ロギアでの日々・3
アキトはベッドに仰向けになって、カイシスからロギアに入りたてに渡している紙の束を見ていく。
ロギアとは
善悪を法律を定め、法律違反を犯した者を悪とし、適切な裁きを与えて秩序を保ち、あらゆる脅威から人々を守る為に作られた国無き組織である。
世界には全ての人々が国単位で管理されている訳ではない。
国を持たない町や村など小さな集落はいくつも存在する。
国と言う後ろ楯がなければ、数少ない民
で様々な問題に対処しなければならず、万能に問題に対処出来るはずがない。
アキトの住んでいたフウライの村も国無き村だった。
村で対処しきれないことは近くの町(とは言っても片道で半日は掛かる距離)で人を雇うこともあった。
ロギアとはそういった国無き弱き者達を守る組織だとアキトは認識する。
その後はロギアが定めた法律が長々と書いてあった。噛み砕いて以下の事柄が書いてある。
殺人、傷害、盗み、騙し等の損害が生じるものを犯罪とし、犯罪の背景にある様々な事情を鑑みて罰を定めている。
仮に誰も見ていない場所で人知れず誰かが殺され、犯人として立証出来ない容疑の場合や、正当防衛や個人が持つ恨みでの殺人で罪の重さが不明瞭な場合がある。
その不確かな罪に対しての罰をロギアに所属する者が状況を適切に判断し、罰を決めて下すことが出来る特権を有しており、各支部に近い事件は支部が担当し、支部から離れた法律適用地域での事件の場合、居合わせた個人、もしくは複数人によって罪の裁量を任せている。
ロギアの法律が適用されていない国や地域では特権の効果はなく、その国、地域の法を遵守すべし。
その他にあらゆる問題に対しての対応方法やロギアとしての注意事項などこと細かに書いてあった。
アキトは難しい言葉の羅列に目が疲れて来て、その箇所は読み飛ばした。
次にロギアの給与、休暇、役職、仕事の選択、依頼などの事柄が書いてあったが、アキトはフォスレー以外のことはやらない約束なので、俺には関係ないと読み飛ばすことにした。
最後にこの支部の建物内部の地図をざっと見ていき、とある言葉に目が止まり、書いてあることを読む。
(トレーニングフロア、それと魔法術も使えるトレーニングフロアもあるのか。ロギアがトレーニングとして自由に24時間利用可能。詳細は管理人にて、か)
アキトが今日目覚めてから感じていた体調不良はいつの間にか無くなっていて、調子は万全。
フォスレーを殺す為にわずかな時間も無駄にしたくないアキトは早速トレーニング施設を訪れた。
上にも横にも広い場所に様々な器具が置いてある。
部屋にいる何人かは器具を使ってトレーニングをしていた。
「おや、新人の方ですか?」
声をかけられた方を向くと小柄で腰の曲がったお年寄りの女性がいた。
「あ、はい。そうです」
「私はここの管理を任されておりますミディと申します。あなたのお名前を聞いていいかしら?」
「アキトです」
「アキトさんねえ」
ポケットから小さいメモ帳を取り出して名前を記入する。
「では、ここの説明をしますね。トレーニング器具は自由にお使い下さい。魔力補給したい時はあちらの受付に来て下されば取り扱っております。それと……」
少し間を開けーー
「器具をぶっ壊したら、弁償ですからね?」
と言った。
「は、はい……」
老婆の威圧に圧され、ぎこちなく返事をする。
老婆は先程受付と指差した方向にある扉の奥に消えて行った。
「さてと……」
部屋を見回して一人のトレーニングをしている若い赤髪の男に目が止まる。
長い棒状の物を振っているが、顔を歪め汗をかきながら実に重そうに振っていた。
(あの棒、見た目は軽そうだけど、そんなに重いのか?)
男が持ってる茶色で丸い棒状の物が壁に何本も掛けられているのを見付け、近付いて持ってみる。
「おっ?」
想定してた力では微動だにせず、更に力を込めて持ち上げた。
(おっも!こんだけ重ければ振るだけでトレーニングになるな。よし!)
周囲に障害物が無い開けた場所で棒を両手で持って振る。
最初はぎこちなく、体が持っていかれそうになるが、すぐに重さに慣れて早い振りが出来るようになる。
「はあ、はあ、きっつ……」
赤髪の男は棒を床に立てて杖代わりにして、肩で息をして休んでいた。
ふと横に目をやり、アキトを見つける。
「ん?んっ!?」
アキトを二度見して驚いていた。
(すっげ!?この人、こんなに早く振れるんか!俺だってやってやる!!)
横歩きでさりげなくアキトに少し近付くと、俺はもっと凄いとをアピールするように棒をなるべく早く振るい始めた。
(どうだ!?俺だって!やれるんだ!)
そしてチラッとアキトを見るとーー
(ええええええ!?)
アキトは片手で振っていて、赤髪の男は大きく口を開けて驚いていた。
(っとと、片手はだいぶきついな。本気で握ってないと抜けそうになる。でも、よく鍛えられそうだ!)
隣にいる赤髪の男は目に入らず、トレーニングに没頭するアキト。
(片手ぇぇぇ!?俺だって、片手で!!)
片手に持つとプルプルと手が震え、振るどころの話じゃなかった。
棒は次第に前に傾き、耐えきれずに手を離してしまい、鈍い音を立てて落ちる。
その音でアキトは赤髪の男が横にいることに気付き、棒と交互に見ていた。
「あ、あはははは!!い、いやーコレ重いですよねー!!」
頭をかいて笑い誤魔化そうとする赤髪の男。
「ああ、そうだな……」
適当な相槌を打ってトレーニングを再開する。
「ははははは……」
しゃがんで拾い上げようとするが指が掛からず、挟む形で何とか持ち上げようとする。
「ふんぐ!ぬぬっ!ぐぅぬぁぁぁ!っっと!」
何とか隙間を作り、手に持ち直すことが出来た。
「ふう……」
「壊しました?」
「うわっ!?」
背後から唐突に声を掛けられ、赤髪の男は驚いて棒を離す。
「おっと」
空中で、しかも片手で受け止めたのはさっきの老婆のミディだった。
「ええええええええええええ!?」
信じがたい光景に声を上げて驚く赤髪の男。
「ふむ、どこも壊れておりませんな。お取り扱いには注意して下さい」
「は、はい。ごめんなさい……。おおっとと!」
棒を両手で受け取ると、重さで前のめりになるが何とか踏ん張って堪えた。
リディは平然とした顔で扉の奥へ消えて行った。
「凄い力ですね、あのお婆ちゃん!あんな細い体のどこに筋肉があるんですかねぇ?」
「いや、あれ魔術だけど?」
「へっ?魔術?」
「身体能力を強化できる魔術。知らないのか?」
「い、いやあ!恥ずかしながらそっちの方面てんでダメで、へへへー。あ、じゃああんたも、いや、あなたも、さっきからその魔術を使ってたんですか?」
「いや、使ってないけど。使ってたらトレーニングにならないし」
「あ、そっか。そうですよねー!」
赤髪の男は恥ずかしさを隠す為に振りを再開する。
(魔術って凄いなあ。俺も使えるようになりたいぜ!……あ、そうだ)
疑問が思い浮かび、赤髪の男はアキトに声を掛けた。
「あのー、実は俺ロギアに入ったばかりでして、ひょっとして先輩ですか?」
「いや、俺も新人だ。今日入ったばかりだ」
「今日?」
(今日ってことは、俺のほうが3日先輩じゃん!いや、たった3日で先輩面するのはおかしいか?実力も年齢も明らかに向こうが上だもんなー)
「な、なんだー。じゃあ同期っすね!あ、俺ヒートと言います。よろしくです!」
「俺はアキトだ。よろしく」
アキトは何気に出た自分の発言にハッとする。
(ついよろしくなんて言ってしまった。ロギアに入ったが誰かと仲良くするつもりない。あくまで同僚の関係までだ)
アキトは棒を振るのを辞め、元のあった位置に戻した。
「あれ?休憩?」
「用事を思い出した」
「あ、そうなんだ。お疲れー!」
アキトはトレーニングルームを出ていき、真っ直ぐに自分の部屋に戻るとそのままベランダに出る。
眼下に広がる上層の街並みを見ながら、思い浮かべるはフォスレーの顔。
フォスレーによって奪われた命、ユウキ、サクヤ、タケル、村の皆の亡骸。
恨みを再確認をすることで自身の中にある闇を増幅させる。
うっかりとは言え、馴れ合いを求めるかのような発言をしたことが許せなかった。
些細なことだが、この些細な所から綻びが生まれるとアキトは思っている。
それはフォスレーの分身に言われて納得したからじゃない。
前からあったことだ。
アキトは生まれ故郷のフウライ村を出た後は、悪を倒す、悪から人を守ることを生業としている傭兵の仕事をしていた。
傭兵の仕事は場所を転々と変えながら生活に必要な金を稼ぐ仕事だ。
フォスレーを探しながら稼げて、アキトには丁度いい仕事だ。
だが、全く無名のアキトが傭兵を名乗ったからって仕事が入ってくる訳がなかった。
そこで傭兵団の所へ行き、実力を買われ、傭兵団に入ることが出来た。
だが、アキトはそこで言われて気付く。
自分が人見知りし、かつ人付き合いが悪いと言うことに。
アキトは村で子供の頃から仲が良かったからこそ、ありのままでいられた。
だが最悪な事件で心は破壊され、いつしか自分以外誰も信用出来なくなっていた。
団長は言わなくても人それぞれだと理解は示してくれたが、団の中では馴染めなかった。
そんな日々が続いたある日のことだ。
団員の1人が闇蝕状態になり、1人の団員を殺した。
闇蝕になった人は理性を失い、誰かを襲う。
そして死ぬまで治らない。
世界の常識だ。
だが、他の団員はこれまで築き上げた友情が枷となり、誰かが殺らねばならないのに目の前で襲われてるのにも関わらず手をこまねいて、更に1人の団員を身殺した。
アキトは見かねて自分がやろうとした所を団長に「これは俺のやるべきことだと」と止められ、団長の手によって騒動は落ち着いた。
後に知る。
闇蝕となった男は、最初に手を掛けた女のことを愛していたが、2番目に手を掛けた男と隠れて付き合っていた。
付き合っておきながら、闇蝕となった男の愛を利用して貢がせていたのだ。
そのことがバレたのだ。
これまで数々の命を狩って来た傭兵が、情に絆されて刃が鈍る弱さを、事件後しばらく傭兵業を中断する程の立ち直りの遅さを、人と深く関わることで起こり得る嫌なことを知ったのだ。
傭兵団に落胆したアキトは退団し、それ以降は一人の力で生きてきた。
光と闇は天秤のような関係。
自身の闇が足りないと感じた時、アキトはいつもフォスレーの憎しみを再確認して自身の闇を高めていた。
「くっ!っ……ぁぁ……」
衝動に駆られ、暴れたくなる気持ち、激しい殺意が体の奥から沸き上がり、顔を歪め堪える。
目を閉じ、深呼吸を繰り返す。
やがて目を開けたその目付きはフォスレーと戦っていた時の鋭い目付きになっていた。
翌日、講習日を知らせが届く。
講習日までの数日間、なるべく人との交流を避けながら鍛練の日々を過ごし、
そして講習日当日を迎える。
【公開可能なキャラクターデータ】
アキト 男性 37歳 身長174cm
自属性・風
武器・刀
使える魔法属性・風
肌……薄橙色
目……左目は茶色、右目は黒色
頭部……黒髪で前髪は眉毛より上。横と後ろは肩に掛かる程度の長さでやや癖毛。
ヘアスタイルにこだわりは一切なく、邪魔と感じたらバッサリと切る。
体格……中肉中背で引き締まった筋肉。
バランスの整った肉体。
服装……上は黒い薄手の長袖。その上に灰色の肘上までの袖で羽織る上着。
下は紺の動き安い大きめなサイズ。
足は黒で滑り止め効果の高い靴。




