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デッドリカバー  作者: 箱暗灰人
2章「ドクトアの戦火」
19/21

共鳴する者達・3

フォスレーについての情報を共有する為に、映し出された映像でカイシスから語られた言葉はまさかの内容だった。


『フォスレーの名が最初に知れ渡ったのはティエ暦47年、今から60年前のことです』


「は?60年前?」


アキトは耳を疑った。

フォスレーは外見から、どう見積もっても20代前後、とても60年以上生きてるようには思えない。

ベイティも同じく驚きの表情を見せた。

シュウは表情に出にくいのか、ウォーディンの特徴なのか、そもそも顔の骨格が違い、体毛で表情が分かりにくく、いまいち感情が読み取れない。


『はい。古い文献に間違いなければ60年前です。ただこの当時のフォスレーが、今のフォスレーと同一人物であるかは分かりません』


映像が切り替わり、人と人が武器を取り争い合ってる白黒の絵が表示された。

汚れやシミがあって古臭く、長い年月を感じさせる絵だ。


『その年はグロークと呼ばれる大国が他国に対して宣戦布告し、戦争状態にあった。そんな時に現れたフォスレーは、各国にグロークを止める為に協力を仰いだ』


次に、空中を浮かぶ人達、空から大きな火球がいくつも降り注いでいる絵が表示された。


『そしてフォスレーと、フォスレーの出身の国民により、人ならざる圧倒的な力で、グロークを火の海に沈めて滅ぼし、戦争は終結した』


「フォスレーの、国民が?まさか、フォスレーのみたいな強さの奴が他にも居るってことか?」


(フォスレーひとりだけでも大変なのに、もし国民がフォスレーの味方だとしたらーー)


そのように最悪な想像してしまうアキト。


『今現在フォスレーの出身国の名前も場所も判明していません。本当にあるかどうかは疑わしい所です』


(でも、もし味方じゃないとしたら……。いや、期待はしないようにしよう)


次に、フォスレーらしき人物がこちらを見て、手前にいる手を上げた人達の背後から見た絵だ。


『ティエ歴59年。フォスレーは圧政に苦しむ民の前に現れ、先導し、革命を成功させた。更に翌年にはミスタリアを巡る2国間の戦争に関与し、無理矢理戦争に加えられた両国の兵士を1つにまとめ、反乱を起こして終結させた。フォスレーはその功績を讃えられ、英雄となった』


次に、絵から鮮明でカラフルな画像で表示され、横に大きな建物を正面から捉えた画像だ。


『年代が一気に進み、ティエ歴111年。フォスレーは魔法術学校フォニシスを設立し、魔法術を自ら教えていた。設立当初はフォスレーの名を騙る偽者と言われたこともあったが、力を示すことでフォスレー本人と認められ、噂が世界中に広まり、生徒希望が後を経たない大人気の学校となった。校内でのフォスレーは至って穏やか、かつ熱心で生徒から尊敬されていた』


(尊敬……。この時はまだ普通だったと)


次に、世界地図が表示され、中央西部に位置する大陸に2ヶ所、その大陸から北北西に位置する大陸に1ヶ所に赤い円が付けられていた。

それを見てアキトとベイティはわずかに目を細めた。


『エンテス大陸のベイティさんの暮らしていたイセッタの町。同じ大陸にあるウォーディンの国でシュウさんと大きく関係しているアブト。ヒカミ大陸にあるアキトさんが暮らしていたフウライの村。その3ヶ所をフォスレーが現れ壊滅させた。犠牲者は約8600人。それがティエ歴117年、今から2年前の出来事。これがロギアが知り得る過去のフォスレーに関する情報です』


映像は消え、部屋の照明が灯る。


『その後はフォスレーはどこにも姿を見せなかったのが、ここ最近になってルヴェスタに現れ、そして私とアキトさんの前にも分身として現れた』


「あの、その分身の話、詳しく聞きたいです」


ベイティは真剣な眼差しをアキトに向けた。


『ここは直接戦ったアキトさん、お願いします』


「俺がか?まあ、分かった。あれは俺がカイシスからロギアに勧誘されて返事をする時だった。フォスレーは突然俺が今使ってるロギアの部屋の窓から来たんだ。そして奴は言った。ロギアに入れば俺を殺すことは出来ない。そのようなことを言ってロギアに入ることを止めたがっていた」


そこまで説明してアキトは違和感に気付く。


「待てよ?奴はどうしてあの部屋に俺がいると分かった?あの時、俺がそこにいると知っていたのは誰だ?」


『その時知っていたのは私と、アキトさんを運んだロギアの者の2名です。ただ言わせて欲しいのですが、おそらくフォスレーはアキトさんに掛けられた魔術によって居場所を特定していた可能性があります。魔術が解除されたロギア支部内であることをまず把握し、そしてアキトさんの体から放たれる僅かな魔力からアキトさん個人を特定したと思われます』


人は呼吸により魔力を吸い込み、吐く時に自身の中の古い魔力を吐き出す。

その吐き出した魔力からフォスレーはアキトと判断したと言う。


「魔力だけでその人物まで分かるのか?」


『私には無理ですが、魔法術の権威の方が言うには、その人物や魔法術の魔力から個人を特定出来るそうです。魔力にひとりひとりに違いがあるそうで、該当する者の魔力の特徴を覚えていれば分かるそうです』


「魔力で……。ってことは奴は俺の魔力をあの時に覚えていたってことか……」


しばらくの沈黙の後、アキトは思い出すように声を上げた。


「あっ、俺か」


アキトはつい話が逸れて、まだ話の途中だったことを思い出した。


「えー、どこまで話した?」


「フォスレーが来て用件伝えた所までです」


ベイティが答え「ああ、そうか」と思い出す。


「言うだけ言って奴は立ち去ろうとしたが、俺は追い掛けて外に、空中に飛び出した。そうしたら変な空間が現れて、その中で戦うことになった。景色はまっ黒で、地面が延々と広がっていた。あれは、魔術、なのか?」


『それは空間生成と呼ばれる魔術です。ですがその魔術を使えるのはごく一部。それほど要求される魔力が多いのです』


「……と言うことはだ。大量に魔力を消費した状態で俺とほぼ互角で戦っていたことか。始めからハンデをもらってたってことかよ。はっ」


失笑のように乾いた笑いが出るアキト。

もしあの空間をフォスレーの分身が作らなかったら、と想像する。

自由に空が飛べるフォスレーに対し、アキトはせいぜい風の魔法で安全に着地するくらいしか出来ない。

どうしても負けを想像してしまう。

本当にハンデのつもりでやったのか、助けるつもりでやったのか、はたまた気紛れか、いずれにしてもアキトを見下していたことは間違いない。

一段とフォスレーとの差を示す壁が高くなった気がした。


それからアキトはフォスレーが使ってきた属性や戦い方を話して行く。


『フォスレーは魔法主体なのですね。地と雷は使わなかったようですが、おそらく全属性使えると見ていいでしょう』


「だろうな」


カイシスの言葉に同意するアキト。


「それで、アキトさんはどうやって倒したのですか?」


ベイティが質問をして、アキトはベイティの顔を見ながら答える。


「それは闇の力を使って辛うじてな」


「闇の力?魔力を多く消費する代わりに威力が強くなる闇の特性のことですか?」


「いや、違う。体が黒い何かに包まれて力が溢れてくるやつ。刀、いや武器が黒いものに包まれると強さを増したり長くなったり、そういうのあるだろ?」


「いえ、私は聞いたことないですが」


ベイティは小首を傾げながら答える。

シュウに視線を向けると、視線に気付いたシュウは首を振る。


『……アキトさん。それは、本当にその状態になったのですか?』


カイシスの声のトーンが少し低くなっていることに気付く。


「ああ、そうだが?」


『その力は、闇蝕えんしょく状態の人だけに見られる力。闇の暴走と呼ばれる現象なのです』


「な、に?あれが、あの力が、闇蝕……?」


アキトは自分が闇蝕になっていたなんて思っても見なかった。

何故なら闇蝕は不治の病と言うことは世界の常識だ。

闇蝕になっていたなら、今頃正気を失って誰かに殺されているだろう。


「前例とか、ないのか?闇蝕にならなくても、その力?が使えた人、とか」


アキトの言葉の節々に動揺が見える。


『ロギアが把握している情報の中では、前例はありません』


「……ってことは……」


『アキトさんが闇蝕にならずに闇の暴走が使える。もしくは闇蝕状態から回復出来る人。どちらにしても初の出来事です』


「……そうか……」


自分は普通ではないことが証明されたことに少しショックではあったが、よくよく考えればこの特徴はメリットにしかならないことに気付く。


「……ふっ、それなら好都合だ。闇の力は強い。フォスレーを倒すには必要となる。これからは遠慮なく使えると言うことだ」


アキトは自分の右手のひらを見て、握りしめる。


『作戦の目的を勘違いしないで下さい』


「なに?」


『主目的はフォスレーの目的と、分身かどうか調べること。フォスレーを倒すのは可能であれば、であり、今は命を懸けてまで戦うべきではないのです。皆さんはまだ成長段階。これから成長し続け、いつかフォスレーを倒せるくらいまで強くなれるはずです。ここで無茶をして命を散らすべきではないのです』


(カイシスが正論を言っているのは分かる。

この3人を以てしても勝てないだろうと言うのは分かっていた。だがーー)


「……はっ」


アキトは乾いた笑いを出す。


「甘いな、あんた」


『え?』


「勝てないだろうから命を懸けてまで戦う必要はないって?違うな。勝ち負けは大事だが、そんなこと戦う前から考えていちゃ出せる力も出せなくなる。一戦一戦命懸けで戦うからこそ、より強い力が出るんだ。命を懸けると言うのは命を差し出すことじゃない。そのくらい本気と言う心構え。覚悟だ。命が助かりたいから戦うとか、俺達にはそんな弱気はない」


アキトの熱のこもった言葉を聞いたベイティはほんの少しだけ口角が上がる。


「おっと。俺達とか勝手に代弁しちまった。俺は、の間違いだ」


「いいえ、アキトさんの言う通りです。私もその気持ちです。フォスレーが本物だろうと分身だろうと、することは変わらないし、心構えも変えるつもりはありません」


シュウも続いた。


「ウォーディンは、最初から、勝負はそのつもり。弱気は、戦士にはない」


3人の言葉にカイシスはーー


『すみません。私が間違ってました』


非を認め、謝罪した。


『でも気を付けて下さい。闇蝕は大変危険なもの。闇蝕になって回復の見込みがなかったらその時は、分かりますよね?』


「分かってる。その時は遠慮なくやってくれ」


アキトはベイティとシュウを見る。

2人は頷いて答えた。


『ロギアとの通信圏外は約12時間後を予定しており、その前に通信を入れます。私に聞きたいことがありましたらその前に通信を下さい。では私は用があるのでこれで通信を切ります。では』


カイシスの通信が終わると、ベイティは部屋の角に移動して、2人の顔が見える位置から声を掛ける。


「……あの、お2人に質問があるのですが、いいでしょうか?」


アキトとシュウは同時にベイティの方を見る。


「ああ、俺はいいけど」


アキトは答え、シュウの方を見る。

シュウは頷いて肯定の意思を示した。


「聞きたいことは、フォスレーの目的についてです。私には目的なく殺戮を繰り返しているとは思えないんです。もしただ人を殺すのが好きな殺人狂なら、私はもうこの世にはいないはずなのです」

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