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75/392

32 異 変

 ブックマーク・☆での評価・感想をありがとうございました!

 父親の件から数日後、ダンジョンで狩った素材を納品しにギルドへと来たら、応接室に呼ばれた。

 話したいことがある──と。

 またか~。


 そして応接室には、やっぱりギルドマスターのザグルがいる。


「あの……今度はなんですか……?

 すぐ帰りたいのですが……」


「そう言わずに話くらい聞いてくれ。

 断るのは自由だからよ」


 でも、絶対に面倒な話なんでしょ?

働きたくないでござる! 働きたくないでござる!

 でも、話を聞くまでは帰してくれそうにない。

 

 それにギルドに物を売って収入を得ている立場としては、ギルドの機嫌を損ねて買い取り拒否なんてことをされたら、自分で販路を開拓しなければならなくなる。

 できればギルドとは、仲良くしておいた方がいいのも確かだ。


 私は溜め息交じりにソファーに座った。

 マルガとキエルもそれに倣う。


「……で、どのような話なんです?」


「最近、ダンジョンの魔物が増えていることは知っているか?」


「今、私達が狩り場にしているのは、70階層の近くですが、確かにその傾向はありますね。

 ……まさか、上層の方でもそうなのですか?」


「……そうだな。

 近頃では、魔物がほぼ駆逐されたはずの1階層でも魔物が現れる。

 2階層から這い出てきたのだろうが、それだけ魔物が増えている証拠だ。

 その結果として、新人冒険者の中から死人も何人か出ているし、深い階層に潜ったまま帰還しないパーティーもいる」


「それは問題ですね……」


 ダンジョンで全体的に魔物が増えている……ということか?

 おそらくは魔族の仕業なんだろうけど、目的はこれ以上のダンジョン攻略を阻止する為か、それとも魔族の存在が人間に知られたので、潜伏をやめて本格的に人間と敵対するつもりなのか……。


「最悪、ダンジョンから魔物が溢れ出して、町に被害を与えるなんてことも有り得る」


 ああ、スタンピードね。

 異世界ではよくある、よくある。


「……その際は、町の防衛の為に我々も力を貸せ……ということですか?

 それならば、我々も生活や家を守る為に(やぶさ)かではないですが……」


「うん、そうだね」


「にゃ」


 この辺はキエル達も同意である。

 しかしザグルは、


「それもあるんだがな……。

 だがお前達には、ダンジョンの攻略を進めて欲しい。

 現状、60階層より下へと気軽に行って、平然と帰ってこられるのが、お前達しかいないんだ」


 そんなことを提案してきた。

 何言ってんだ、お前?


「それは……状況を悪化させる可能性があるのでは?

 魔族がダンジョンの攻略を嫌がっているからこその、現状でしょう?」


「それもそうなんだがな……。

 しかし原因が正確に判明していないから、これがいつまで続くのかも分からないし、何もしなくても更に悪化する可能性もある。

 ならば何が地下で起こっているのか確かめて、その元凶を取り除いた方がいいってもんだ。

 それに魔族は、いつまでも放置できるような問題ではないからな。

 もたもたしていたら、魔王が復活して世界の危機……なんてことも有り得る」


 あ~……魔王関係の問題はあるかもなぁ。

 そしておそらく、今魔王に勝てそうな人間って、私だけなんだろうなぁ……。

 その辺を見越して、ザグルが私に頼ってくるのも分からないではない。


 でも危ないところに、マルガとキエルをあまり連れて行きたくはないんだよなぁ……。

 かといって私1人で行って戦うと、「乗っ取り」を発動させるリスクが常につきまとうし……。


「……攻略は勿論進めますが、あくまで無理をしないペースで……ですね。

 私達も命が大事なので……」


「まあ、俺らも強制する権限がある訳ではないから、それでいいけどよ……。

 でも、なるべく急いでほしいということは、頭の隅にでも入れておいてくれ。

 成果次第で、一代限りの爵位である騎士爵を得られるよう、国に働きかけてやってもいい」


「……いえ、国とは一切関わり合いになりたくないので、結構です」


 いいからそういうの……。

 本当に今更……そういうの……いいから……。


「……ですが、なるべく急いでほしいという件は、考慮しておきます」


 と、私はこれで話は終わり……とばかりに立ち上がった。


「おう、よろしく頼むぜ!」

 

 私達はギルドを後にした。

 全く……面倒臭いことになったものだ。

 しかしこうなると、マルガとキエルの強化が急務だなぁ……。


 せめてキエル単体で、あの悪魔に勝てるくらいレベルを上げないと……。


「ふむ……」


 私は2人の方を見た。


「あっ、なんか嫌な予感……」


「にゃあぁ……」


「みなさん、明日から強化合宿ですよ!

 ダンジョンに籠もって、実戦訓練です!」


「やっぱりぃ~!」


「うにゃ……」


 まあ、2人が嫌な顔をするのも分かる。

 でもこの魔族の問題は放置すると、もっと酷いことになりかねないからなぁ……。


 私達の気ままな冒険者生活は、犠牲になったのだ……。

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― 新着の感想 ―
[一言]  顔も知らない国の連中の平和……その犠牲にな。
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