33 進むダンジョン攻略の末に
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パーティーの強化を始めてから、そろそろ半月ほど経過しただろうか。
相変わらずダンジョン内の魔物は増え続けていて、冒険者の犠牲者も後を絶たない。
その所為で実力不足の低ランク冒険者は、ダンジョンに入るのを怖がっているらしく、魔物を狩る人間の数も減っていると聞く。
結果、魔物が間引かれることなく、更に増えるという悪循環だ。
これは魔物が地上に出てくるのも、時間の問題かもしれない。
そんな訳で、我らが3姉妹のダンジョン攻略は急務なのだが……。
現在我らは80階層の攻略を完了したところだ。
今日は比較的魔物との遭遇が少なかったので、余力がある内に81層へと続く階段を守る守護者に挑戦したのだ。
その守護者は、体高が15mはありそうな竜だった。
世界の半分をやるから仲間になれ……と言ってきそうな感じの竜だ。
某グルメ漫画基準だと、捕獲レベルは6590くらいありそうだな。
実際キエルの話では、あの恐竜よりもヤバイ相手らしい。
本来は国が軍隊を投入して、ようやく追い返せるかどうか……だとか。
しかし私が結界で竜からの魔法と息の攻撃を完封して、他の2人にチマチマと攻撃させることを5時間ほど続けることで、なんとか倒すことに成功した。
地道なレベリングの結果、ようやくマルガとキエルにも、竜へダメージを与えることができる攻撃力が身についたようだ。
だが、さすがに竜からの攻撃だと、直撃を受けたらマルガとキエルでは即死しかねない。
普通の人間では、どうしても防御力には限界があるのだ。
しかしそれは私が防御魔法でフォローして、彼女らには回避に専念してもらえばどうにかなる。
うん、この調子なら、まだまだ先に行けそうだな!
81階層への階段は目の前だ。
「さあ、次の階層に行きますか!」
「無~理~!」
……キエルの泣き言は、聞こえなかったことにする。
「さあ、行きましょう!」
「レイ姉、もう駄目にゃ……。
竜、怖かったにゃ……!」
……う~ん、想像以上に2人の消耗が激しいな……。
むう……休憩してから攻略を継続するか、それとも一旦町へ帰るか……。
「……それでは、一旦帰りますか?」
私の提案に、2人は万歳をして喜んだ。
まあ私もギルドに巨大な竜を納品したらどんな反応になるのか、それには興味があったので、早くギルドに行ってみたいというのもある。
あの悪魔の時以上に、驚かれそうだ。
「それでは転移をして……おや?」
「どうしたのレイちゃん?」
「ここは……転移魔法を阻害しているかのような、怪しい力場を感じます。
ここで使うのは危険かもしれません」
いよいよ何者かがダンジョンの攻略を妨害する為に、本腰を入れ始めたってところだろうか。
「じゃあ、来た道を引き返してから、安全なところで転移しよう」
「そうですね……」
私達はこのボスフロアの出入り口である、扉のところまで進んだ。
しかしそこには──、
「マルガ、キエルさん、気付きましたか?」
「にゃっ、扉の向こうに、何かいるにゃ!」
「うん……なんか嫌な気配がするね」
正解!!
明らかな待ち伏せだな。
ここに来る時には殆ど魔物と遭遇しなかったが、竜との戦いで消耗したところを狙う為に潜んでいたのか……?
それとも私達を足止めするのが目的で……?
だとすれば、何処かで大きな動きがあるのかもしれないな……。
じゃないと、これは説明が付かない数だ
「しかも気配は、何十とありますね……」
「!?」
マルガとキエルが動揺する。
「ええぇ……そんな数、うちとマルガちゃんだけでは倒し切れないよ!?」
「ですよね……」
こうなると敵の群れを突破する為には、私も攻撃にまわらないと駄目かもしれない。
しかしマルガとキエルが消耗している今、できれば戦闘は回避したいところだ……。
だが別の脱出ルートとなると、81層に入るしかないのだが、現時点ではそちらに続く階段の方からは敵の気配を感じない。
これは私達を誘い込もうとしている……?
あからさまに罠臭いな……。
もしくは、その先にはもう何も無い……か。
「嫌な予感がしますね。
これは一刻も早く、町へ帰った方がいいのかもしれません」
「でも……どうするにゃ?」
ここは……最後に残った道しるべですかね。
「私が正面突破するしかないですね。
みなさん、壁際まで下がってください」
「う……うん」
あ、勿論私も下がるよ。
「乗っ取り」を発動させない為にも、距離は大事。
そして次に……、
「え……!?」
「にゃあ……!!」
キエルとマルガが、呆然とした顔で頭上を見上げた。
そこには私が土魔法で生成した、巨大な岩がある。
ダンジョンの通路の広さと、大体同じくらいのサイズだ。
つまり、直径10mほど──。
「あ、みなさん、耳を塞いでおいた方がいいですよ?」
その次の瞬間、私は全力でその大岩を撃ち出した。
必殺!! マジカル巨石ボウリング(物理)!!
その大岩は大音響を立てながら、このフロアの扉を突き破り、そしてその向こう側にいた魔物の群れを飲み込んで直進した。
本来ならば、小さな石を弾丸のように飛ばして敵を狙撃する魔法だが、私が使えばこんな大量破壊兵器にもなる。
「…………っ!!」
うむ、索敵の範囲内では、敵の反応がほぼ消えたな。
生き残っている奴も、キエルとマルガだけでトドメを刺せるだろう。
「では、行きましょうか。
急いで町に帰りますよ!」
2人は驚愕の表情のまま、コクコクと頷いた。