表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/392

8 異世界からの物体X

 ブックマーク・☆でのポイント、ありがとうございました。

 ……私はネズミ。


 結論から言えば、ウサギ狩りは失敗だった。

 やはり毛皮が厚すぎて、私の前歯は頸椎まで届かなかったのだ。

 で、失敗を悟った私は、すぐさま逃げようとしたが、逆に驚いたウサギの方が勝手に逃げてくれて助かった。


 しかしウサギは駄目か……。

 柔らかい腹部なら傷つけることができるのかもしれないけれど、常に伏せた状態のウサギの腹を露出させる為には、格闘戦を挑んで強引にひっくり返す必要があるだろう。

 だが、体格差がありすぎて、たぶん勝てない。

 

 いや……あるいは子ウサギならいけるのかもしれないが、結局は私よりも身体が大きい相手を倒すことは難しいという事実だけは揺らがない。


 ……となると、狙うのは同族のネズミか?

 そんな弱い存在の身体を手に入れても、現状が劇的に改善する訳ではないが、それでも狩りの練習と、能力の検証にはなるだろう。


 それに今の私の身体はたぶん雌だと思うので、雄を引き寄せて油断させてから狩る──。

 ……そんな手段も、使えるはずだ。

 名付けて、ハニートラップ作戦!


 ……いや、それで雄に交尾を迫られても嫌だな。

 色仕掛けは、ほどほどにしておこう。


 そうと決まれば、ネズミを探そう。

 まあ、迂闊に他のネズミの縄張り(テリトリー)に入ったら攻撃されるかもしれないので、あくまで慎重に……ね。

 



 そして翌々日、ついに第1村人(ネズミ)発見!

 ゆっくりと接近してみると、相手はこちらに興味を示してはいるが、警戒はしていないようだ。

 ……これは()れる!


 私は怪しまれないように接近し、攻撃の間合いに入った瞬間、ネズミの延髄に食らいついた。

 前歯に手応えがあったので、これは成功したと確信した瞬間、私の視界が暗転する。

 そして気がつくと、先程までとは違う視界へと変わり、そして私に覆い被されるような形でネズミが死んでいた。

 

 ……さっきまでの私だな。

 ん? 毛皮が部分的に赤いな?

 赤いキツネだった頃の私の特徴が、僅かに引き継がれている?

 もしかして、この新しい身体にも、赤い部分があるのだろうか。


 ともかく、身体の乗っ取りは成功したようだ。

 やはり私の能力は、殺した相手の身体に乗り移ることで確定だと思う。

 

 そして副次的な効果として、新しい身体のダメージを全回復してくれるというのも確定かな?

 実際、首に噛まれた痕は、全く残っていない。

 これならば身体を取っかえひっかえすることで、常に健康な身体を維持することも可能だ。


 あと、食糧問題も取りあえず解決したな。

 前の私という、大量の肉が手に入ったからだ。

 ネズミにとって肉は主食ではないけど、雑食性なのでいけないこともないだろう。

 まあ、前の自分の身体を食べるというのはちょっと抵抗があるけど、背に腹は代えられないし……。


 よし、当面はネズミを積極的に狩っていこう。

 ネズミ死すべし、慈悲は無い。



 更に数日後、またネズミを見つけたので、仲間のフリをして近づいた。


「ヂューッ!!」


 あれ? なんか威嚇されているんですけど?

 あ、たぶん今の私の性別が雄だから、相手も雄なら、雌を奪い合うライバルだと認識されているってことかな?


 う~ん、強引に仕掛けてケガでもしたら嫌だし、ここは退散するか。

 ……と見せかけて、あいつが警戒を解いた頃に襲撃してやる。

 そんな訳で、ある程度離れた位置から迂回して、獲物の背後に回り込む。


 ……って、こっちに気付いた!?

 あれ? ウサギの教訓から、音には気をつけているはずだし……。

 あ、狩りの基本的なことを忘れていた!

 臭いか!


 ああ……となると、さっき威嚇されたのも、私が血の臭いをプンプンさせていたからかな?

 同族を狩っている凶暴な存在だと悟られた……と。

 じゃあ、今度は風向きに気をつけて接近してみよう。


 うん、あっさり狩れたし、新しい身体もゲット。

 やっぱり臭いだな。

 これからは臭いを消す方法も、考えた方が良さそうだ。


 そういえば、この世界に生まれてから、入浴どころか水浴びもしたことが無いな……。

 できれば早く人型の身体を手に入れて、風呂とか作れるようになりたい……。

 その為にも、狩りの能力をもっと上げていかなければ。


 よし、この調子で、どんどんネズミを狩るぞ!


 ……しかし、ネズミの立場から見た私って、仲間のフリをして近づいて、油断したところで襲いかかってくるゾンビか、遊星とかからの物体Xみたいな存在だな。

 完全にホラー映画の世界の住人だわ。


 ……あれ?

 普通にモンスターじゃね、私の存在って?

 仮に人間の身体を手に入れたとしても、その事実は変わらないような……。


 これは……あまり深く考えない方がいいかな……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ