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29 お化け屋敷

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 ……うん?

 なんで勝手に玄関の扉が閉じた?

 幽霊の(たぐ)いは、もういないはずだが……?


 それとも私の浄化でも消滅しないレベルの、高位の霊体がいたのか?

 私の索敵って、実体の無い相手にはあまり反応しないから、ちょっと分からない……。

 大きな魔力の動きでもあれば別だけど……。


 今、玄関のところで魔力は動いたか?

 屋敷の内装に気を取られていて、ちょっと分からなかった……。

 というか、それよりも──、


「えっ、えっ、えっ!?

 今、なんで扉が……!?

 なんで……っ!?」


 あかん、キエルが、あかん……!!

 キエル、あなた疲れているのよ。


「落ち着いてください、キエルさん!

 たぶん風の所為ですよ」


 私はオロオロとしているキエルを、慌ててなだめる。

 本当に幽霊の(たぐ)いが駄目なんだな……。


「そ、そ、そうだよね……!!」


「そうですよ!」


 ……なんとかキエルを落ち着かせた私は、マルガにこっそりと指令を出す。


「マルガ、何かいるかもしれないから、索敵はしっかりしておいてくださいね」


「はいにゃ」


 それから私達は、屋敷の中の見学を続けたが、いつの間にか扉が閉じているということは、何度もあった。

 しかし異常と言えばそれだけで、実害は全く無い。

 ただ怯えたキエルが、常にそわそわしていたが……。

 

 うん……なんだかまるで、お化け屋敷の中にいるみたいだ。


 ただ、そんなキエルでも、広い浴室を見たらテンションは上がっていた。


「うわ……凄……っ!」

 

 お風呂嫌いのマルガは興味が無さそうだが、私とキエルにとっては、好きな時に好きなだけお風呂には入れるのは、かなりの魅力だ。

 しかも湯船が、温泉のように広いのならなおさらだ。


 ここにキエルと一緒に入るのは、凄く楽しみだなぁ。

 そ……それだよ視聴者()が求めているモノは!!


 と、その時、


 パタン。


「ひえっ!?」


 また開けっぱなしだった浴室の入り口の扉が、勝手に閉じる。

 それに驚いたキエルが、私に抱きついてきた。

 わぉ……胸が顔に当たっている……。

 

 キエルママァ……。

 ……じゃなくて。


「レ、レイちゃんっ!!

 やっぱり、この家、おかしいよっ!!」


「大丈夫ですよ、キエルさん。

 私がついていますから。

 

 ……でも、何かがいるのは確かなようですね。

 マルガ、何か分かりましたか?」


「今、入り口のところに、何か小さいのがいたにゃ」


 私は浴室に夢中で見ていなかったが、そこに興味が無かったマルガは気付いたようだ。

 それに私も扉のところで、小さく魔力が動いたのを感じた。

 しかし現在は、もう何も感じない。


 ……今から追跡するのは、難しいかな?

 あ、でも、もしかしたら……。


 私は入り口の扉を開けて、そのまま放置する。


「レイちゃん、何してるの……?」


「ちょっと待ってください。

 試してみたいことがあります」


 これまでの異変は全て、扉を開けている時に起こったので、同じ状況を再現して、実際に異変が起こるのかを確認しようという訳だ。

 そしてそのまま扉を注視していると、何か小さな影が現れる。


 大きさは精々1mくらいか。


「さっきのにゃ!」

 

 それは薄汚れた服を着た、小さな子供の姿に似ていた。

 しかし似ているだけで、何処となく人間とは違う。

 耳は長いし、目も大きい。


 ……これはもしかして、妖精というやつか?

 つまりこの屋敷に住み着いていた几帳面な妖精が、だらしなく扉を開けっぱなしにされているのを見かねて閉めに来た?


 ……まあ、冬場だと室温が逃げて寒くなるし、玄関なら防犯上問題もあるからね?

 

 で、妖精は扉を閉めようとしているが、このままではまた消えてしまう。

 そこで私は、ゴブリン語で呼びかけた。


『ちょっと待って!』


 すると妖精の動きが止まった。

 やっぱりか。

 元の世界でもゴブリンは、妖精の一種として分類されている場合もあったので試してみたが、どうやら使用している言語が近いようだ。


 妖精は私の方を見て、「何かな?」って感じて首を傾げている。

 うぐっ……可愛い!

 まったく、小妖精は最高だぜ!!

 この豪邸にこんな可愛い子が付いているとか、凄く当たりの物件なのでは?


 まあ、ここを紹介した商業ギルドは、私達が女子供ばかりだからと軽く見て、事故物件を紹介したのかもしれないが……。

 実際、私やマルガのように霊が見えるのでなければ無害だった可能性は高く、売れるのなら押しつけてしまえという意識はあったのだろう。

 そして駄目なら、別の物件を紹介すればいいだけだ──と、舐めたことを考えていたのかもしれない。


 はあ……この世界は、相変わらず女子供が軽く扱われるなぁ……。

 あとでザグルの方に苦情を入れておこう。

 まあ、管轄が違う商業ギルドへの影響力は、あまり期待はできないけどね……。


 だが結果的には、かなりの掘り出し物を引き当てたかもしれないので、これはラッキーだぞ。

 私はその妖精に、色々と話を聞いてみることにした。

 そしたら──、


「えええええぇぇぇ……レイちゃんが、意味の分からない言葉で喋り出したんですけど……!?」


 ……キエルがドン引きしている。

 まあ、いきなり未知の言語で喋り出したら、驚くよね。

 しかもキエルからは、妖精が見えていないようだし。

 

 つまり彼女の目から私は、何も無いところに向かって、意味不明の言葉で会話しているようにしか見えていないのかもしれない。


 ……うん、確かに奇行だな。


「レイ姉がおかしくなったにゃ……」


 マルガまで!?

 少なくとも君は、妖精が見えているでしょ!?


 後で詳しく説明するから、私の正気を疑うのはちょっと待って欲しい!

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