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第13話 銀河帝国駆逐艦


病院施設襲撃を完了して、人気の無い薄暗い裏通りに入る。


魔法少女三人は、無言で各々が先ほどまでの戦闘を振り返っていた。


目の片隅にシステムメンテナンス予告とカウントダウンが始まっている。


まだ、このままでいたい気分だが、運営がシステムメンテする以上仕方がない。


無料で楽しませてもらっているのだから。


「お疲れ~!」


肩をすぼめ右手を振りながら片足跳びで、空間に溶け込んで消える。


ぷりぷりのぶりっ子、ゆいがログアウトする。


「「お疲れ!」」


それを見て、みりとるるも空間に溶け込むように消えていく。




暗がりの中から全身黒ずくめの人間が数名音もなく現れて、ゆいの消えた辺りを慎重に調べ始める。


落下物や足跡など、収集できる物すべて集める勢いで作業し、その後、みりが居た場所や、るるの消えた場所を丹念に調べ回っていたが、やがて、その場から立ち去って行った。




ベッドに寝転んだ体勢で意識が覚醒してくる。


頭に装着したヘッドギアを外して大きく溜息を吐いた蛭間大輔は、天井を眺めながら、現実世界に戻ってきた感覚をゆっくりと取り戻している。


いつもと変わらない自分の部屋の天井だ。


肩まで伸びきった手入れもしない髪に無精ひげも伸び放題だが、Tシャツ短パンは洗い立ての様に奇麗に成っている。


始めの頃はゲーム中に親が着替えさせているのかと怒鳴り込んだが、服は間違いなくログイン前に着用していたものと同じだった。


だらしなく出っ張ってきた腹をポリポリとかきながら、今夜の達成感を反芻して心地よい気分に浸る。


魔法少女ゆいとしてゲームにログインし、敵の本拠地を叩いてきた。


結構経験値も稼いだし、レベルもアップした。


魔法少女三名はお互いに本当の姿を知らない、自分たちの先代魔法少女は身バレして、親兄弟親類縁者から打ちのめされて、精神病んでるって聞いてる。


オフ会もなにも、身バレしそうな会話は、AIの判断で相手に伝わらない、そんな感じのシステムに成っているらしい。


うっかりして年齢や趣味の話に成っても伝わらないし、キャラを損なうような言動は修正されてしまう。


この超リアルMMORPGシステムのヘッドギアは、応募した覚えが無いのにユーザー抽選に当選したとして送られてきた。


運営が発売準備のために最終運用チェックをしており、自分はプレーを楽しみながらそれに協力している感じだ。


今回のシチュエーションも凄くリアルで、殴った時の拳の衝撃や敵から噴出する血の温かさ、血液の滑りや鉄の様な匂いまで完璧に再現されていた。


こん棒や鈎爪の負傷もリアルで、実際に痛みも感じて本格的だった。


発売前に体験ができる自分だけの特別感が堪らない!


30歳にして現在絶賛引き籠り中の蛭間大輔は、15年以上のベテラン自宅(自室)警備員だった。


ネット通販とゲームだけの生活で、人と顔を合わせることもない。


親が食事や飲み物を廊下の前に置いていく以外に人との接触は無い。


ゲームログイン中の世界、魔法少女ゆいこそが本当の自分で、蛭間大輔としての自分は存在を消してしまいたいと思っている。


だからこそ設定キャラクターを忠実に演じており、運営側からは発売時にリプレーを宣伝に使いたいと、前回のメールに書いてあった。


運営からのメール連絡が唯一の連絡手段に成っている。


次のプレー開始のメールが入るまで、別のゲームで暇を潰そうと、ヘッドギアを脇に置いて、PCの前に座るのだった。


あれだけの時間プレーしていたにも関わらず、ほとんど疲れを感じていない。


彼が寝落ちするまで、長い一日は終わらない。





とある山中の廃業した砕石工場跡地は、数年ぶりに人の気配がしている。


進入禁止のバリケードで封鎖され、トラロープで幾重にも固定されたこの場所は、何年ものあいだ風雨にささらされて、劣化が進み朽ち果てようとしていた。


砕石のための機械や工場は朽ちかけているが、広大な工場敷地と周辺の森林など、山全体を宗教団体信者名義で入手した。


石を採集していた山の壁面は絶壁で、崩壊した壁面も見受けられるが道路からの視界は悪く、逆に地形的には防御しやすい。


操業当時は砕石のためのダイナマイトや爆薬の使用も有ったため、騒音や煙で通報される心配も無く秘密基地として理想的だ。


工場としての私設道路もあり、重機やダンプなどの出入りに違和感がない。


大将軍の地位を与えられている男は、じっと地形を見ながら思案する。


山の側壁にトンネルを掘り、そこに秘密基地としての施設を設置する。


戦闘員や怪人を都会の施設に置いておくと、人目に付きやすく訓練や気密保持に手間がかかってしまう。


この環境ならば銃や爆弾の訓練が可能となる。


魔法少女相手に素手や鈍器で対峙しても勝ち目は無い。


大賢者アムネシアの分析だと、魔人様の使う同じ質のエネルギーを利用していると考えられているが、現時点では解析する糸口すら見つけられていない。


実験用に確保した魔法少女によって、7.62mmNATO弾によるライフル射撃は魔法少女のシールド貫通に有効な事が分かっている。


魔力を帯びた武器が手に入れば、さらに有効な攻撃方法が分るかもしれない。





先ごろ行われた大賢者アムネシアと大神官ネメタスの共同作戦は失敗した。


いくら魔法少女を捕えるためとはいえ、性急に動きすぎたのが原因だ!


もっと静かに気付かれない様に行動して、相手が気が付いたときには、すでに重要な立場の人間が我々の手の者に入れ替わっている状態を作らねばならない!


今回せっかく集めた人員が一度に大量に失われてしまったが、心配はいらない、手元に大量の人員が手に入った。


魔人様が完全に掌握した国で集められた使い捨ての人材だ、漁船や工作船を使った非合法の手段で密入国させてかき集めた。


これらの人員を先の戦闘で死亡した戦闘員に置き換えて補充し、親兄弟親類などで身元を保証すれば特に問題には成らないだろう。




若い男女ならば強制的に結婚させてしまう手も使える。


子供を産ませて生まれながらの教団信者として使うのだ。


宗教ほど便利な統治手段は無い、信者は喜んで働き全財産を献金し家畜のように死んで行くのだから。


いずれはこの国の全ての人間を信者にして、魔人様の為に全てを捧げてもらおう!




銀河系の中心から火星軌道の周辺にワープアウトした一隻の


宇宙船が有った。


この宇宙船は銀河系オリオン腕を統治する銀河帝国第二方面軍の三等ミサイル駆逐艦だった。


1隻だけで航行しているのは、原始的な原住民に気付かれないため、要らぬ不安を与えてパニックを誘発させないための措置だった。


銀河統一思念体からのメッセージを受け、目標と成る惑星に、ネガティブな異世界構造体が活動している事を察知し、原住民による排除が達成できなかった場合の対応をとる役目であった。


原住民による排除が不可能な場合は、この惑星が公転する恒星に恒星破壊兵器を打ち込んで、恒星系ごと消滅させることが任務であった。



「艦長暇っすね!」


「ああ。」


船員と艦長の二名体勢で、この任務に付いている。


先行した隠ぺい型の偵察ユニットが、現地の惑星を映し出している。


「あんなに奇麗な惑星を消滅させちまうんですかい?」


「場合によってはな!」


かなり穏やかな気候の惑星で、周辺にブラックホールや超新星、中性子星や赤色巨星の影響もなく、銀河中央の様な文明の興亡もない。


遅れた文明がのんびり生存していくために、自然保護区に指定されている惑星だった。


最近に成ってようやく宇宙空間に進出できる技術が開発されたが、かなり遅れた田舎だ。


恒星破壊兵器をここの恒星に打ち込んだ場合、恒星の半径は対象の惑星軌道を超える大きさに膨張して、


惑星は恒星に落下して燃え尽きるだろう。


その後この恒星は白色矮星に変わって終了だ。


「原住民の頑張りに期待って感じですかい?」


「そうだな。」


まれに思念や、情報体などが次元を超えて侵入するケースがある。


そうしたものは通常この世界の法則に飲まれてほとんど無害だが、今回は魔法文明の何かが浸食していて異世界との間でゲート構築を進めているらしい。


ゲート開通によりこの銀河系の30%が瞬時に失われる可能性が有るという。


銀河帝国保有の最高威力スーパーノバ弾頭でもそのような威力は出せない。


「魔法とは凄いものだな。」


我々の種族は対象惑星原住民の千倍の寿命が有る。


まだ時間は有る、ゆっくりと見守ることにしよう。


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