2 面 接
ブックマーク・感想をありがとうございました!
やったね私、家族が増えるよ!
……この報告は、私にとってショックだった。
実際問題、出産と子育てがある程度終わらないと、国に対して乗っ取りを仕掛けていられるような状況ではなくなった。
これで計画は、何年も遅れることになるだろう。
とはいえ、出産も子育ても疎かにするつもりはない。
元から女性ではない私に上手く母親がやれるのか不安だけど、これから沢山の子供を助けようとしている私が、自分の子供を幸せにしてやれなくてどうする。
だからやれることは、全力でやるつもりだ。
しかし今の私にやれることと言えば、規則正しい生活をしつつ、栄養を沢山とって出産に備えることは当然だが、あとはこれから完成する孤児院兼学院で働いてくれる職員の中に、出産経験のある女性を雇うことくらいかな。
彼女達には色々と出産や子育てについてアドバイスを受けたり、私の出産時に手伝ってもらったりしてもらおうと思っている。
勿論他にも、集めた孤児の面倒を見てもらうなど、私の出産後にも働いてほしいと考えている。
教師役ができるような人材なら、なお良い。
そんな訳で、商業ギルドに求人票を出してみよう。
ついでに冒険者ギルドにも、お願いしてみるかな?
引退を考えている女性冒険者なら、警備員として雇うというのも有りだな。
で、応募してきた人と面接試験をする訳だが、これにはアリゼが元々持っていたらしいスキルが役に立ちそうだ。
そのスキルとは、人のオーラを視るというものだ。
つまりは、身体から発散されている気や魔力だ。
これは私も以前から感知することはできていたのだが、アリゼの場合はそれに色がついて視える。
そしてそのオーラの色から、その人物が現在どのような感情なのかを読み取ることが可能らしい。
怒っていれば赤、楽しければ黄色……って感じだ。
また、オーラの色が澄んでいるかどうかでも、その人物が善人なのか悪人なのかを、ある程度判断できるようだし、オーラの量で体調も分かる。
これは人の心を読む上ではかなり便利な能力だと言えるし、この能力を活用すれば色んなことができそうだ。
特に交渉など、心理戦が必要な事柄には相当役に立つだろう。
……だが、アリゼは能力を使っていてもなお、貧困から抜け出せずに結局命を落とした。
孤児の中にはこのように素晴らしい能力を持ちながらも、埋もれたまま終わる者も多いのだろう。
私はそんな子供達にも、活躍の場を与えてやりたいと思っている。
……が、まずはそんな子供の世話をし、導く大人の存在が必要だ。
これはその為の求人である。
とりあえず私の出産の手伝いや、子供達の世話の為に15人くらい採用しようか。
教師役ができるような人材なら、更に何人か雇ってもいい。
教師役がいないのなら、私が世話役の人達に教えて、教師役になれるように養成するのもいいだろう。
あと、孤児は種族とか関係なく引き取るつもりなので、獣人も雇いたいな。
で、最初に来たのは、60歳くらいのご婦人・アンナさん。
ちょっと体力面に不安はあるが、メイドや乳母の経験があるらしいし、オーラの色も綺麗なので即採用。
次に30才くらいの女性、名前は……覚える必要も無いな。
一見誠実そうだが、オーラが濁っている。
この人は何かやらかしそうなので不採用。
求人票に書いた給金については、結構多めに設定したので、金目当てでこういう奴もいるのだ。
その後も「こいつちょっとどうなの……?」というのが何人も来た。
う~ん、給金を多めに設定しすぎた?
でもちゃんと働いてくれる人には、相応のお金を払うのは吝かではないんだよ?
しかし子供達の世話をする上で、いい加減なことをして子供達に被害を与えるような人では駄目なのだ。
あと、年齢の制限を設けていなかったので──、
「シシルナ……14才です」
こういう娘も来る。
今の私の身体と同い年か。
ちょっと髪がくせっ毛なのが特徴的だが、なかなか可愛い娘だ。
うん、採用!
……と、心情的にはいきたいところだが、色々と聞いてみないとな。
「志望動機は?」
「あの……妹を食べさせる為に、お金が必要なので……。
なんでもしますので、どうか雇ってください!」
女の子が「何でもする」と言うのはやめた方がいいと思います。
「……親御さんはなんと?」
「……私達はその……孤児なので……」
服装からは見窄らしさはさほど感じなかったが、つい最近になって保護者がいなくなったってことかな?
このままでは『火垂●の墓』みたいな末路になってしまう可能性も、小さくはないだろう。
ならば話は早い。
「じゃあ、2人でうちの孤児院兼学院に入りなさい。
生活費など、諸々の費用はこちらでみます」
「それは……いいのですか?
働かなくても……?」
「働きたいのでしたら、学院の授業が終わった後に、手伝っていただく……という形でも構いませんよ。
働きの内容に応じて、給金の額も考えたいと思います」
「それでしたら、是非お願いします。
将来のために、お金を貯めたいです!」
シシルナは嬉しそうに頭を下げた。
うん、採用だな。
彼女のオーラは綺麗だが、それ以上に放出しているオーラの量が多い。
この場合、強い気や魔力を持っていることの証明であり、更にはなにかしらのスキルを持っているなど、隠れた才能がある場合が多いようだ。
彼女は将来、私の側近になれるかもしれない。
ふむ……シシルナみたいに、孤児の中から働き手を募るというのも有りか。
前世の世界では子供の労働は虐待扱いされる場合もあったけれど、この世界では子供も労働力としては貴重だし、それを活用しなければ家族が食べていけないという、厳しい現実もあったりする。
それに結局は、労働の内容次第じゃないかな?
ブラック企業みたいな労働環境なら、子供も大人も関係なく虐待だと言えるし。
逆にホワイト企業のような環境ならば、経済的に潤う上に、人間的な成長の機会も得られる。
特にこの世界では職業訓練場や専門学校のような物は殆ど無いみたいだから、そういう技術を身につける場所としての働き場所を提供するのもいいな。
さて、次は20代の男性、パトリックさん。
男性で子供達の世話をしたいという人は、この世界では珍しいような気がする。
前世の世界では保父さんもいたけれど、一部で性犯罪を犯す者がいた所為で、やはり女性の方が安全だという風潮は多少なりともあった。
しかもこっちの世界では子育ては女性の仕事だという意識がまだ強いようなので、保父のような仕事をしたいという男の人は、相当な変わりも者に見られるかもしれない。
でもオーラを見る限りパトリックさんは、純粋に子供が好きなだけのようだ。
それなら問題は無いから、採用しようと思う。
……まあ、ロリコンがそんなにあちこちにいてたまるか……というものである。
だが──、
「リチア・トラーフ、28才!
冒険者をやっていた!
小さな女の子が好きです!」
アウトー!
おまわりさん、こいつです。
「はい、ご苦労様でした。
お帰りください」
「なんでよ!?」
……なんでって、さっきの自己紹介の時点でアウトだったけれど、身に纏っているオーラの色が、性愛を示すピンク色じゃん……。
今回登場した新キャラは、構想段階では1人も存在していませんでした。つまり構想当初から存在する4章のメインキャラは、まだ登場していない……。
次回は明後日更新の予定です。