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デッドリカバー  作者: 箱暗灰人
序章「闇を歩む者」
5/21

アキトの過去・2

アキト 28歳


村のとある家の中から大柄の男が2人がかりで運び出された家具を村の外れに停めてある8つの車輪が付いた機械駆動の車と呼ばれてる乗り物の荷台に乗せて行く。

車の回りには村の人々が集まっていた。

車の近くにはユイがいて、ユイの右側に車輪の付いた椅子に座る男がユイの父親で、父親の右側に立っているのがユイの母親だ。

3人の前には多くの村の人達がいて会話をしていた。

皆表情は暗く、中には泣いている人の姿もあった。

群衆の中にはアキトとタケルの姿はなく、その二人はアキトの家にいた。

アキトは部屋の角でうずくまり、そんなアキトの背中に向かってタケルが声を掛ける。


「なあアキト。早く行かないとユイ、行っちゃうぞ。そしたらもう会えなくなるかも知れないんだぞ?」


「わざわざ言わなくても分かってる」




それは前日の夕暮れ時のこと。

ユイはアキトとタケルに話があると家に呼び出した。

ユイの何か隠してるような態度は数日前から気付いていたが、聞いても何でもないとはぐらかされていた。

だからだろうか、話があると聞いた時に、重大なことだろうと覚悟をしていた。


「実は、ね。私ね……。村を、離れることになったの……」


「…………」


「…………」


驚愕の話ににアキトとタケルはすぐに反応が出来ず黙り込んでしまう。

2人の様子を見て、ユイは話を続けた。


「お父さんがね、裁縫の腕が認められて町で働いてみないかって話が来たの。お父さんの夢なの。お父さんには裁縫しかないから、裁縫がこれまで以上に生計に役立てることが出来るって嬉しそうに言ってた」


ユイの父は元狩人だったが、足に重傷を負い、怪我の後遺症で足が思うように動かせず、歩くことすら困難な状態だ。

狩人を辞めざるを得なくなり、他の仕事もこなせず、何も出来ない絶望的な日々を送っていた。

そんな中、足を動かさずとも仕事が出来る裁縫をオススメされた。

元々手先が器用だったからすぐに慣れていき、才能を見出だした。

村人が着用するほとんどの服、狩人の腕章はユイの父が作ったものだ。


「もちろんお父さんだけ行かせる訳には行かないからお母さんも付いて行くことになって、それで私はお父さんに付いて行くか村に残るかずっと考えてて……。私はお父さんの影響で裁縫をやってるの知ってるでしょ?裁縫をやってる内に、お父さんの夢は私の夢でもあるの。お父さんと同じように私も裁縫の道を進みたい。だから、町へ行けば私ももっと裁縫のこと知れるんじゃないかと思って、だから私も、お父さんに付いて行くことにしたの!」


ユイのこれまで溜め込んでいた話が聞けて、少しだけ安堵したような表情をするタケル。


「……そっか。そんなことがあったのか。ユイが決めたことなら、俺達は応援するよ。な?アキト」


「ああ、当たり前だ」


「ありがとう、タケル。アキト」


2人の言葉に嬉しそうに目を細めて小さく笑みを浮かべる。


「それで、いつ村を出るんだ?」


タケルは疑問をユイに問い掛ける。


「あ……」


タケルが質問をするとユイは顔を逸らし、目を泳がせ、そして答えた。


「……明日……」


「「明日ぁ!?」」


そこまでは想定していなかったアキトとタケルの驚きの声が重なる。


「ごめんなさい!私も行くってさっき決めたことだから、だからその、ごめんなさい!!」


必死に謝るユイを許してやることしか出来なかった二2人。




そして村を出る当日。

アキトはこうして部屋の角で壁を見つめて塞ぎ込んでいた。

そんなアキトをやれやれといった感じで肩をすくめると、口を開いた。


「ずっと前からユイのこと好きなんだろ?」


「なっ!?なんで知ってるの?」


驚いた顔で振り返るアキト。


「近くで見てたから分かるっての。もう会えなくなるかもしれない。だから気持ち、伝えてみたらどうだ?」


そう、アキトはユイをずっと好きだった。

好きな人が今日村から居なくなる、そう考えてる内に気持ちがゴチャゴチャになって、眠れない夜を過ごした。

アキト自身も、正直今何がしたいのか分からない状況にあった。


「そんなん、これから離ればなれになるってのに、今伝えた所で無駄に困らせるだけだ!」


アキトは再び壁に顔を向けた。

タケルはアキトの背中を見て呆れた表情をする。


(ユイだってアキトのこと好きなはずだ。例えもう会えなくなるとしても、好きな人に好きと言われるのは嬉しいし、励みになると思うんだがな)


タケルは呆れ顔から一転、真剣な表情に変わる。


「人は遅かれ早かれいつか死ぬものだ」


「え?」


急に声色を変えて話し始めるタケルに驚いたアキトは振り向く。


「だから死ぬまでに、後悔の少ない生き方を選べ。俺のじっちゃんの最期の言葉だ」


「最期の……」


タケルの祖父ミツヒロはタケルが15の時に亡くなっている。

アキトはのミツヒロことはよく覚えてる。

アキトにもタケルと同じように優しく接してくれた。

アキトにとっては実の祖父と言ってもいいくらい仲が良かった。

だから亡くなったと聞いた時は凄く悲しかったことはよく覚えている。

ミツヒロの最期の言葉は初耳だった。


「この話を聞いた時はまだ精神的にも幼かったからな。言ってる意味は理解出来ても、それを死に際にどんな気持ちで言ったのか分からなかった。でも成長した今なら分かる。分かったからアキトに伝えたい」


一度間を空けてから、タケルは話し始める。


「人はいつ死ぬのか予想がつかない。ずっと未来かも知れないし、明日かも知れない。もしもの話だけど、明日アキトが死ぬことになって、死ぬ間際になってアキトはこれまでの人生を振り返って、ここで死んでも悔いは無いってことはまずないよな。でも出来るなら、なるべく悔いは少ないに越したことはないよな?」


「まあ、そりゃあ、な」


「何かを選択する時、後悔がない方を選ぶのがまあ普通なんだけどさ、人は時に選んだ後のことも考えて、自分以外の誰かのことを思って、あえて後悔する方を選ぶことがあるんだ。アキトはさっきユイのことを思って自分が後悔する選択を選んだんじゃないか、と思ってな」


「…………」


アキトは目を伏せながら、タケルの言葉を飲み込み、黙って考え込む。


「誰かの為に自分を犠牲する。その生き方を選んでも後悔しないのであれば、俺はとやかく言うつもりはない。ただ、俺は出来ればアキトには自分の為に生きて欲しいとは思ってる。……だから今言ったことも考えた上で答えて欲しい。ユイに気持ちを告白するのか、しないのか、どっちなんだ?」


しばらく俯いて黙って考えてからアキトは顔を上げて答えた。


「……それでも言わない。そっちのほうが後悔すると思う」


アキトの表情は真剣だった。


「……そうか。わかった。アキトが心から決めたことなら、もう言わない。だったらせめて見送ってやれ。ユイだって別れ際に会えないのは嫌だと思うし」


「……ああ、そうだな。見送りはしなきゃな」


「じゃあほら急げ!」


タケルはアキトの背中を押して急がせる。

駆け付けるとユイの父母はすでに車に乗り、ユイも悲しげな顔で今まさに乗り込もうとしていた。

アキトは大きな声で呼び止めた。


「ユイ!!」


「あ、アキト!!」


振り返るユイの表情が晴れて笑顔になる。


「悪い!遅れて」


「ううん。見送りに来てくれて嬉しいよ」


「そ、そうか……」


2人のやり取りに頭の中で悶えるタケル。


(はー、くっそー!どっからどう見ても相思相愛じゃねーか!それなのにこの2人はよー、曖昧な関係て居続けてさ、ずっと見てたから分かるっつーの……。ユイはアキトを選んだんだから……)



遡ること1時間程前。


「ユイ、俺ユイのこと、好きなんだ!」


村外れの周囲誰もいない森の中で、タケルはユイに告白していた。

タケルの告白に目をまんまるにするユイ。

タケルの顔は真剣そのもの。

だからユイも真剣な顔になって口を開く。


「タケル……私は、その……ごめんなさい」


ユイは頭を下げて謝った。


「タケルの気持ちは嬉しいよ。だけど、私は、タケルをそういう風に見れなくて、だから、そのーー」


「大丈夫」


「え?」


タケルは優しく、そして少し悲しそうな笑顔で言った。


「俺、分かってたんだ。ユイに告白しても無理だってこと。俺はただ気持ちを伝えておきたいと思ったんだ。もう会えなくなるかもと思ったらさ、当たって砕けると分かってても言わなきゃ後悔すると思ったから。ホント、自分勝手でごめんな」


「ううん。そんなことない。ありがとう」


ユイもタケルと同じような顔で感謝の気持ちを言う。




そして現在、どちらも気持ちを明かさないことにため息付いて諦める。


(やれやれ。こういう所がお似合いなのかもな)


「ユイ、そろそろ……」


ユイの母が車の中から声を掛け、ユイは小さく頷いた。


「ユイ、元気でな」


「うん、アキトも、タケルも元気でね」


「おう。じゃあ、な」


最後は村の皆に聞こえるくらい大きく元気な声でユイは言った。


「みんなー!さようならー!!」


別れを告げると車に乗り、駆動音を上げて車は動き出す。

遠ざかる車が見えなくなるまでアキトとタケルはぎこちない笑顔で見送った。




アキト 31歳




村中は騒然となっていた。

慌てた様子で駆け回る人。

話し合う人。

どうしたらいいのか分からずオロオロする人。

慌ただしくしていた。


「なん、だろう?」


木材を乗せた荷車を引いて村に戻って来たアキトは遠目で見ていつもと違う空気を感じ取った。

ただならぬ様子にアキトは不安を覚え、もしかした誰かが死んだかもしれないと最悪の想像してしまう。


「まさか……!」


居ても立ってもいられなくなり、その場に荷車を置いて走り出した。

村の人を見掛けたか声を掛けられる様子じゃなく、アキトは自分の家に向かう。


「何があったの!?」


慌てて家に駆け戻り、家にいたサクヤに聞く。

サクヤは体をビクッとさせて、危うく椅子から落ちそうになる。


「うわっ!ととっ、ちょっと驚かせないでよ!」


「そんなことより!何かあったんでしょ!?」


「ちょっとちょっと落ち着いて!大丈夫、大丈夫だから!」


「大丈夫……なの?」


「えーっとね、私も詳しいことは知らないけど、いつもの狩場で魔物を見つけたらしいの」


狩場と言うのは狩人が狩る場所に適した場所のことだ。


「魔物って確か……あ、そうだ。魔法!魔法を使える獣のことだよね?タケは、皆は無事なの!?」


「軽い怪我で済んだみたいよ。狩人はみんな戻って来てて、対策会議をしているみたい」


「ちょっと行ってくる!」


アキトは走って村で一番大きな建物である狩人の集会場に来る。

中に入ると静かで、アキトが木の床を踏み、しなって音を鳴ると、急に奥から人がゾロゾロと現れる。


「どうだった!?って、なんだアキトか」


アキトを見るや否や落胆し、ため息を付く真っ先に来た狩人の男が言った。

他の狩人もアキトを見て「なんだ……」という感じで戻って行く。


「え?な、なに?」


「それはこっちのセリフだ。何しに来たんだよ?」


アキトと同年代くらいの男が不機嫌そうに聞く。


「どういう状況になってるのか知りたくて」


「ふん、狩人じゃない奴に教えることはないね。さあ帰んな」


「よさんか」


奥から初老の男性、この村の狩人をまとめ、そして村長でもあるケイスケがやってくる。

アキトとタケルが爺と呼んでいた老人は歳のため勇退し、今はこのケイスケが新たな長を務めている。


「無駄は争いはすべきではない。それに、この状況は村人全員が共有すべきことだ。タクマは下がっとれ」


「へいへーい」


注意されて奥に消えていくタクマを見送ってからケイスケはアキトに向き合う。


「やれやれ。さて、現在の状況の話だが、狩場に魔物が現れてな。1体か2体くらいならその場で対応するんだが、魔物は群れを成していてな。危険だと判断し、なんとか村に逃げてこられたようだ。深追いしてこなかったのは不幸中の幸いだ。今斥候に魔物の正確な数や特徴を調べさせてる最中だ」


(それでさっきの反応なのか)


「怪我人の様子は?」


アキトは質問をする。


「皆大事ない。かすり傷程度だ」


「そうか」


一安心し、アキトはやっと落ち着けた。

そこへ斥候が戻り、報告を皆がいる広間で聞く。


「確認出来た数は15体。その中に一際大きな個体が1体いて、親と見て間違いない。特徴だが、魔物は他の獣には一切関心を示さず、獣のほうも魔物に反応していない。まるでお互いが見えてないような異様さだった」


「なんだそりゃ。魔物ってそんなやつだっけ?」


「魔物はまだ知られてないことが多くある。こういうこともあり得るのだろう」


「それって魔法なのか?」


「魔法って確か6属性のやつだろ?違うんじゃね?」


狩人達は斥候の話を聞いて各々考えてることを口にしたり、会話したりする。


「静粛に!」


ケイスケの一声でパッとすぐに静まる。


「数は15か。さすがに我々では手に余るな。すぐにロギアに支援を要請しよう。速駆けは準備を。他の者は村の周囲を交代しながら警備、斥候は監視を続け、何かあればすぐに知らせよ。よいか、準備が整うまで決してこちらからは手を出すな。では行け!」


「はっ!!」


狩人達は素早く動いて部屋を出ていき、ケイスケとアキトが残る。


「分かってると思うが魔物に獣の常識を当て嵌めてはならぬ。もしかしたら村が襲撃されるかもしれん。アキトは自宅に避難しておれ」


そう言い残してケイスケは足早に部屋を出て行った。

疎外感を感じつつも、実際狩人ではないから仕方ないと言い聞かせながら、アキトは自宅に戻った。




その後、魔獣は森から移動し、戦うことなく事なきを得たが、今後の対策として狩人は皆、魔法術を習得すべきと判断した。

遠方より魔法術が使える人を師として依頼し、狩人たちは新たな力を身に付けるべく励む。

その様子を見ていたアキトは師を受け入れてから数日後、タケルが一人でいる時を見計らって声を掛ける。


「タケ、ちょっといいか?」


「ん?どうした?」


「お願いがあるんだけど、今魔法術ってやつ習ってるんだろ?俺にも教えてくれないか?」


「え?そんなこと言われてもなあ、俺まだ使うことが出来ない初心者だぞ?」


「どうやって使うのかだけでも知りたいんだ。もちろんそっちの用事を優先してくれていい。頼む!」


アキトはタケルに頭を下げて頼み込む。

その様子にタケルは驚いていた。


(アキトがこんな必死なの久しぶりだな。何かあったのか?)


「……ああ、いいよ。だけどあんま期待しないでくれよ?」


「ああ、分かってる」


アキトは小さく笑いながら答えた。


タケルの空いてる時間を使って、他の狩人に見つからないようにこっそりと教わるようにした。

魔法術は狩人にだけしか教えておらず、狩人を辞めてるのにも関わらず教わっていることに無駄な争いをしたくないからと言うアキトの考えがあったからだ。

アキトの部屋の中で、魔法術を師から学んだことをタケルはアキトにそのまま伝える。


「ーーと、こんな感じだ」


「魔法術は魔力を使う……自属性は村のみんなは風だから俺も……まず風を……」


聞いたことを反芻し、呟きながら記憶に刻み込むアキト。


「ありがとな!タケ!」


「お、おう」


アキトはタケルを残して家を飛び出した。

部屋に残されたタケルは歩きながら呟く。


「アキト、やっぱあいつ、何か急に元気になったな」


「やっぱりそう思った?」


横からサクヤが声を掛けた。


「サクヤさん。アキト、何かあったんですか?」


「ええ、ようやく……、ようやく、立ち上がれたのよ」


サクヤは心底嬉しそうに答え、いまにも泣きそうな目でアキトが出ていった扉がゆっくり閉まるのを見ていた。



実はアキトは魔獣の騒動から心変わりしたことがあった。

獣に対する恐怖心が無くなった訳ではない。

だが、魔獣の騒動の時に想像した"村の誰かが死んだかも知れない"事態になっていたら、もし大惨事が起きていたら、タケルやユウキやサクヤがもし……、と考えた時、昔の恐怖心なんて比べ物にならないくらいの絶望があると理解したのだ。


(そんな時、自分は何も出来なかったなんてなりたりたくない。後悔したくない生き方を選ぶんだ!)


タケルから聞いた祖父の最期の話も、アキトが変われたことに一躍を買っていた。


「お父さん!!」


「うおっ!ど、どうした!?」


騒動が落ち着いたある日の晩、アキトはユウキに唐突に声を掛けた。


「えっと、その、今更こんなこと言ってと思う、かもだけど……。俺に、俺にもう一度、戦い方を教えて欲しい!」


「あ、アキト……」


アキトの発言にユウキや近くにいたサクヤが驚きの表情を見せる。


「俺分かったんだ。お父さんが昔言ってたこと、皆を守って欲しいと言ってたこと。俺、皆を守れるようになりたい!心の底からそう思ってる!だから俺を鍛え直して欲しい!」


「そうか……そうかっ……」


ユウキの声が涙声になっていく。


「あぁっ……アキト……ううっ……」


アキトの決意を聞いたユウキとサクヤは大粒の涙を流し嗚咽を漏らす。


「ぐぅっ!」


ユウキは手の甲で涙を拭い、真剣な表情になる。


「アキト!そう言ったからにはこれまでとは比べ物にならないくらいきつい練習になる!ちゃんと文句を言わず付いてこられるんだな!?」


「はい!!」


間髪入れずに即答したアキトから只ならぬ決意を感じた。


「よく言った!!」


ユウキはアキトの肩に手を置く。


「さすが、それでこそ俺の息子だ!!」


ユウキは満面の笑みで言った。


「うっ……」


笑顔は束の間、すぐに涙が込み上げる。


「うおおおおおお!!俺は嬉しいぞおおおおお!!」


ユウキはアキトを抱き締めた。


「ちょっ!?」


アキトは抱き付かれて困惑する。


「私もよおおおおお!!」


サクヤもアキトを挟み込むように抱き付いて泣く。


「もう、ははははっ!」


アキト始めはは困惑の顔をしていたが、次第にもらい泣きして笑いながら涙を流した。




それからアキトはユウキの指導で剣術を学ぶことになる。

アキトは過去を乗り越える為に過去のことを思い返して真剣に向き合っていた時、ピンチだった時にユウキが使っていた技について思い出し、聞いてみる。


「ああ、あれは風の魔法だ」


「やっぱり魔法だったんだ。その魔法も教えて欲しいな」


「うーん、教えたいのは山々なんだが、実はあれな、何となく使えるようになったんだ」


「へ?」


「刀を一心不乱に振るっていたらな、急に風の刃が出てな。あの時はさすがにビビったなあ。

だからな、ああしたほうがいいとか上手いこと言えんのだ。なんたって今でも出し方を知らないからな」


「ええ~……」


アキトは肩を落として落胆する。


「まあ、魔法と言えば、確か今狩人達が使えるように頑張ってるらしいからな。聞いてみたらどうだ?」


「聞くって言ってもなあ。狩人じゃない俺に教えてくれないだろうし」


「タケルなら教えてくれるだろ?」


「……そうだね。聞いてみる」




そのような出来事があったとサクヤの口からタケルに伝えられる。


「そうか、やっとか。ったく、おせえよ……」


安堵したタケルの声は震えていた。


「タケル、アキトのこと、お願いね」


「改まって言わないで下さいよ。昔も今も、そしてこれからもずっと親友ですから!」


タケルは満面の笑みで答えた。

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