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第14話 拷問の果てに


「おい!43番起きろ! いつまで寝ているつもりだ!」


ガチャガチャと格子戸を揺する音が聞こえる。


ああ、またいつもの繰り返しだ!ここが何処で何の施設なのかは分らない。


いったいいつからここに居るんだろう、頭がぼんやりする。


コンクリート剥き出しの小部屋で一面は格子のはまった牢屋、私は安藤小鳥43番じゃない!


しかし、口答えは出来ない、酷い仕打ちが待っているから。


長くて膝まである様なぶかぶかのTシャツみたいな服、胸にはマジックで43と書かれている。


睡眠中も手錠を嵌められて常に裸足だ!


部屋には蓋も便座もないトイレがあり、床に直置きの毛布があるだけ、トイレは格子の向こう側からも見える位置にむき出しで置かれている。


始めは恥ずかしくて泣いていたけれど、拷問や尋問に比べたら恥ずかしさなんて何とも思わない。


「43番グズグズしないで出ろ!」


薄汚れた部屋から格子戸の扉を開けて看守が怒鳴る。


また今日も尋問官に問い詰められるのだ。



肩を落として片足を引きずりながら、前後を制服姿の男に挟まれて連行されるのは、安藤小鳥20歳、魔法少女りりとして活躍していた頃の姿はもうない。


前歯は拷問で削られて、神経を剥き出しにされたところに針金で掻きまわして、強烈な痛みによる拷問に何度も利用され、今は前歯が全て抜けている。


気を失う様な痛みの拷問でも舌を噛み切って自殺する事もできない。


両手の小指と薬指は工具で少しずつ切られたため欠損している。


右目は失明寸前で視力はかなり悪くなっており、左足の膝が砕かれて走ることが出来ない体に成っていた。


睡眠時間は4時間程度の時もあれば、40時間一切寝させないことも有った。


初めのころは変身で回復していたが、両親や友人を人質に取られ無抵抗のまま様々な怪人の攻撃を受けて、やがて両親や友人たちからも罵倒され拷問されるように成なった。


「お前が悪魔に魂を売ったから家族が不幸になった!」


優しかった父親から罵倒され蹴られ。


「お前なんか産まなければよかった!」


と母から罵られ平手打ちされた。


「親友たちからお前のせいで・・・」


と言われ続けるうちに、何かがポキリと折れた気がした。


そのうちに励ましてくれていたポンスケが見えなくなり、魔法少女に変身する事も出来ない体に成ってしまった。


それでも執拗に疑われて拷問は苛烈を極めた。





黒い扉の前に連れてこられて、前の男が扉にノックすると。


重い音を立てて両開きの扉が開けられる。


真黒な部屋の中には証言台の様な物が中央にあり、その台に手錠が繋がれると尋問の準備が整う。


真っ暗な部屋に一人だけ立たされていると、正面に強烈な照明が点灯して目の眩む中、何名かの男が照明の光を背にして向かいの席に座る。


強烈な光の影に成って顔はまったく見えない。


中央の男が机の上に肘を置いて顔の前で手を組みながらゆっくりと呟いた。


「43番 本名 安藤小鳥 魔法少女に変身し、美少女戦士ファンシーりりを名乗って、罪のない人間を面白半分に虐殺した事に間違いないな!」


「面白半分じゃない・・・!」


あっ!しまった、つい反論してしまった。


「君は面白半分に殺害したのでは無いと・・・

 彼らが何をしたのか、どういった人間か分かって殺したという訳かね?

 そうした情報を何所から得ていたんだ?

 正直に話せば痛いことはしない、どうだ?」


「あっ、ごめんなさい私何も知らないんです。

 本当です。全て・・・全部真実を話しました。昨日も一昨日もずっとです。

 ただ、使い魔のポンスケに騙されて変身したんです。

 ホントです、誰とか連絡取る人なんて居なかったんです。」


涙を流しながら許しを乞う娘の姿をジッと見下ろし、右側の男が冷たく言い放つ。


「あなたの口から、始めから詳しく話しなさい!」


小鳥はあきらめて、始めからポツリポツリと順番に話し始めた。


ポンスケから悪い悪魔が、異世界からやってきて人間を改造していること、その人たちはドラッグや麻薬を販売していること、宗教を利用して沢山の人間を集めていること、正義の味方としてポンスケと契約して魔法少女に成ったこと、いくつかの倉庫やビルや工場を仲間と襲撃したこと、戦闘員や怪人を倒したことなどを順を追って詳しく語った。


「おかしいですね!あなたは昨日の証言では「私は」と言っていましたが、今日は途中で「私が」と成っていました。嘘を付きましたね!あなたは我々に嘘の証言をしました。」


右の男が指を突き出して、どん!と机を叩いて立ち上がる。


手錠で留められた腕を引っ張って逃げるように腰を引きながら涙をながして。


「ちっがうっっ 違います! 昨日は一字一句同じだったから嘘を付いているって

 ひっぐっう・・ だから だからすこし・・少しだけかえたんです。」


「あなたは嘘をついて誤魔化すために、嘘のセリフを暗記している。

 工作員が良く使う手です。そうした小細工を見抜いて本当のことを喋らせるのが我々の仕事です。

 さあ、誰に頼まれたのか本当のことを言いなさい。

 あまり強情にしていると特別室での取り調べに成りますよ!」


特別室との単語が飛び出すと目を見開き涙と鼻水を振り散らかして、脅えが急速にパニックに変わり反射的に叫ぶ!


「ひっ! いっ いやっ いやです! 特別室はいや、何でもします。

 何でも喋るからかんにんしてください!おねがいです・・・」


跪いて失禁しながらガタガタと震え、すでに目の焦点は定まっていない。


「特別室はいやっ・・・・うぐっ! 特別室はだめっ・・・・ひぐっ!」


「43番、聞こえていますか? 43番、答えなさい!」


どん!という机を叩く音で我に返った小鳥は、男の方をみる。


「立ちなさい43番!」


言われた通り立ち上がり鼻をすすりながら「はい」と返事をする。


「あなたは罪のない人間を証拠もなく殺害したのです。

 あなたの罪は、なんの罪のない人間を面白半分に殺害した。

 そして、それを吹き込んだ相手の事を正直に話さない!

 それが罪です。」



「ほっ 本当に、本当に知らないんです!

 ポンスケだって近くに居たのに今は見えないんです。」


涙と鼻水を垂れ流しながら必死に許しを乞うが、男たちの反応は冷たい。


「43番!右のスクリーンを見なさい!」


スクリーンには死んだ戦闘員が、腹から内臓を露出させ大地に転がる血まみれの映像が映し出されていた。


「43番!あなたが襲撃した施設で奉仕活動をしていた善良な一般市民です。

あなたによってこのように殺されたのです!」


そして、突然画面が変わり楽しげな家族写真が映し出されている。


中央にはあの戦闘員の男が、横には妻だろうか?子供二人と映った写真だ。


「あの男には愛する家族がいました。それをあなたは突然奪ったのです。

 面白半分に家族思いの男を殺害し、家族を引き裂いた!」


また、男の死体の写真に戻ると、それを見た安藤小鳥は大声を上げて泣き出した。


「ごっ ごめんなさい! わっ私とんでもないことをしてしまった。

 ごめんなさいっ・・・ ひぐっ ううっ・・・」


「お前は殺人者だ!目を逸らさずにスクリーンを見て反省しろ!」


スクリーンが次々に切り替わり、殺害された戦闘員の悲惨な姿が映し出される。


頭を叩き割られた姿や、焼かれた死体などの映像が次々と映し出され、それを見ながら小鳥は号泣して心の底から深く深く反省し自分を責めるのだった。


今回の尋問でも依頼者の情報は聞き出せなかった。


彼女が呼称する「神様」成るモノとの接触は、ポンスケなるロボットもしくはドローンに因るらしい。


彼女以外にポンスケなる物を見たものはいないし、監視カメラにも映っていない彼女は最近まで居たと証言しているが、この警戒厳重な施設に入るこなど不可能だ。


これだけ拷問を加え尋問しても、情報が出てこないのは本当に知らないのだろうか?


先ほどの戦闘員の凄惨な死体画像は、現在の魔法少女の手によるものだ。


あの死んだ戦闘員は宗教活動にのめり込み、ずっと以前に妻は自殺し子供は宗教施設で洗脳教育中だ、とっくの昔に家庭は崩壊していた。


彼女の武器では殺人はできない。


両端にハートの付いたバトンで、戦闘員をマヒ又は気絶させる攻撃であった。


今活動中の魔法少女は躊躇せず本当に殺しをするが、あの43番に実際に殺害されたものはいない。


しかし、尋問と拷問の過程で彼女を大量殺戮者としての偽罪の刷りこみに成功している。


彼女記憶では自分の大量殺人は事実ということになっている。


「42番はどうなっているか?」


現代に蘇った魔女裁判、尋問官は新たな尋問の方法を思案するのだった。


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