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音のない場所。



 真っ暗な世界。


 音のない場所で私はただ浮いていた。

 意識はあるけど体の感覚はおぼろげだ。


 これが死ぬということなのか。前世での死に様は覚えてないから、こんなんだっけ? としか思わない。

 あ、でも。


「エリーとティナの前で死んだってこと……?」


 もしそうなら二人をすごく悲しませただろう。護衛してくれたワットたちにも辛い思いをさせたはずだ。


「私が死んだ後は……マンガの通りになるのかな?」


 ヒーローのロックが活躍する世界。ヒロインのティナ。当て馬のエリー。

 そしていつか魔王と呼ばれるモノを倒して平和になる。

 マンガのエリーと今のエリーは少し違う。ロックと出会い好きになってもティナに意地悪をすることはないだろう。


「エリーが幸せならそれも、いい……よね」 


 だけどそこに私はいない。

 そう思い至って、私は歯を食いしばった。

 今まで私がいた世界は、私が欠けた後も続いていくのだ。


 さみしい。


 私は両手をギュッと握りしめ、情けない声を上げた。

 急激に押し寄せた悲しさと、悔しさに子供のような泣き声が出る。


「ふ、ぇ……っ」


 転生に気づいてから、ここはマンガの世界だと、どこかで線引きをしていた。

 未来を知っているから世界の流れをコントロールできると思っていた。


 だけど……私はこの世界が大好きだった。


 周囲の人と楽しく生きてきた時間が大切だった。

 まだやりたいことがたくさんあった。


「くやしい」


 涙と一緒にポツリとこぼれた一言。


 そうだ、私はくやしい。

 怖い。

 死にたくない。


「デイビッド……」



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