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デッドリカバー  作者: 箱暗灰人
序章「闇を歩む者」
3/21

暗き下層・3

アキトとコネットの前に現れたゴーレム使いの術者の男。

男は自らの体をゴーレムに変え、更に周囲のゴーレムを吸収して完全体へと変貌を遂げた。

体全体が太く、手足が普通の人より長く、戦わずとも強いと思わせる風貌をしていた。

そしてひしひしと感じる強力な魔力の反応。


(魔力だけなら、向こうのが上か)


「あ、ちょっと待って!」


ゴーレムは床に落ちていた髪を頭に乗せて整える。

その髪は術者が変形時に頭から落ちたこげ茶色の髪だった。


「ゴーレムは体毛の再現が難しくてさ、ほら髪って本数多くて細いじゃん。だから再現しようとするとどうしても髪が太く堅くなって、もはや髪とは呼べないようなものになるんだよね。頭つるつるなのは嫌だからこうして偽物の髪を付けてるわけさ。これでよしと」


髪を取り付け、ニヤリと笑う。


「上で会ったゴーレムの髪も偽物だったってことか」


アキトがコネットと会う前に襲われた男女のことを思い出しながら言う。


「上?ああ、自立型か。あれも偽物だけど、そういえば少し前に信号が消えたんだよね。もしかして壊したのお兄さん?」


「ああ。突然襲われたから反射的にな。あのゴーレムに何させてたんだ?」


「何だっけ?確かお金稼ぎを主目的として設定してたな。でも自立型は人と見分けが付かない程精巧だったはず。どうやって見抜いたの?」


「見た目は誤魔化せたかもしれないが、感情があまりなかった。追われてる女には焦りや恐怖がほとんどなく、男の方も脅しの感情、殺気を感じなかった。そこまでは演技が下手くそ過ぎただけの可能性もあるが、決定的なのは今お前が言った信号、魔力線のことだろ?それを見付けたからだ。遠くに魔法を使うならあってもおかしくはないが、明らかに長すぎる。常に魔力線を付けてる人や獣を見たことも聞いたこともない。ってことは人でも獣でもない何かと言うことだ。確信したのは斬った後だがな」


「……は、はははは!いやあ、あのほっそい魔力線で気付くんだ!まあ気付かれたからって困るわけじゃないんだけど。なるほどね、今後の課題にさせてもらうよ。さてーー」


ゴーレムは目を細めてアキトの持つ刀を凝視する。


「準備、出来たようだね?」


「待っていたのか?刀に魔力が集中するのを」


「まあね。完全体の僕を相手に準備不完全なままで戦うのは不公平だろう?」


「不公平か。でもあんた、自属性は地だろう?俺は風、相性ではこちらが上だ」


「相性くらいじゃ埋まらないくらい戦力差とアドバンテージがこちらにはある。逆にそれで十分なのかこちらが聞きたいくらいだよ」


「……ふん。十分かどうか、戦いで証明しよう」


アキトは身体強化を再度行い、構えた。


「それは楽しみだ。さあ、行くよ!」


ゴーレムは素早く走り出し、拳を打ち込んだ。


「ッ!?」


早さと長いリーチに避けることが間に合わないと瞬時に判断し、刀の刃で受け止める。

ゴーレムの右手が刀に切り裂かれながらも止まることなく手がアキトの眼前に迫り、全身に張ってある障壁に遮られ、顔に当たる寸前でようやく右手が止まる。


「くっ!?」


腕に力を込められ、刀が抜けない。

ゴーレムはすかさず左手で攻撃、障壁に当たると障壁に亀裂が入った。


(まずっ!)


ゴーレムは左手を引き戻し、再び攻撃してくる。


(抜けぬならーー)


三度の攻撃で障壁が壊れた。

攻撃を身を低くして避け、ゴーレムの右腕の下に潜り込み、


(斬るまでだ!)


柄を持つ手に力を込めて、前に進みながら腕、そして肩まで斬った。

ゴーレムは後ろに回ったアキトを振り返って確認しようとしたその時、アキトの追撃の刃が頭部を斬った。


「おっと」


ゴーレムは頭部がずれ落ちそうになるのを左手で抑え、元の位置に戻す。


「ふーん、なるほど。容赦なく急所狙ってくるね。でも残念、治っちゃうんだなー」


ゴーレムの頭部や右手がすぐに再生する。

右手の動作確認し、左手で自分の頭に触れて確かめる。


(やはり治るか。面倒だな。だが、治すには魔力を消費しているはずだ。攻撃は無駄じゃない)


「うんうん、いい調子だ。これが完全体かぁ……」


(なんだ?もしかしてこの状態になるのは初めてなのか?)


「さあ、続きだ!」


ゴーレムは攻撃を再開する。

始めは早さとリーチに手こずっていたが、次第に慣れていき、ゴーレムの動きの粗さが目に付く。

単調な動き、距離感や攻撃の方向を間違えた空振りの多さ、自身の早さや体格に慣れず、手を天井や床に打ち付けたり、体勢を崩したりしていた。

その様子を見てアキトは小さく口角を上げた。


(やはり。こいつ戦いの素人だ)


「はあっ!」


ゴーレムの攻撃に合わせたカウンター、右脇腹から刃が入り込む。


「!?」


刃が胸部中央辺りで左手で刀身を掴まれて止められた。


(魔力、後ろ!?)


アキトが魔力の気配に気付いた束の間、背後から握り拳くらいの大きさの岩が3つ出現し、アキトの背中に当たる。


「ぐっ!」


体中に障壁を張っていたからダメージはある程度緩和されたものの、痛みはあり、顔を歪め、体が反り返る。


(巻け!)


刀身から風が発生する。

怯んだ所に合わせたゴーレムの右ストレートがアキトの顔を捉える。

同時に刀の周囲を竜巻が起こり、左手を巻き込み、体が刻まれて穴が開く。

アキトの体は飛ばされて半回転して、うつ伏せに倒れる。


「当たったぁ!っしゃっ!」


ゴーレムは喜びの声を上げ、ガッツポーズする。

左手や胸に開いた穴はやはり再生を始める。


「へへ、今のは痛かったでしょ?魔法が使えないように見せて安心させたところで不意打ち。完璧な戦術プランだ。……はあ、さて、これで僕の力は分かったでしょ?僕には敵わないって。僕は君たちを出来れば殺したくないんだ。見逃してあげるから大人しく上に戻ってくれないかな?」


まるで自分が勝ったように提案するゴーレム。

アキトはゆっくり立ち上がり、振り返る。

口角から流れる血はそのままに睨み付ける眼光が鋭く、強い殺気をゴーレムは感じ取った。


(なっ!?これは……あいつと同じ、闇……!)


恐怖でゴーレムの手足が震える。


「!?」


アキトの体が手足を動かしていないのに足が床からわずかに離れ宙に浮いた。

体に沿うように流れる風を発生させ体を浮かせたのだ。

動く挙動を見せず、床を滑るようにゴーレムに急接近するアキト。

ゴーレムのパンチを放つが、スレスレでかわし、回転しながら右腕、右横腹、背中を斬り付けめ背後に回る。

まるでアキト自身が風になったように床を滑るように動いていた。


「くそっ!」


振り向きざまに攻撃をするが、そこにはアキトの姿はなく、いつの間にか両足が斬られ、前に倒れそうになるのを両手で支える。

ゴーレムの背後にいたアキトは刀をゴーレムの腰を突き刺し、前方に移動しながら頭部へ向かって切り裂いた。


「ッ!このぉっ!」


ゴーレムはすぐに再生すると地の魔法を使い、アキトの身長と同じくらいの大岩を作り出し、前方にいるアキトに飛ばした。

アキトは刀で受け止めるも、力が強く押し込まれる。

風の刃が岩を素早く削っていき、縦に両断する。

岩は斬られると土のように形が崩れ、すぐに土は消滅する。

ゴーレムはいくつもの石を作り出してはアキトへ飛ばし、刀で斬ると刀に帯びた風が石を粉砕し、消滅していく。

アキトは自身に当たりそうな石だけを斬り、少し動けば避けられる石は避けながら、歩いてゴーレムに近付いていく。

近付かれたら殺される。

そう本能で悟ったゴーレムは魔力を更に集中させると石ではなく鉄を作り出して手に持つ。


「これなら、どうだ!」


鉄の塊を投げ飛ばし、刀で受けるが、鉄では風の刃では削れず、受け流すしか出来なかった。

アキトの後方に飛んだ塊はカーブを描いてアキトの背中目掛けて戻って来たのを知っていたかのように見ずに横に避けるアキト。

ゴーレムは塊を受け止めた時にはゴーレムの周囲には4つの鉄の塊が浮かんでいて、計5つの塊があった。


「はあ、はあ、やっぱ鉄は、疲れるな、はあ……」


ゴーレムは息を切らせ、疲れた表情をしていた。


(鉄も地の魔法に含まれるんだったな。属性相性が有利の風でも鉄は簡単には斬れないか)


アキトは手に持つ刀を見て、斬った時に歯こぼれなどしていないか確かめる。


「鉄ならさっきのようには行かないよ!」


鉄の塊をアキトに向かって飛ばす。


(ま、斬れないなら、かわせばいいだけ)


次々と鉄塊を飛ばして来るのを素早い動きで避けながらゴーレムに急接近する。


「くっ!」


ゴーレムは手元に鉄がなくなり、鉄ではなく石を作り出して飛ばすが、すでにアキトの刀が届く間合いに居た。


「はあっ!!」


飛ばした石ごとゴーレムの体を縦に一刀両断する。

続けて回転斬りを放つことで竜巻が発生し、ゴーレムを巻き込み、無数の風の刃が細かく切り裂く。


「おぼごろどでぃべぇあっ!!」


何を言ってるか分からないことを叫びながらゴーレムは細切れとなっていく。

10秒ほどで竜巻は消え、ゴーレムは原型ないほどの土の塊となって床に降り注いだ。


「…………」


こんな状態になってもアキトは一切警戒を解かず、土を注視する。

土は動き出し、1つに固まろうとする。

アキトは刀に再び風をまとわせ、いつでも斬れるように構えた。


「ま、待って!」


喉と口が再生すると同時にゴーレムが言葉を発した。


「もう邪魔しない!しないから!だから許して!!」


ゴーレムの頭部が再生し終わり、首から下の再生を始める。

頭に付けていた髪は無くなっており、切り刻まれ、何処かへ散ったことだろう。


「信用できないな」


「ううっ、お願いだ。何でもするから、許してくれ、はあ、はあ」


ゴーレムの体は元の形に再生し終わったが、体内に残存する魔力はわずかで、形を保っているのがやっとだろうとアキトは思った。

四つん這いでの息の荒いゴーレムを見下ろしながらアキトは口を開く。


「……質問に答えろ。答えなかったり、嘘を付いたとこちらで判断したら……わかるな?」


コクコクと首を縦に振るゴーレムは体勢を変えて床に片膝を立てて座る。


「さっき、あいつと同じ闇だとか言っていたな?」


「え?あ、ああ。そう、言ったっけ?」


「あいつとは誰だ?そして俺の邪魔をする?詳しく答えろ」


「あいつは……名前は知らない。本当だ!えーっと、確か四日前くらいだと思う。ゴーレムの研究をしていたらそいつが突然現れたんだ。物凄い殺気で一目見た瞬間殺されると思った。それで、そいつはこう言ったんだ」


『誰かがここまで降りてくることがあったら、これ以上下に行かせないようにして。失敗したら殺すから』


「あんなの従うしかなかった!殺されるか従うか、選べと言われてるようなものだ!だから、従っただけで……」


仕方なかったんだ、と続くはずだった言葉を飲み込み、うつむくゴーレム。


「……お前を命令した奴はもしかしてこいつか?」


情報屋に見せた画像と同じものを見せる。


「え!?そ、そう!こいつ!」


端末を指差して目を大きく開けて言う。


「な、何で知ってるの?まさか仲間、とか!?」


自分はとんでもないことをしたのではないかと焦り始めるゴーレム。


「違う。逆だ。俺はこいつ、フォスレーの敵だ。こいつなら脅して人を操ることもやりかねないと思ったからな」


「え?ちょっ、ちょっと待って!え、こいつ、フォスレーって名前、なの?」


名前を聞いて明らかに別の意味で驚いていた。


「ああ」


「あの最強の魔法術師と云われるあの、フォスレーなのか!?」


「そのフォスレー本人なのかは知らない。だが奴の底知れぬ強さは、本人と言ってもいいかもな」


「は、はは。どおりで……。だったらさ、僕が命令に従わざるを得なかったのは、分かるよね?仕方ないって、思ってくれるよね?」


小さく笑って責任逃れしようとするゴーレムをキッと睨み付けた。


「だとしても、従うことを選んだのはお前だ。仕方ないで済ませるつもりか?」


アキトの放つ殺気が強くなったのを感じ取る。


「ご、ごめんなさい!!全て僕が悪かったです!!許して下さい!!」


何度も頭を下げて許しを乞う。


「はあ、まあとりあえず事情はわかった。フォスレーが下層で何をしているのか知ってるか?」


「知らない!命令しただけですぐどっか行ってそれから一度も会ってないし、下に何があるのか調べようとも思わないよ。死にに行くようなもんだし、本当にこれ以上は何も知らない!」


「そうか」


背後の足音に気付き、視線を向けるとコネットがいた。


「えっと、どうなったんですか?」


「ああ、もう大丈夫だ」


コネットにそう言って、ゴーレムに近づくアキト。


「お前のしたことは許そう。だが、それでも俺達は下へ行かせてもらう。奴に殺されたくなかったらすぐにここから離れたほうがいいぞ」


「ああ、そうするよ。はあ、研究にはいい場所だったのにな。命には変えられないか」


「安心しろ」


「え?」


顔を上げてアキトを見る。


「俺が必ず奴を殺してやる。行こう」


アキトは刀を納め、口から流れる血を裾で拭い、階段のほうへ向かう。

コネットはゴーレムをチラッと見た後、アキトの後を追った。

二人の背中を見ながらゴーレムは思う。


(……たぶん、あんたには無理だ。あのフォスレーに勝てる人なんて居やしないよ。もし、もし倒せる人がいるとしたら、それはもう人間じゃない)


ゴーレムはふらつきながらもゆっくり立ち上がる。


(ヤバ、魔力足りない。こんな状態じゃ下層から出る前に餌食になっちゃうよ。急いで魔力補給しないと。地の魔力よ、集まって)


目を閉じて集中し、周囲の魔力を取り込もうとする。


(あれ?)


立ちくらみし、体に力が入らず仰向けに倒れる。


(あ、あれ?おかしいな、魔力使いすぎた?いや、違う、魔力が、抜けていく?うそうそ、嘘だ!こんなのあり得ない!まさか、まさか、あいつ、僕に魔術を?失敗したら発動するように?)


体が、手足の先から崩れていき、意識が薄れていく。


(は、ははは。掛けられてることにすら気付かないなんて、やっぱバケモンじゃんあいつ……。ああ……)


保っていた体が全てが崩れて、その場所には土だけが残った。




「どうした?」


階段を下る途中で立ち止まるコネットに声を掛ける。

コネットは答えず、ただ心配そうな顔をしていた。


「さっきの話を聞いて臆したなら戻ったほうがいい。下にいるかも知れない奴はさっきの奴より遥かに強く非情だ。命令してまで下へ行かせたくない理由があるようだから、これ以上降りればあんたも標的にされるだろう。奴を相手にあんたを守れるほどの力は俺にはない。これ以上進むなら本当に死んでもいい覚悟が必要になる」


アキトは脅しで言ってるのではない。

本心で述べていた。

それが分かったのかコネットは口を開いた。


「……そう、ですね。私、ここまでにしておきます。さすがに怖くなりました」


「そうか。では護衛はここまでだ」


「はい、ありがとうございました」


コネットは礼を言うと振り返って階段を上がって行く。

見えなくなる前にコネットは振り返り、軽く会釈してから横に曲がって見えなくなった。

コネットを見届けてから階段を降り始めるアキト。

次第に降りるのが早くなり、急いで駆け降りて、下へ続く階段がなくなる10階層まで来る。

その階層には広い空間があるだけで目ぼしいものは何もなく、下へ続く階段もなかった。


「ここが最下層?」


見周りながら呟く。


(何もない。だが以前として下から強い魔力反応がある。下……)


鉄の床を見つめ、足で2度床を強く踏み、感触や音で厚みを判断しようとする。


(だいぶ厚いな。最下層だからか、他の層より厚い。それになにより、魔力が多く含まれてる。いや、いくらなんでもこの魔力量は異常だ。この下に一体何があるんだ?)


刀を抜き、魔力を込め、上半身を捻り、床に向かって振った。

風が床を削り取ろうとしたが、結果は表面を少し傷付けただけだった。


(ちっ、案の定か)


しかも傷はみるみる治っていき、すぐに元通りになる。


(壊すのは俺の全力でも無理そうだな。くそ、諦められるかよ。フォスレーが来させたくない理由がきっとどこかにあるはず)


注意深く周囲を調べ回る。


「ん?なんだ、ここ?」


一見他と見た目が変わらない床なのに、その場所だけ魔力の反応が薄い場所を見つけた。


「……ここか!」


床の破壊を試みると、大きな音を立てて穴が開いた。


(なんだあれは?)


穴を覗くと円形の建物らしきものがあり、建造物から発せられている光が周囲を照らしている。

建物の周囲には何本もの光る太い丸柱が何本もあり、穴のすぐ横を見ると厚い鉄板が見えて、この部分だけが薄くなっていた。


(フォスレーが近付かせたくないのがーー)


建物に視線を戻す。


(あの建物か。だいぶ高いが行けるか?いや、行くしかないだろう)


魔力を手足に集中させると、一歩踏み出して穴に飛び降りる。

着地際に手足から風を放ち、落下速度を緩めて無事着地する。

建物に入口はないのか周囲を回ってみると、扉を発見した。

扉に近付くと自動で開き、中の明るさに目を細めながら白い空間へ立ち入る。


「これは……」


中央にあったのは邪悪に輝くデコボコした塊が空中に浮いていた。

何本もの管が付き、管の先には機械が起動した状態で、時折機械が高い音が立てていた。

アキトは周囲の状況に目も向けず、中央の塊だけを見上げていた。


(おぞましい。何だこれは?何でこんなものがあるんだ。これは破壊しなきゃならないものだ!)


刀を抜き、両手で柄を握ると頭上に振り上げる。

刀に魔力が集中させ、風をまとい始めたその時だった。


「がっ!?」


右肩に強い衝撃が襲い、左方向に飛ばされ、その先にある壁に背中から激突し、壁を背もたれに座りこむ形になる。


「がはっ!ぐっ!」


苦痛で歪ませた顔を上げる。

ぼやける視界で、攻撃してきた対象を見る。

その対象はこちらへ近付いて来て、顔を確認出来た。


「コネ、ット?」

「ごめんなさい。急に攻撃して」

「なぜ……」


それは先程別れたコネットだった。

コネットの表情はなく、雰囲気や感じ取れる大きな魔力の反応が本人だとは思えないほど違っていた。


「どうして破壊しようとしたの?」


「それは、破壊しなければいけないと、思ったから」


「そう、やはりね」


端末を取り出し、操作すると耳に当て通話を始める。


「コネットです。地のミスタリア研究棟にて対象Cを1人を確保。回収を要請します」


『了解した。手配する』


端末から誰かの声がし、通話を切り、端末をしまう。

アキトは寒さに震え、自分の体の床に面していた下半身や両手が氷に包まれてることに気付く。


(氷……?)


氷はゆっくりせり上がってきて、体温が下がっていくのを感じ、意識を保っていられなくなる。


「色々聞きたいことはあるでしょうけど、起きたらきっと説明してくれるから、だから今はおやすみ」


抵抗も虚しく、意識が途切れた。

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