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第15話 初代魔法少女


「動きが有りました!」


ぷぷるんが突然立ち上がって、そう叫んだ。


「おい!仕事中にビックリするだろ!」


今はバイト中だ!この階には誰もいないが、あまり大きな声で叫ばれても困る。


短期バイトの最終日なんだから、このバイト代は家賃に当てるつもりだ。


カートのバケツに目線を近づける為に、跪いてぷぷるんに話しかける。


「いったいどうしたんだ? 何か大変なことでも起きたか?

 あまり大きな声を出して、ぬいぐるみが動いてるってことに成ったら困るだろ!」


ぷぷるんはジッと目を見ながら衝撃的なことを口走った。


「ぷぷるんは魔力を持たない人間には見えませんし声も聞こえません!」


「えっ! 魔力が無いと見えないの?」


なるほど、魔力持ちを探してリクルート掛けていたんだから納得だ。


でも、魔力持ちが希少だが全くいないわけじゃない、それが敵対勢力や未知の勢力の可能性だって有るから、これまでの警戒は無駄じゃない。


「まっ!それはひとまず置いといて、何が有った、ぷぷるん?」


「囚われていた初代魔法少女が、まだ生存している事が分かりました。

 そして、警戒厳重な施設から、別の施設に輸送されるとの事です。」


魔法少女の救出作戦か、作戦計画を練る必要がある。


移動ルートと敵の護衛人数それに準備期間と救出時間に、こちらの戦力を分析する必要があるな。


「初代魔法少女はいつ輸送されるんだ?」


「5日後の夜間に予想されています。」


準備の時間を有効に使わねばならない、まずはバイトをキッチリ終わらせて作戦を練るとしよう!


バイト明けの朝だ!


色々考えてソワソワしてしまったが、手抜きはしていない。


斉藤さんにありがとうと言われて、封筒に入った現金を渡される。


受取確認の書類にサインして、これでバイトは終わりだ。


昨晩屋上に上がるタイミングで、スコープ越しに教団病院を監視したが、特に目立った動きは見られなかった。


初代魔法少女の監禁場所は別の施設が使われているとの事だから関係無いのだが、このビルの狙撃ポイントへ合法的に入れるのは今日が最後だ。


監視カメラやセキュリティーの抜け道、屋上へのバックヤードなど色々調べてきたので最終確認だ。


帰り道、近くの大型書店に立ち寄って、国土地理院の1/25000地図を購入した。


ぷぷるんから聞いた辺りのものだ、教団の山岳秘密基地が有るらしく、その基地がそろそろ完成する。


教団施設で監禁されている魔法少女は、そこに移送される。


初代魔法少女は2名、敷島梓と安藤小鳥だ、2年近く教団施設に監禁されており、

現在の状態は不明だがどちらも生存はしているらしい。


移送は2名のどちらか一方に成るか、2名同時に成るかは不明だ。


敷島梓の家は現在更地に成っていて、家族もどこに行ったか分らない。


安藤小鳥の家はまだ有るが、外国人風の人間が安藤を名乗って居住している。


恐らくどちらの家族も教団施設に連行されて、洗脳や改造を受けて家族はバラバラに成ってしまったのだろう。


敷島梓も安藤小鳥も現在20歳だ、現役時代は17~18歳の高校生だった。


教団に拘束されていなければ、今は大学生だったんだろうか?


魔法少女も始めの頃は、今みたいに価値なしの人間採用じゃなくて、ピュアで正義感の強い娘をリクルートしてたんだから本当に良い娘だったんだろう。


人体改造も脳改造も躊躇なしの極悪教団に長期間監禁されて、相当ひどい目に有っているに違いない。


一刻も早く救出してやりたい!




「43番出ろ!」


ガタガタ鉄格子を揺すられて急がされる。


開いた鉄格子から出ると、二名の看守が詰め寄ってきた。


「静かに!大人しくしていろ!」


片側の看守は黒い袋の様な物を取り出して、突然顔に被せた。


「ひっ! ひっいやぁ~ やめてくださいっ!」


突然視界を奪われてパニックになりそうで、手を掴まれてジタバタと抵抗している間に、袋の首の部分にある紐を絞められてしまう。


「ゲホゲホ いっ 息がっ! うっ! くるしい!」


袋の紐で首を絞められている、呼吸が苦しくなり思わず咳きこむ。


「だから大人しくしていろと言ったんだ!」


静かに動きを止めて大人しくしていると、首の締め付けが少し緩まり、呼吸ができるようになってきた。


跪いてゼイゼイと大きく呼吸をする。



黒い布は完全に光を遮る素材で、目の前は真っ暗闇だ。


大きく呼吸すると口や鼻に張り付いて息が苦しい。


それに自分の呼気で布が湿ると、さらに苦しくなりそうだ。


呼吸を落ち着かせて、浅く静かに呼吸するように努める。


手錠の鎖を引っ張られながらへっぴり腰で廊下を歩いていく、今度はいったい何処に連れて行かれるんだろう?


不安で身の竦む小鳥だったが、彼女に打てる手立ては何もない。


どこをどのように連れまわされているのか分らない、手錠の鎖を引っ張られるまま歩いて行くと、何だか沢山の人の気配がする。


「お前ら魔女が居るのも今日までだから、しっかり教育してやれ!」


「殺すんじゃないぞ!」


何か激しい痛みが左手の甲に走る。


「いっ!痛い!」


「タバコは目立たないところにしておけ!」


突然鳩尾に激しい衝撃が加わる。


「うげっ! ごふっ! うっ・・・」


ヒューヒューと激しい息をしながら、跪いて何処とも見えない相手に懇願する。


「やめてください! お願いだから・・・ごめんなさい許してくださいっ!」


背中や顔に蹴りが入って、地面に倒れると周辺から沢山の足で踏みつけられる。


「魔女め!大量殺人鬼、皆の復讐だ!・・・」


そんな罵倒を聞きながら、いつしか小鳥は気を失っていた。




小鳥は夢を見ていた。


幸せだった頃の家族と車で海まで遠出したときの夢だ!


車を運転する父と笑う母、妹たち楽しかった家族旅行。


海で浮輪で遊んで、美味しい料理を沢山食べて!



「ああ!良かった、全部夢だったんだ!」


自分の発した声で、少しずつ意識が覚醒してくると、手や足にズキズキと痛みが走る。


相変わらず視界は真っ暗だ、ガタゴトと揺れる振動で車に乗せられているらしい事がわかった。


「おい!目が覚めたみたいだぞ!」


ぼそりと、知らない男の声が聞こえた。


「43番!静かにしていろ!」


別の声が脅すような口調で、静かに現実を突き付ける。


小鳥はさめざめと息を殺して泣き続けるのだった。





蛭間大輔は、自分のベッドで大の字に成って寝ていた。


明け方までお気に入りのFPSを楽しんでいたが、やはり魔法少女ゆいとして活動する超リアルMMORPGの満足感には程遠くモヤモヤしながら眠りに付いたのだ。


夕方近いこの時刻にメールの着信を知らせるアラームが静かに響く。


ガバッ!と跳ね起きた蛭間大輔は、PC画面に張り付き新着メールの内容を確かめる。


メールの内容は、やはり運営からのテストプレー予告だ!


今回は夜間の人質救出ミッション、民間人1~2名を車両から連れ出し、目標の回収地点まで輸送する任務だ。


みりとるるも出るだろうか?ログイン設定時刻は今日の22時からミッションシナリオプレーに入れるとある。


返信メールで了解の旨を伝えた!22時が楽しみだ!


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