まさかの事態
「君は悪魔の成り損ない」の続きです。
どうぞ楽しんでください。
俺は目を覚ました。
…長い夢を見ていた。
ここは何処だ?
「おや」
左目は魔波しか見えないが、右目は普通の世界が見える。なぜだ、何が起こった?
電球をぶら下げただけのライトが、簡素な部屋を照らしていた。
薄い毛布が4つ敷かれており、そのうちの一つに俺は寝転んでいた。
窓には薄いレースカーテンがさがっており、日光をおおらかに取り込んでいた。
俺は自分の胸を見た。
…あの赤い悪魔のコアは、相変わらずついていた。
ため息をついた。
あの宇宙みたいな世界は、夢だったのだろうか。
俺は立ち上がり、扉を開けた。
廊下が左右に広がっている。なんだこの建物は。
やけに近代的というか、地球っぽいというか。異世界の建物か?これが。
取り敢えず右に進んでいくと、階段があった。それを下ると、また廊下。
向こうの方に一際強い明かりが見えるので、あそこが出口だろう。
出口に向かって、俺は歩いていった。
「…!??!!?!???」
外を見て、俺は文字通り仰天した。
左斜め前に、道路を挟んでビルがある。ビルというか、店かあれは。電気用品を扱ってる店だ。思い出した。
おなじみの看板が、店の上にでかでかと立っていた。
「…?」
ビル?
なぜ?
「………えっ、道路?」
道路。道路がある。車も走っている。今通ってったのは日産の軽自動車だ。エンブレムもちゃんとついていた。
俺は辺りを見回した。
右の方には、畑が広がっている。かなり広い。カカシが何本か立っている。
外に出て、俺が今までいた建物を見てみると、これはまあ、マンションじゃないか!
少し暗めなオレンジ色をしたマンションで、少し汚れていた。
空を見て、更に驚愕した。
人が飛んでいる。
棒のようなものに乗って、人が飛んでいる。
俺は頭がおかしくなってしまったのか。
鬱々とした気分は吹き飛び、困惑が脳に居座った。
「あ、灯葉君。起きたんだ。どうしたの空を見上げて」
聞き馴染みのある声がした。
「ドロイト…?ここはどこだ…?これはどうなってるんだ…?」
ドロイトは眉を潜めた。
後ろに並んで、ムージュとドラセナが居た。相変わらず、ドラセナの後ろではメリーが回っていた。
「何を言っているの?」
「どうなったんだ、フルセルは?異世界は!?」
ドロイトは不安気な表情をした。まるで病人を見ているようだ。
「…ここは、日本だよ?何かあったの?」
雷のような衝撃が、俺を撃った。