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デッドリカバー  作者: 箱暗灰人
2章「ドクトアの戦火」
21/21

共鳴する者達・5

広い部屋に集まった3人。

アキトはソファに座り、右側にベイティ、正面にシュウが床に座った。

ベイティが口火を切る。


「まずは改めて自己紹介から始めましょうか。私の名前はベイティです。自属性は水。使える属性は水、氷、雷の3種類ですが、雷はまだ上手く扱えません。魔術は基本となってる障壁、身体強化、回復を使えます。他にも広域魔力感知とか使えます。私が使える戦いに役立つ魔術は以上です。見ての通り私は武器もなく、素の力もあまりない。なので戦いの際は魔法術のみで戦います。えー、こんな所でしょうか?」


紹介を終えたベイティは2人の顔を見る。

次はどちらが自己紹介をするのか探っていると「俺ーー」と先に発言したのはシュウだった。


「名前はシュウ。ジゾクセイ、地。だから地使える。他、属性、使えない。魔法より、体で、戦う、得意」


シュウは立ち上がり、部屋の中央で、目の前の仮想敵に手足を使った攻撃をして見せる。


「おお……」


シュウの動きに思わず声が漏れるアキト。

大きな体格とあった力強い動きと、意外にしなやかな動きもあり、得意なだけあった。


「ここせまい、動きにくい。本当は、もっと動ける。えっと……。ああ、魔術、身体強化、障壁、それだけ」


シュウは床に座って紹介を終える。


「俺の名はアキト。自属性は風。使える属性も風のみ。魔術は身体強化と障壁。俺も魔法は苦手だがーー」


ソファに立て掛けていた納刀状態の刀を手に取り、2人に見せる。


「この刀に魔法を乗せることで思うように使える。魔法術よりは剣術を得意としている。以上だ」


アキトの自己紹介を終え、会話は更に細かく、お互いが出来ること出来ないことを補うように戦術を固めて行く。

対軍戦闘、対少数戦闘、想定外の事態の対応など話し合っていく。

無口だったシュウも積極的に会話に加わっていく。

戦術の方針が決まった後にアキトはベイティに自己紹介の時に聞いた魔術のことを聞く。


「広域魔術感知ですか?」


「そうそれ。名前から察するに広い範囲の魔力を感知出来るんだろ?どれくらいの範囲まで分かるんだ?」


「……普通に全方位に使うとして500m前後ですね。感知範囲を狭めるほどより遠く感知することは出来るのですが、遠ければ遠い程正確な距離感が掴み難くなるのです。正確に距離を出せるのは500mくらいです。ですが私自身が対象が建物や壁、地中等の障害物があると、感知距離内にいても感知出来ない場合もあります。それと障害物自体が高い魔力量を有している程それに阻害され、その先にある魔力に感知が出来なくなります。魔力感知は私を中心に直線で感知するタイプらしく、私のすぐ目の前で強い障壁を張った状態で使うと、障壁の向こう側にいる人の魔力が感知出来ないのです。それくらい近いのであれば、普通の感知能力の方が優れています」


「そう、か……」


何気なく聞いた返答が存外長い説明にアキトはつい微妙な返答してしまう。

それに気付いたベイティは「すみません。長かったですね」と目を伏せて謝る。


「いや、謝ることはない。じゃあ、今使ったとしたら、車の中だから距離が短くなるのか」


「そうですね。壁の魔力量はそれほどでもないので、少しだけ……」


ベイティは突然真剣な表情に変えて立ち上がり、窓に近付いて外を見回す。


「どうした!?」


ただならぬ様子に、アキトは刀を持って立ち上がりながら聞く。


「……森の中に魔力反応がいくつもあります。どうやら車を追い掛けて来ているようです。恐らく獣、いえ、この魔力は魔獣の類いでしょう。数は30前後」


すると、車のブレーキが掛かり、減速し、停車する。


『こちらタシムです。前方に獣の群れが道を塞いでおります。対処して来ますので少々お待ち下さい』


タシムが運転席の扉を開けると、3人は外に出ようとしていた。


「おや?」


「これ、どうして、開けられる?」


一番前にいるシュウは外への扉の開け方が分からく、戸惑っている。


「それらしいスイッチありませんか?」


ベイティが後ろから前を覗き見ながら教える。


「皆様、ここは私がやりますので」


タシムの言葉に、最後尾にいるアキトが振り向く。


「いや、今度は俺達の番だ。それに数も多いから1人で対処するのは厳しいだろう。それに、俺達が協力して戦うのに良い練習相手だしな」


「皆様……。分かりました。お願い致します。ゼクステラは障壁が強固なので、こちらは気にせず存分に力を発揮して下さいませ」


「おう!」


「あ、開いた」


扉が開き、3人は外に出る。

車の回りはすっかり魔獣に囲まれていた。

茶色の毛並みの4足歩行の魔獣で、大きさはシュウの体格と同じくらいで、開けた口から見える大きく鋭い牙が脅威だ。

魔力は確かに感じるが、3人にとっては大したことはない魔力量だった。

アキトは状況分析してから口を開く。


「気を付けろ。こいつらは統率のとれた行動をするはずだ。戦っている間も常に周囲に気を張れ。森の中は奴らのテリトリーだから木の上、木陰、茂みからの奇襲に気を付けろ」


「詳しいのですね?」


「狩人をーー獣を狩る仕事をしていた時期があったからな」


「俺、大丈夫。獣、戦い方、慣れてる」


「こっちはシュウに任せた。俺は反対側をやる」


アキトはそう言うと反対側に移動し、刀を抜く。

ベイティは車の屋根に飛び乗り回りを見渡す。


「私はここから援護に回ります!」


シュウはしゃがむと両手のひらを地面に付ける。

道の石畳をシュウは魔法で操作して形を変え、肘手前までを石で覆い、即席の武器を両手に作り、両手を上げて構えた


「アオオオオオオオオオオ!」


どこからともなく獣の遠吠えが聞こえ、それをきっかけに魔獣は一斉に魔力が集中するのを感じ取った3人は同時に攻撃を開始した。


魔獣より早く魔法を放ったのはベイティだ。

水鉄砲の如く高速で放たれた水弾は魔獣の眉間を貫いた。

次々に打ち出す水弾を魔獣は素早い動きで避けるがーー


「ガァッ!」


魔獣の動きに合わせてシュウが拳を上方から打ち下ろし、強い力で押し潰す。

周囲の魔獣が一斉に魔法で石つぶてをシュウに放つ。

シュウは盾の障壁を張り、魔獣に真っ直ぐ突っ込み、距離を詰めては攻撃し、確実に仕留めて行く。


アキトは戦いの最中、狩人として獣を狩っていた頃を思い出していた。


(タケと一緒に森を走り回ってたな……。懐かしい)


懐かしさを感じながらもアキトの動きに無駄はなく、魔獣の攻撃を避けながら斬り倒して行く。


ベイティに向かって左右から魔獣が2体、跳躍して襲い掛かる。

魔獣の眼前に水の玉が現れ、中に飲み込まれる。

間髪入れず氷の魔法で水の玉を凍らせ始め、中の魔獣のもがき動いているのが次第に遅くなり、そして中まで完全に凍り動かなくなった。

魔獣が入った氷の玉にイメージを更新させ、他の魔獣にぶつけようとするが、玉が大きい為スピードが出ず、容易に避けられる。


「!」


避けた魔獣の目が捉えたのはこちらに大量に飛んで来るもの、それは小さく素早い氷柱だった。

魔獣に氷柱がいくつも突き刺さる。

魔獣入りの氷の玉が地面にぶつかると綺麗に二等分に割れ、中の魔獣も二等分になる。

ベイティは辺りを見回し、大きめの息を吐く。


「森の中に逃げたか」


ベイティから魔獣の姿も、アキトとシュウの姿も見えなかった。

広域感知で位置を確かめる。


(……シュウさんの方が敵の数が多い。そちらを支援しないと)


ベイティは車から飛び降り、シュウの方へ向かった。

木々の間隔が広く、慣れない場所に苦戦しながら急ぎ、やがて空が見える場所でシュウの姿を見つける。

シュウは魔法で魔獣の真下から地面を勢いよく隆起させ、魔獣が上空に打ち上がったのをジャンプで近付き、両手を振り下ろして魔獣を地面に激突させた。

魔獣は地上からシュウに向かって石を放ったのを盾の障壁で守る。

魔法を放つ魔獣の横からベイティの水の槍が貫く。


「!」


その様子を上から見たシュウは胴体を貫かれた魔獣にトドメの落下攻撃により、土煙が舞い上がり、攻撃で発生した風がベイティにも来るが障壁で遮られる。

土煙で魔獣の姿は見えないが魔力感知で魔獣の場所を当てて、その方向に氷柱を放ち、魔獣は反応出来ずに刺さる。

着地したシュウの背後を襲い掛かる2体の魔獣に振り返りながら放つ回し蹴りが魔獣の顔を捉え、もう1体の顔にストレートを打ち込んだ。

土煙が消えると、そこには魔獣の血で濡れたシュウが立っていた。


「どうして、こっちに?」


「数がこっちの方が多かったので来ました」


「そうか」


「……魔力感知では動いている魔獣はいませんが、ただ立ち止まっている可能性もあるので、探して確認しましょう。こっちです」


ベイティが先導して魔力反応の確認しつつ、車の場所まで戻って来る。

アキトの位置を調べる為に魔力感知を使おうとすると茂みが鳴り、2人は身構える。

木陰から現れたのはアキトだった。


「アキトさん、全部倒したのですか?」


「逃げたり隠れていなければ全部のはずだ」


「そうですか……。魔力感知では動く反応は見当たりません」


「皆様、お見事でございます」


いつの間にか車から出て来ていたタシムが笑顔で喝采の拍手をする。


「そんな大したことはしていない」


抜き身で持っていた刀を納めながら言うアキト。

ベイティは近くの魔獣の死体に近付き、違和感に気付いた。


「待って下さい!」


ベイティが険しい顔で声を上げた。


「どうした?」


「……妙です。死んでいるはずなのに、魔力が放出されず、体の中に留まり続けているのです」


あらゆる生命体は死亡すると周囲に魔力を放出させるのは常識で当然のことだった。

アキトも別の近くの死体に近付く。


「……本当だ。何故……。なっ!?」


「えっ!?」


それを見てアキトとベイティは声を出して驚く。

魔獣の口から出てきた大量の赤黒い血が自身の体を包み込んで行く。

ベイティが調べていた魔獣も同じ状態になっていた。

血に包まれた魔獣の体はみるみる溶けていき、血の塊だけとなる。

すると1つの血の塊は空へと上がって行く。

その血の塊目掛けて、周囲から同じ血の塊が集まり、大きくなっていく。


『ゼクステラ避難させます!』


タシムの声が機械を通して外まで聞こえて来た。

素早くバックさせ、遠ざかって行く。


「なんだこれは、こんなの見たことないぞ」


そう言いながらアキトは注視しながら後退りする。


「私もです……」


「俺も」


2人も同じように後退りする。

上空のものからは自身を越える大きな魔力を感じ取り、3人は身の危険をひしひしと感じていた。


一つになった大きな血の塊から白い骨が飛び出し伸びて、形を変え、分岐していく。

骨の回り肉が付き、その外側が毛皮に包まれ、そして巨大な魔獣が生まれた。

その魔獣は先程倒した魔獣をそのまま大きくさせたような見た目だった。

地面に落下すると同時に周囲に放たれた衝撃波が大地を揺らし、周囲の木々を破壊し、草を地面ごと弾き飛ばした。


「はっ!」


最前にベイティが障壁を他の2人も守るように大きな障壁を張り、その内側にアキトとシュウが障壁を張っていた。

衝撃波でベイティの障壁が破壊され、アキトとシュウの障壁も破壊されたが、ベイティが外側の障壁が壊れる前に更に内側に障壁を張り、ようやく衝撃波を凌ぎきった。

何とか無傷で済んだが、周囲一帯が草木がなく、地面は削れ、荒れ地となっていた。

巨大な魔獣の大きさは四足歩行でピンと立っている状態で地面から頭頂部まで8m以上あり、まるで自分達が小さくなったような錯覚を覚える程大きく、本当に常識外れの状況に現実味が薄れていた。

魔獣は赤い瞳で3人を睨み付ける。


「グオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」


魔獣は咆哮を放った。

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