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パニック関連

山の中に入る事は出来るけど、下山しようとしたら命がなくなった

作者: よぎそーと
掲載日:2022/09/25

 状況は最悪だった。

 外に出ようにも出られない状況が続いている。

 正確に言うならば、出る事は出来る。

 だが、出たら命がないのだ。

 だから、誰もが外に出られない。



 何の変哲も無い、山の中の旅館である。

 それなりの歴史のある、そこそこ贅沢なところだ。

 温泉もあるし、紅葉の時期だ。

 観光や骨休めを求めてやってきた。



 だが、一泊して状況は変わった。

 朝食を終えて、さて出かけようというところだった。

 旅館の入り口が騒がしくなっていた。

 何があったのかと思って見に行った。

 そして、串刺しにされた死体を幾つも目にする事になる。



 地面に突き立てられた木の杭。

 長さは4メートルから6メートルくらいはあるだろか。

 それが垂直につき立っている。

 そこに人間が突き刺さっていた。



 いったい誰が何のためにやったのか?

 それは分からない。

 ただ、異常で異様な事が目の前に事実として存在している。

 あまりに日常や常識とかけ離れていたために、少しばかり呆然としてしまった。



 だが、問題なのはそこからだった。

 旅館の人間によれば、殺されてるのは宿泊していた者達。

 宿泊その者は昨日までで、昼頃に帰宅していったという。

 それがどうしてこのように串刺しになって戻ってきたのか?

 その理由は全く分からなかった。



 そんな事もあって、宿泊を切り上げる者達も出て来た。

 それも仕方ないだろう。

 こんな事が起こってる場所に残りたがる者などそう多くはない。

 急いで出て行く者達は、ある者は自分の車で。

 ある者は旅館のバスでそれぞれ帰宅していった。



 しかし、それらも二時間ほどして旅館に戻ってくる事になる。

 昨日までの宿泊者と同じように、串刺しになって。



 当然ながら警察もやってきた。

 旅館の通報でやってきた彼らは、現場検証と旅館にいる者達の聞き込みを開始した。

 少しでも証拠や証言を得ようとしている。

 といっても、有力な手がかりがあるわけもない。

 起きたら串刺しがいきなりあったのだ。

 目撃者もいない。

 そもそも、誰がどうやってこんな事をしたのか?

 どのような手段でやったのか?

 それを知る者がいるわけがない。



 それでも、調査は出来るだけ行われ。

 それをもってやってきた警察の一部は帰っていく。

 これから警察署で様々な調査をするために。

 また、旅館にも何人かの警察官が残る。

 今後、再びあるかもしれない何かに備えて。



 そんな警察に同行して、宿泊客の何人かが帰宅していく。

 同行という形で警察が護衛をする形で。

 これならば襲われる事もないだろうと考えて。

 襲われても対抗できるだろうと期待して。



 それは悲惨な結果で報われる。

 旅館から離れた者達は、やはり串刺しになって帰ってきた。

 宿泊客も警察も。

 一切の例外なく、全員平等に串刺しになっていた。



 あまりの異様さに、旅館にいた者達は全員震えた。

 なんでこうなるのか?

 誰がやってるのか?

 何が目的なのか?

 その全てが分からず、疑問だけが残っていく。



 だが、一つだけ分かった事がある。

「ここから出られないな」

 ぼそりと出て来た誰かの声が、今の現状を言い当てた。



 幸い電話などは通じる。

 電気もある。

 外と連絡をとる事は可能だ。

 警察は警察署に状況を伝えていく。

 宿泊客と旅館の従業員も家族や知人などに説明をしていく。

 ある者は、ネットでこの状況を配信していく。

 SNSや個人ブログ、動画サイトなどなど。

 この状況の異様さを伝えていった。



 誰もが旅館の状況をしる事となった。

 どうにかして救助しようと誰もが動き出した。

 しかし、その結果は思わしくない。



 まず、旅館に来る事は出来る。

 しかし、出て行こうとしたら必ず死ぬ。

 それは、旅館から出ていこうとした者達が必ず死ぬ事で証明された。

 最初は警官隊が。

 続いて機動隊が。

 さらには自衛隊が。

 それらがやってきては死んでいく。



 そんな中で、とにかく解決しなければならないのが食料だった。

 まだ旅館の冷蔵庫には食材がある。

 しかし、それもいつかは潰える。

 それをどうにかして補充しなくてはならない。



 これについては、問題なく解決していく。

 無人機による物資の輸送によって。

 試しに行われたドローンによる偵察。

 旅館まで送り込み、そこから山を下って帰ってくるのかどうか。

 結果、これは上手くいった。

 ドローンは無事に山の下まで帰還した。



 どうやら串刺しにされるのは生物だけ。

 ドローンのような無機物、生物でないものは除外されるようだった。



 早速無人機による食料輸送が開始された。

 おかげで飢え死にの可能性は回避された。



 それと同時に、とある実験が行われた。

 空からの移動は可能なのかと。

 ヘリコプターならば脱出出来るかもしれないと。



 とはいえ、気軽に試すわけにもいかない。

 失敗したら人命が失われる。

 さすがに事を慎重に進める必要があった。



 そこで、ドローンを使って生物を移動させる事となった。

 実験用のネズミや、昆虫ををドローンに乗せて移動させる。

 そうして往復すれば、何かが分かるかもしれないと。



 ただ、何者かの殺害対象が人間だけならば、この実験は意味がない。

 ネズミや虫は無視する可能性があるからだ。

 それでも、殺傷対象がどこまでなのかを知ることはできる。

 とにかく今は何でも試すしかない。



 結果は、最悪のものとなった。

 旅館までやってきて、そこからUターンしていくドローン。

 それらは途中で撃墜された。

 正確には、途中で通信障害が発生。

 カメラの画像も途切れ、何が起こったのか分からなくなった。



 しかし、結果はしっかりと提示される。

 ドローンは破壊された状態で。

 ネズミも虫も、やはり串刺しにされて旅館に戻ってきた。

 大きさにあわせた杭によって刺し殺されている。

 それで分かった。

 狙われるのは基本的に生物。

 それを乗せてる場合、無機物も破壊されると。



 手詰まりだった。

 食料など必要なものが運び込む事は出来る。

 なので、旅館の人間は当分生きていける。

 旅館に拘束されるという、かなり不自由ではあるが。



 しかも、この状況を打破する方法もない。

 生物を狙っている何かの姿はいまだに判明しない。

 少なくとも、偵察のために飛ばしてるドローンで存在を確認する事も出来ない。



 ならば人間を使って調査するのもためらわれる。

 武装した自衛隊ですら全員返り討ちにあってるのだ。

 下手に内部に突入するわけにはいかない。



 いっその事、旅館までの間にある木々を倒す事も考えられた。

 どれだけ効果があるか分からないが、それで問題を起こしてる何かを退ける事が出来るのではと。

 ただ、山の麓から旅館まではそれなりの距離がある。

 途中にある木々を全部倒すとなると、相当な時間がかかる。

 当然ながら、出費も莫大なものになる。

 実行するのはかなり難しい。



 それでも放置は出来ないと、麓の方の木々を幾らか倒していく。

 ある程度の効果はあるかもしれないと考えて。

 山の入り口から100メートルほどの木々が刈り取られる。

 倒れた木々が積み上がっていく。

 そこまで進んだところで休憩となる。

 一旦、山をおりようと作業員達が下ろうとする。

 そこで彼らの体は宙に放り投げられた。

 近くで見ていた者達は驚き呆然となる。



 そして作業員達は例外なく旅館に送り込まれる。

 串刺しにされた状態で。

 これを見ていた者達は、山に踏み込めない事をイヤでも察した。



 それからは様々な方法が考案される事になる。

 何とか救助できないかと。

 山から降りる事は出来ないかと。

 だが、生物を例外なく殺すのだ。

 救出する術があるとは思えない。



 土の中を掘り抜いていく事も考えられた。

 無人で動く掘削機を用いて、人の被害をおさえて。

 ある程度掘り進んだところで、実験も行われた。

 実験用のネズミや虫を詰めた地上用ドローン。

 大がかりなラジコンと言うべきそれを掘り進めたトンネルの奥まで進ませる。

 そこから引き戻し、無事に済むか確かめる。



 結果は最悪。

 ドローンは戻り始めたその瞬間に通信途絶。

 残骸と積み込まれていた生物の死骸が旅館に届けられた。



 この時点で、旅館にいる者達の救助は断念された。

 方法が思いつかないのだ。

 やむなく、無人機による食料補充。

 ついでに、ゴミなどの回収をする事で、旅館にいる者達の生存がはかられるようになった。



 旅館に残された者達は、呆然としていく。

 どうにもならないこの現実を受け入れきれない者がほとんどだ。

 例外的に冷静な者も何人かいる。

 それらも、取り乱してないだけで、現状を打破することは出来ない。

 ここで死ぬまで生きるしかないことに、やるせなさを感じていた。



 ただ、物の行き来は可能だ。

 それだけはありがたかった。

 宿からリモートで仕事をする事も出来る。

 そうして奇妙な同居生活が始まった。



 そんな状態が何年も続く。

 旅館にいる者達も成長し、あるいは老いていく。

 やがて子供は成長し、大人は老衰で死んでいく。

 僅かな男女が新たな命を生みもした。

 そんな子供達に、リモートでの教育もなされていった。

 決して出られない場所で、小さな集落が形成される。



 そんな集落は存外長く続いた。

 閉じ込められた最初の世代が死に絶え、孫やひ孫の世代に突入していく。

 だが、限られた人間しかいない集落だ。

 血縁同士での婚姻を繰り返すしかなく、それがどうしようもないほど近親結婚の問題を露呈させていく。

 やがて子供も生まれなくなる。

 そうして最後の一人が潰えていく。

 最初の串刺しが発見された朝から、100年余りが経過したころだった。



 こうして事件は終息した。

 決して解決することなく。

 以後もその山は、踏み込み禁止の危険地帯に指定されていく。



 時折その禁を破って山に踏み込む者もいる。

 肝試し、度胸試し、あるいは面白そうな娯楽として。

 だが、そうして山に分け入った者達が生きて帰る事は無い。

 皆、等しく旅館のあった場所に串刺しになって並べられる事となる。



 それを誰がやってるのか。

 どうしてやってるのか。

 理由はついに解明される事はなかった。

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