20話 教団のために

敷島梓は教団の警察幹部への浸透の成果により、捕獲が成功した魔法少女だった。

安藤小鳥と共に魔法少女に変身し教団施設に侵入して、施設の機材破壊を行っていたが、現在の魔法少女のような殺傷を伴わない活動だった。


NシステムやSシステムなどの交通系の監視カメラから、民間施設コンビニ個人宅の監視カメラ映像を警察の捜査権限を行使して本人を突き止めることに成功し、家族や親類、当時在学していた学校の生徒たちから洗脳教育を行い包囲していった。


両親や親類の洗脳と宗教団体への帰依により、教団施設への収監が成功すると、安藤小鳥への直接的な拷問と対照的に、薬物注射による反応をメインとした実験の対象となった。


覚醒剤に似た成分の魔人の微笑みシリーズや、ヘロインに似た魔人の溜息シリーズ、LSDと同等成分の魔人の幸せシリーズなどを濃度や量を変えての実験は致死量を超えても効果が見られなかった。


戦闘員への改造を目的とした魔人の祝福を脳内に直接注入する実験で激しい拒絶反応が起こり、魔法少女への変身能力を消失した。


敷島梓は一般戦闘員に見られる様な感情や知識の消失は起こらず完全な一般人化してしまったのだ。


そのころ安藤小鳥も激しい拷問により変身能力を失っていたため、教団はせっかく生け捕りにした魔法少女を二人同時に失ってしまった。



「42番入れ!」


背中を乱暴に押されて、部屋の中に投げ込まれるように敷島梓が部屋の中に入ってくる。


ここは尋問室、周囲の壁は黒くて中央に証言台が有る。


入るとすぐに、手錠の鎖を証言台に固定される、手錠の固定場所は床に座ることが出来ない絶妙な高さと位置に調整されている。


正面の壁面に取り付けられた強烈な照明が点灯すると、尋問官が入ってきて着席する。


背後の照明で顔の表情を見分けることが出来ないほど、暗い影が差している。

中央の尋問官がこうつぶやいた。


「42番!何か話すことは有るか?」



証言台を台ごと引っ張るように、この場から飛び出しそうな勢いで答える。


「私は何も知らない、お願いだから許してください」



尋問官はいつもの様に腕を顔の前に組んで、少しイライラした口調で話し始める。


「何も知らない。と言うのに許しを請うとは

 どういった事なのか説明したまえ。」


うろたえて視線を逸らしながら小さく声を出す。


「いや、私は・・・」


「先日43番が逃亡した。

  彼女に協力者がいた事は私たちも知っている。」


「えっ!何も知りません、逃亡だなんて今聞いて知りました。」


この厳重な施設から逃亡することが可能なのだろうか?


尋問官の別の男がゆっくりとした口調で話しだす。


「我々は君が思い出せるように手伝いをしたいと思っている。


 横のスクリーンを見たまえ。」


小鳥の立ち姿がスクリーンに投影されている。


この施設に連れてこられた時の物だろうか?


怯えた顔に43と書かれた黒い板を持たされて立っている。


ゆっくりとシーンが変わり、次第に顔や唇が腫れ上がっていく、殴られた様な痕は次第に数を増していき、次のシーンでは全身に痣が広がって赤くはれた場所や切り傷もある。


また次のシーンでは前歯の数本が半分削られて口から出血している。


両手に包帯を巻いて、血が滲んでいるシーンが出たり、別のシーンでは小指が無い右手のアップになる。


「ひっ!酷い・・・こんなこと・・・」


「彼女はとても非協力的な態度を取っていてね、

 彼女が素直に成れるように手伝いをしていたんだ。」


自分の呼吸の音がやけに大きく聞こえて、心臓の鼓動が早まる。


スクリーンにはどんどん変わり果てていく小鳥の姿が映っていき、次はお前だ!と責められている様に感じられた。


「42番、君は始めから協力的な態度で有ったので、

 思い出しやすく成ったと思う、彼女の逃亡を助けた、

 もしくは助ける様な者たちの心当たりを聞かせてほしい。」


身を乗り出して手錠が無ければ尋問官の靴でも舐めそうな勢いで訴える。


「知っていることは全部話しました。本当です、本当なんです!

 トン吉っていうぬいぐるみに騙されて魔法少女に成ったんです!

 全部を話しました!私改心したんです魔人様に全て捧げるって!」


右側の尋問官は静かにゆっくりとした口調で、やけに優しく呟いた。


「君が奉仕活動に取り組み、魔法少女に関する情報も提供をしている。

 非常に協力的な態度は、我々も好ましく思っている。

 心当たりを君の口からもう一度話してくれないか?」


「私本当に知らないんです。」


左側の尋問官が机をドン!と叩いた。


「42番!もう一度話したまえ。」


敷島梓はビクッ!と震えたあと諦めたように、かつて何度も尋問で証言したことを話し出すのだった。






尋問が始まってから40時間が経過した。


「お願いです、少しほんの少しだけで良いので休ませて下さい。」


何度も何度も繰り返し同じ話を続けている敷島梓に対し、尋問官は非情な言葉をぶつける。


「協力者について話したまえ。」


すでに足もとが覚束ない状態で、ふらふらとしながら答える。


「10分で良いので、お願いします。」


机が「どん!」と鳴って、尋問官から怒鳴り声が発せられる。


「協力者について、もう一度言え!」


歯を食いしばり悔しげに涙を溢れさせながら叫ぶ。


「ううっ! わたし・・・私どうしたらいいんですか!

 もう、私は魔人様に全てを捧げるって決めたんです!

 どうやって証明すればいいんですか!

 私!なんだって・・・何だってやるのにっ・・・ううっ!」


敷島梓は疲れ果てた体に鞭打って、荒い息を吐きながら力いっぱい叫んで答えたあと肩を落として泣いた。


この涙は自分の忠誠心を信じてもらえない悔しさの表れだった。


そうしたやり取りを黙って見ていた中央の尋問官は満足そうに呟く。


「良いだろう!君の忠誠を示せるように手配しよう!」


尋問官はにやりと笑ったが、強烈な光の影で誰にも見られることは無かった。


そんな彼女は、尋問官を見上げると恍惚の表情でうっとりと答える。


「ありがとうございます!」






42番という呼び方から、敷島梓に戻れた!


父と母が戦闘員に昇格したことが認められたのだ。


家も土地も貯蓄も全部教団に寄付した、これから教団の若い女の子と奉仕のお仕事だ。


教団の経営する風俗のお店で奉仕の仕事を沢山して、稼いだお金は全て教団に寄付する。


寄付したお金が多ければ多いほど位が高くなる。


私はとても悪い事をしたので、最下層のさらに下からのスタートだ。


「梓っち!おはよう!」


一緒に出勤する奈美ちゃんだ!


奈美ちゃんはとっても一生懸命な子で、家族全員で信者に成って、お父さんとお兄ちゃんが戦闘員に成れたって言っていた。


お母さんはお薬の工場で一日20時間働いている。


戦闘員に成ると無駄口もきかないし、力も強くなって魔人様の近くで働けるんだって!


奈美ちゃんも早朝から深夜まで一生懸命働いて全額寄付している。


「奈美ちゃん!少し疲れているみたい、だいじょうぶ?」


「えへへ!少し疲れてるけど、

 司祭様から疲れが取れる薬もらったから大丈夫!」


青い色の錠剤だ、これを飲むと疲れが取れるし、夜も寝ないで仕事に身が入るんだって聞いたことがある。


「魔人様からの大事なお薬だから、

 本当に辛く成るまで取っておくんだ~!」


疲れがとれて気持ちいい夢が見られるお薬。


「私も疲れたら、お薬もらえるかな?」


「奉仕に出ている女の娘は、

 お薬を毎日もらっている子だっているよ!

 注射のお薬の方がもっと祝福されるって聞いたよ。」


以前誰かから、魔人様の祈りが入っているって聞いたことがある。


「とっても疲れたら注射の薬もあるんだね!」


それを聞いていた向かいの女の子は手首の注射痕を大事そうにそっと撫でている。


奉仕のほかにも勧誘の仕事で、一般の人を施設に連れてくるのも女の子の重要な仕事だ、流行の服を用意して髪型も化粧も全部自腹で整えなければ成らない。


容姿が整った娘の特権だ!


敷島梓も人手が足りないので皆さんの迷惑に成らない様にと、服も化粧も自分持ちで教団へ借金をして勧誘の仕事も手伝っている。


今日も一日一生懸命奉仕して頑張らなくちゃ!


風俗街行きのバスに乗りながら楽しげに会話して、何だか毎日が充実していて、とっても幸せな梓だった!


バスは沢山の若い女性を乗せて出発していく。




教団に洗脳された人々、特に若い女性は風俗、若い男性は肉体労働に従事し、昼夜問わずに馬車馬のように働き、魔人の微笑みと呼ばれている覚醒剤に近い成分の薬剤を投与されてさらに身を粉にして働くことに成る。


薬で疲弊し現金収入面での価値が無くなってくると、脳を改造されて戦闘員と成る。


脳を改造されると、ゆっくりと感情が破壊され身体能力の高いものは怪人に改造されることもある。


いずれも脳に魔人の祝福と呼ばれる物質をインプラントされて、思考や感情が二度と元に戻ることはない。


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