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21 続く戦い

 ブックマーク・☆での評価・誤字報告、本当にありがとうございました! 

 戦いは続くよどこまでも。

 あれから何度か魔物との戦いになったが、キエルとマルガだけでも対応できるようにする為に、私は敵と遭遇直後に睡眠魔法と麻痺毒を併用し、それが効かなかった場合も、転移で強制退場してもらうなどの形で数を調整した。


 これでこちらの方が負ける要素は無い──という状態で、2人には戦ってもらっていたのだが、それでもキエルとマルガは苦戦した。


 結局、私も戦闘に参加して、ようやく勝利したこともある。

 どうにもこの階層の敵は、彼女達にとっては荷が重いらしい。

 そんな訳で、疲労困憊(こんぱい)の状態に(おちい)っている2人の為に、現在は探索を中断して休息中である。


「キエルさんの動きは、大分良くなってきていますね。

 もっと経験を積めば、更に良くなるはずです。

 ただ、たまに隙が生じているので、そこを敵に狙われないように注意しましょう」


 休憩しながら、反省会も兼ねている。


「う……うん」


「マルガは決定的な攻撃力不足ですね。

 身体強化の要領で、武器も気や魔力で強化することを意識しましょう。

 武器のことを、身体の延長だと認識するのです」


「む……難しいにゃ」


 意気消沈気味の2人。

 強敵との連戦続きで、2人は自身の力不足を痛感しているようだ。


「皆さんは、ちゃんと成長していますよ。

 ここを切り抜けて、上層の弱い敵と戦った時、戦いが凄く楽になっていることに気付くはずです。

 だから今が頑張り時です」


 少々精神論だが、それも必要な時がある。

 気合いだ、気合いだ、気合いだー!!

 しかしキエルは、まだ落ち込んでいる様子だ。


「はぁ~……うち、まだまだだなぁ……。

 昔見た古代竜(ダイナソー)や変異型ゴブリンのデタラメな強さを目指して、頑張ってきたつもりだったんだけど……」


 あ~、それは両方とも私ですね……。


「……レイちゃんは、どうしてそんなに強くなれたの?」


 う~ん、それは「乗っ取り」というユニークスキルのおかげ……と言うと、身も蓋もないな。

 あとは、どうして一般の人間と大きく差がついたのかというと……油断、慢心、環境の違い……。

 ……まあ、環境が大きいのだろうと思う。


「……私は、魔物がうようよいる魔境で生まれて、生き残る為には常にサバイバル状態でしたから……。

 その環境の所為(・・)でしょうね。

 当時は過酷な運命を呪いもしましたが、今は助かっていますよ」


「そっかー……。

 うちはもっと過酷な状況に身を置かないと、レイちゃんみたいにはなれないんだね……」


「そうですね……。

 だからどんどん無茶をしてください。

 私がフォローをして、決して死なせませんから!」


「つまり、死にたいくらい苦しくても、死ねないってことにゃ……?」


「何か問題でも?」

 

「うわぁ……」

 

「にゃ……」 


 2人はドン引いているけど、今成長しておかないと、今後のダンジョン攻略では生存率が違ってくるだろう。

 だから、本当の限界がくるるまでは、まだまだ頑張ってもらおう。

 

 とはいえ、疲労が蓄積した状態ではミスも増えるし、私の生理による不調も完全に回復したのかよく分からないので、休息はしっかりととっておく必要がある。


 保存食で軽い食事を取ってから、2人には仮眠をとってもらおう。

 2人が眠っている間に私は、索敵で敵の襲撃を警戒しつつ、転移魔法での実験でもするかな。

 

 まず、収納魔法の中に保存してあった魔物の死体を取り出します。

 失敗してもいいように、金銭的価値の低いものね。

 で、この魔物の死体に転移魔法をかける訳だけど、範囲を絞って……よっと!


「グロ……」

 

 ……う~ん、内臓だけ転移させて、解体の手間を減らそうと思ったが、ちょっと難しいな。

 身体の半分が消失してしまった……。

 まあ、これはこれで、即死魔法として使えそうだが、「乗っ取り」発動のことを考えたら、全身を飛ばした方が確実だろう。

 

 とにかく、もっと精密な術の操作をしないと、狙った通りにはできないようだ。

 将来的には、これで血抜きなんかもできるようになればいいんだけどなぁ……。

 その為には超音波の能力でエコー検査を行い、体内の構造を正確に把握してから転移の処置が必要かな。


 ……うん、普通に刃物を使った方が、早いような気がしてきた。

 でも、この技術を極めれば、全く切開せずに手術をすることも可能になるから、色々と応用はできるはずだ。


 そういえば昔のオカルト番組で、よく紹介されていたなぁ……心霊手術。

 身体を全く切開せず、素手で患者の体内から病巣を抜き取るという技だ。


 実際には手品によるインチキなのだろうけれど、これが転移魔法で再現できるのならば、出血で手とかが汚れないのも魅力だし、患者への負担も減る。

 回復魔法では治せない病気もあるようだし、練習は続けよう。


 それから1時間ほど経過した頃、索敵に反応があった。

 私は慌てて2人を叩き起こす。


「マルガ、キエルさん、敵です!

 急いで準備をしてくださいっ!!」


「ひゃっ!?」


「にゃっ!?」

 

 本当に急いで!

 今回はちょっとヤバイ!!


 なにせ、敵の反応がいきなり近くに現れたのだ。

 この通路の20メートルほど先──そこにある角を、曲がったところだろうか。

 私の索敵能力なら、ここまで接近されて気付かないということは、ちょっと有り得ない。

 たぶん敵は、転移によって接近してきたのだ。


 つまりその敵は、転移魔法による攻撃をしてくる可能性もあるということになる。

 その恐ろしさは、さきほど即死魔法を生み出してしまった私にはよく分かる。

 仮に転移魔法を攻撃に使ってこなかったとしても、転移魔法は高度な術だと言うから、それを使える時点で能力は低くないと判断できる。

 

 ……まあ、防御魔法の「結界」で、ある程度は魔法攻撃を無力化できるとは思うが、油断はできない。


 やがて通路の奥から、そいつが姿を現した。


「!!」

 

 それは山羊の頭を持つ、3メートルほどの巨人で、背中にはコウモリのような翼もある。

 つまり見るからに、悪魔の姿をした存在だった。

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