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23 閃 光

 ブックマーク・☆での評価・感想をありがとうございました!

 私のビームサーベルは、あの悪魔に効いていた。

 ならば倒すこと自体は、そんなに難しくはない。

 ただし「乗っ取り」を発動させないようにする為には、少々工夫がいる。


 一番簡単なのは、乗っ取り先として成立しないほど、相手の身体を破壊し尽くすことだ。

 それは私が本気を出せば、それだけでいい。

 ……が、こんな狭いところで本気を出すと、マルガとキエルを巻き込んでしまう可能性がある。

 なので、そこはちょっと、威力の調整が必要だ。


 そのことを考えると、攻撃の威力は戦闘中に少しずつ上げていって、トドメの時にどれだけの威力が必要なのかを見極めるのが無難なのだが……。

 しかしそれだと、どうしても長期戦になってしまうのが、悩みどころではある。

 そんな風に私が逡巡していると──、


『~~~~』


 悪魔が何事かを呟いた。


 何かしらの攻撃魔法?

 いや、それらしき魔力の動きは感じられな──……あ!


「──しまった!!

 マルガ、キエルさんっ、襲撃に備えてっ!!」


 2人の間近に、気配が生じた。

 あの悪魔、仲間を呼びやがったっ!!

 某グレータなデーモンのように、魔法を封じた状態での増殖なら経験値は美味しいけど、今の状況ではマズイっ!!


 私は転移魔法を使って、2人の(そば)まで瞬時に移動した。


「レイちゃん!?」

 

 そこにはグレムリンなのか、それともインプなのかはよく分からないが、小型の悪魔が3体出現していた。

 小型でも悪魔は悪魔、魔法でも使われたら、2人の生命(いのち)はあっという間に無くなってしまう可能性がある。

 私は蜘蛛糸を生成して、そいつらを瞬時に拘束する。


「後は任せますっ!!」


 これ以上は、新手の小悪魔に対処していられる余裕が無い。

 何故ならばあの悪魔が、もう目前まで迫ってきているからだ。

 しかしここで戦えば、確実に2人を巻き込む。


 何が何でも引き離さなければっ!!

 私は「結界」を広範囲に展開し、それを悪魔に叩きつける。

 悪魔は「結界」の壁に阻まれて、それ以上進めなくなった。

 だけどもたもたしていたら、「結界」を破壊されるか、転移魔法で突破されてしまう可能性がある。


 だから私は、「結界」ごと悪魔を殴った。

 ブロウクン・マ●ナムっ!!


『ギッ!?』


 私の攻撃力では、(こぶし)が悪魔の身体を貫通してしまう可能性が高い。

 その結果、その場で死なれて「乗っ取り」が発動されても困るので、悪魔の身体に叩き込まれる衝撃を「結界」で分散させることによって、貫通させることなく悪魔を殴り飛ばしたのだ。


『グギャアアアァァァ……──』

 

 と、長い悲鳴を残して、悪魔の身体は通路の端まで飛ばされ、壁に衝突してもなおその勢いは止まらず、壁に半ばめり込むこととなる。

 しかも壁と結界に挟まれる形にもなっているので、身動きすることはほぼ不可能だ。

 

 それでも、まだ生きているようだな。

 制限速度を100kmほど超過したトラックと正面衝突したような衝撃だっただろうに、なんて生命力だ。

 そのまま転生でもしておけよ。


 でも、これだけ距離が離れれば、「乗っ取り」が発動する心配はない。

 もう遠慮無く()れるっ!!


「光に……なれっ!!」


 私は悪魔を閉じ込めていた結界を解除した瞬間、(てのひら)から、熱線を撃ち出した。

 これの応用技であるビームサーベルで悪魔の身体を斬り裂くことができたのだから、これで倒せない道理は無いはずだ。

 ただ、全力でやるとこのダンジョンそのものが吹き飛びかねないので、出力はビームサーベルよりも少し強めで十分だろう。


『……っ!!』


 熱線から発せられた閃光が、悪魔を飲み込む。

 その瞬間、凄まじい爆発が通路を満たした。

 まあ、新たに形成した「結界」で蓋をしておいたので、私達の方には熱や衝撃波は伝わってこなかったが。

 

 そして爆発が収まった後には、黒焦げになった悪魔の姿があった。

 熱線の直撃を受けた胸部は完全に焼失しているし、頭も半分吹き飛んでいるので、さすがに死んでいるようだ。

 むしろ身体の原形をとどめていたことについては、瞠目に値する。


 ……素材として使えるのかどうか分からないが、死体は収納しておくか。

 最悪、研究材料として買い取ってもらえるだろう。


「さて……そちらも片付いたようですね」


 キエルとマルガも、小悪魔を片付けたようだ。

 こちらは綺麗に身体が残っているから、かなりの高額買い取りが期待できるな。


「あ、うん。

 レイちゃんが動きを封じ込めてくれたおかげだよ。

 それにしてもあの光線……どこかで見たことがあるような……」


「さあ、気の所為では?」


 私は雑にしらばっくれることにした。

 なんだかいちいち隠すのも面倒臭くなってきたので、私の正体がバレたら、その時はその時だ。

 まあ、キエルが相手なら、なんとなく大丈夫なのではないか……という気はしている。


「それでは、来た道を引き返しますか」


「にゃ?」


 キエルとマルガは、訳が分からないという顔をした。

 だけど私が引き返すことを提案したのには、ちゃんと理由がある。


「あの悪魔、これ以上ダンジョンの攻略を進めて欲しくなかった様子。

 つまりこれ以上進むと、また悪魔の襲撃があるかもしれないということです。

 そしておそらく、私達が求めている上への階段はこの先には無い……」


「ああ、なるほど!

 この先には、下へ進む階段がある可能性の方が高いということだね?」


「その通りです。

 だから、上に行きたいのなら、逆に進むのが正解でしょうね。

 できれば休みたいところでしょうが、まずは安全なところまで下がりましょう。

 できるだけ迅速に!」


 そして処置したいこともあるしね!

 ハリー(早く)! ハリー!


 私は少し焦っていた。

 そんな私の様子を見て、キエルは原因に気付いたようで……。


「……あ!

 レイちゃん……漏れちゃったの?」


「はい……また(・・)です……」


 悪魔を本気で殴った時に、腹に力を入れすぎたのか、股から血が漏れてパンツとズボンを少し赤く汚していた。

 例のスライムから作った生理用品の、吸水容量を超えてしまったのかもしれない。


「あ~、あれは5時間くらいで交換した方がいいしね……。

 そろそろ新しいのに交換しようか」


「はい……。

 後で売っている店も教えてください……」


 戦いに勝ったのに、こんなに情けない気持ちになるなんて、思わなかったよ……。

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