表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
デッドリカバー  作者: 箱暗灰人
2章「ドクトアの戦火」
18/21

共鳴する者達・2

同じ境遇のベイティ、シュウと出会い、アキトは共に行動することを決めた。


「決心して下さりありがとうございます。ではフォスレーの目撃された情報について教えます」


カイシスは机の横にあるボタンを押すと、机の中央部が長方形に僅かに沈み、中央から左右に開いていく。

そこにあった大型画面にルヴェスタがある大陸の地図が表示された。

地図を指差しながら説明をする。


「場所はルヴェスタから東の方角にあるドクトア王国。この地でフォスレーを発見したとの報告が入りました。国王との謁見にフォスレーが何度か訪れているようです。話は国王と一対一で徹底的な情報封鎖をしており、内容は不明です。きっと何か悪事を企てているのでしょう。あなた方にはドクトア国へ行き、フォスレーの目的の調査、そして新たに懸念点である分身であるかどうかの確認を」


「あの、先程から疑問だったのですが、分身とは?」


ベイティが質問をする。


「ああ、申し訳ありません。そこの説明はまだでしたね。実は先日、私とアキトさんの前にフォスレーが突然現れたのです。ですが結果的にそいつはフォスレーではなく、フォスレーの分身で、分身はアキトさんが倒しました」


「あなたが……」


ベイティはアキトを少し驚いたような顔で見て聞いて来た。


「分身は本体より弱かったから倒せただけ」


だからそんな驚くことでもないと謙遜の意味を込めて言った。


「そうですか。その分身は、フォスレー自ら作ったものなのですか?」


「分身はそう言っていた。何でも作った時の記憶が分身にも引き継がれているらしい。その言葉を信じるなら、だがな」


アキトが答えるとベイティは俯き考える。


「そう、ですか。それで、どうして分身だと分かったんですか?単に弱かったからだけじゃないですよね?」


「明らかに普通の人体の構造をしていないんだ。血は流れないし、痛覚もなかったようだし。まあ、フォスレー本体も、もしかしたら分身と同じ体なのかも知れないが……」


「人外、いえ、生命体とも言えないような体の構造をしていたんですね。見た目では分からないと」


「分身だろうが、本体だろうが、フォスレーにやることはひとつ。戦えばどっちかは分かるだろう」


「そうですね」


2人の会話が一段落着いたようで、カイシスが口を開いた。


「説明を再開します。目的地のドクトア王国は今厄介ことになっていまして、実は王国は圧政により国民の不満が爆発、反旗を翻し国は二分化、王国軍と反乱軍で日々争いが絶えない状況なのです」


「え?そんな状況で俺達が中に入ることが出来るのか?」


「現地の偵察の情報を元に地図を見ながら説明します」


端末を操作すると、大陸全体の地図からズームし、ドクトア王国領土全体を真上から見た地図を表示される。


「中央部に王城、城を囲うように町が並び、その外側に周囲を囲う高い壁。その城壁の外側は農業を行う集落があるのですが、今は兵器が並んでいるようで、その外側にも高い壁で囲われています。2つの高い城壁によって囲われた強固な守り。反乱軍は1つ目の城壁前まで制圧が完了しており、現状は拮抗状態であると聞いています。戦時中なだけあって警備は厳重で、見つからずに城に行くことは限りなく不可能に近いようです。王国軍も反乱軍も多くは戦闘を経験していない民が多くいるので、強引に入って戦う手もありますが、王国軍には精鋭もいると言うことなので得策とは言えないでしょう」


「じゃあどうするんだ?」


「今の状況を見て方法は1つ、反乱勢力に協力することです。あくまで協力するフリです。本来は我々が介入すべきではない争いなので。

城内へ入るまでは仲間を演じて下さい」


「反乱勢力は見知らぬ人を容易に仲間に引き入れるのか?向こうだって警戒してるはずだろ?」


「このまま接触すればそうでしょうね。協力に足る人物である証拠や証明をする必要があるでしょう。方法はあなた方にお任せします。状況に応じて行動して下さい」


「それに例え反乱勢力に加担したところでいつ城に攻め込むのか解らないし、反乱軍が有利に運ぶとは限らない。あっちはフォスレーが付いているんだろ?」


「情報によれば、フォスレーは戦には直接関与していないようです。戦場でフォスレーを目撃した所を誰も見たことはないと。おそらくは補佐や作戦の指揮などをしていると予想しています。それに戦力は拮抗していますが、それは今だけのようです。ドクトア王国は国内だけで兵士の魔力補給が間に合っていないようなのです。籠城に限界が見えるとのことでした。そして反乱軍の大規模な動きの兆しがあると言うことです。近況説明は以上です」


モニターの映像が消える。


「それで、王国軍と反乱軍はどう見分けたらいい?」


「王国軍は青、反乱軍は赤の装備を身に付けているようですが、偽装している可能性もあるでしょう。見た目だけで信じず、質問するなりして見極めて判断して下さい」


「ああ、わかった」


「アキトさん。シュウさん。ベイティさん。あなた方にはこれからドクトア王国へ向かい、反乱軍の仲間となり、フォスレーの目的、分身であるかどうかの確認、そして可能であれば討伐をお願いします」

3人は頷いて答えた。


「ドクトア王国へはこちらで用意した車で向かってもらいます。10時に上層の支部の入口に集合して下さい。それと、ドクトア国内はロギアへの通信圏外になり、こちらと連絡出来ないようになります。状況変化による緊急対応は各自の判断でお任せします。どうかよろしくお願いします」


部屋を出た3人は支度の為にそれぞれ一旦分かれる。

アキトはすでに準備万端で、時間までの残り30分は自室で過ごすことにした。

考えるのは協力することになったシュウとベイティの2人のこと。


(あのウォーディンの男はシュウ。かなりの無口だな。ウォーディンなんて今まで見たことなかったからな。どう接すればいいのか。普通にしていればいいのか?そして、ベイティは普通に話すからまだいいんだけど、女……か)


アキトは女性に対してどう接すればいいのか分からなくなっていた。

話すことは普通に出来るが、話すだけで、正しい女性との接し方がよく分からない。

村でユイがいた頃にどのように接していたのかよく覚えていない。

女性に対して苦手意識を始めて感じたのが傭兵団に所属した時だ。

それ以来、未だに苦手意識が根付いたままだ。


(まあ、仲良くなる必要はないか。共に復讐を果たせればそれでいいんだから)


集合時間の10時より少し前だが、落ち着かなくなり、一足早く上層に出られる階に降りたアキトは出入口に向かう。


「ん?」


出入口から外側に見える大きな黒いものがあると気付く。


(あんなのあったか?)


外に出ると黒いものは支部前の広けた場所に止まっていた。

よく見ると上は三角形の濃い茶色で下は長方形の黒。

左端に窓らしきものがあり、下には大きな車輪が4つ。

目測で全長10m以上はあるだろう。

出入口出てすぐにある5段ある階段の上にいるアキトの目線よりも高かった。


(まさか、これが車?これ、車、なのか?)


黒い所の左側の部分が開き、中からカイシスが着ているような黒スーツに身をまとった男が現れ、左右を確認してから壁にあるスイッチを押すと階段が現れ、降りる。

腕の時計を確認し、それから周囲を見てアキトを見た。

目が合うと男はアキトに向かって小さくお辞儀した。


「アキトさん」


不意に後ろから呼ばれ、振り向くとベイティがいて、その後ろからシュウがこちらへ来ていた。

ベイティのスカートの丈が少しだけ短くなっていて、足にも黒い靴でよっぽど黒が好きなようだ。


「もう着ていたのですね」


「ああ、準備はもう終わってたから、早めに来たんだ」


「そうですか。それで、もしかしてあれが車ですか?」


アキトの肩越しに後ろの黒いものを見るベイティ。


「いや、まだ確認していない」


「3人揃いましたし、少し早いですが行ってみましょうか?」


「ああ、そうだな」


3人は階段を降り、男の元に真っ直ぐ向かう。

ロギアの関係者なのか問おうとしたら、男の方から笑顔で声を掛けてきた。


「アキト様、シュウ様、ベイティ様、でございますね?」


「あ、ああ。あんたは?」


わたくしはタシムと申します。この度は皆様をドクトアの国まで安全に送り届けるように任命されて参りました」


「ってことは、もしかしてこれが車?」


「はい!その通りでございます!」


「はあ……これが……」


これまで見たことないほど巨大な乗り物に圧倒されるアキト。


「まだお約束の時間前ですが、準備の方はもうよろしいのですか?」


「ああ。頼む」


「分かりました。では階段を登りまして右側へどうぞ」


階段を登って右に曲がると、中には白い机や茶色のソファがあった。

床は木の板、四方の壁や天井は白で、上に付いてる照明で部屋を明るく照らしていた。

正面奥に通路があり、奥に何かあるようだ。


(まるで部屋の中だ……)


中に入った3人は物珍しく見回す。


「どうです?まるで部屋の中のようでございましょう?」


入口に立つタシムがにこやかに言った。

奥の通路には狭いが左右に個室が計4部屋あり、そこでは寝泊まり出来るようにベッドが配置してあった。


「皆様には道中快適に過ごせるように設計されているのです。拘りは内装だけでなく、車体自体に強固な障壁が掛けられているので多少の攻撃はものともしません!更に振動を吸収する機構がありまして、およそ90%の振動を抑えることに成功しております!我々ロギアはこの車を愛情を込めてゼクステラと呼んでいます!4人で10日暮らしていける食料を常に保管されているので安心安全な旅をお約束しますよ!ああ、素晴らしい……」


テンションが高いタシムは、説明をして悦に浸る。

それで留まらず説明を再開させる。


「それからですね、運動性能にも自慢がありしてーー」


「ま。待った!ちょっといいか?」


「はい?」


タシムの言葉を遮ったアキトは言葉を制した。


「話が長くなるなら、とりあえず出発しないか?俺達は急いでいるんだ」


「これは失礼しました。ではこれより出発致します。あ、そちらの壁の青いスイッチを押せば外の景色がご覧になることが出来ます」


そう言い残してタシムは部屋を出て正面にある運転席に着席する。

スイッチに一番近いシュウが指を近付け、触れる前に手を止め、2人に顔を向けて口を開く。


「押す?」


「あ、ああ。押してくれ」


シュウは頷きスイッチを押した。

ウィーンと音を立てて、壁が左にスライドして窓となり、外の光景のロギアの支部の出入口が見られるようになった。


「え?」


横に動くと思いきや、下にさがって行き、支部の姿は見えなくなり、茶色の壁だけが見えようになった。


「中層に降りるんでしょうか?」


景色を見ていたベイティが言う。

下降が止まり、次に横に流れ始めた。


『あーあー、皆様、ご歓談中失礼します。運転手のタシムでございます』


部屋の天井片隅にある機械からタシムの声が聞こえて来た。


『現在走行中の道はロギア専用道路でございます。このまま緩やかに下り坂を進み、やがて中層郊外に出ます。もうすぐ景色が変わります。上には上層の底が見え、奥には上層のない場所から差し込む日差しが見えるでしょう』


窓から見える景色はタシムが言った通りだ。

次第に上層の底が上へと上がり、手前は暗く、奥が明るい、まるで光と闇が可視化されたような景色だった。


『それではドクトアまでの約22時間、景色を楽しんだりしながらお待ちくださいませ。このタシム、必ず皆様を無事に目的地までお運び致します。何かありましたら運転席の方へお越しください。では失礼します』


程なくして専用道路の出入口の厳重なゲートを抜け、中層の郊外に出る。

郊外は家屋が少なく、人工物より自然の物の方が多くなってきて、しっかり舗装されてない道を進んでいるのにも関わらず、中はほとんど振動を感じられなかった。


景色を見ていた3人はシュウが動き出すのを、きっかけにそれぞれ動き出す。

アキトは刀をソファに立て掛けるように置いて、ソファに腰を下ろす。

シュウは部屋の角の床にあぐらを組んで座り、目を閉じあ。

ベイティは特に何することなく立っていた。

その時ーー


『あーあー、皆さん、私の声が聞こえますか?』


部屋の天井片隅にある機械から声が聞こえる。

タシムとは別の声、その声には聞き覚えがある。


「この声は、カイシスか?」


アキトが答える


『はい、カイシスです。道中時間がありますよで、ロギアがこれまでに得たフォスレーの情報を皆さんと共有したいと思い、そちらに送信しました。タシムさん、お願いします』


部屋の窓が閉まり、灯りが消えて暗くなり、ソファの近くにある机の一部が傾きそこから現れた機械から映像が壁に照射される。

画面にはフォスレーの歴史と書いてある。

カイシスが解説する。


『フォスレーの名が最初に知れ渡ったのはティエ暦47年、今から60年前のことです』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ