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19 ダンジョンで飯

 ブックマーク・☆での評価・感想をありがとうございました!

 只今お休み中です。

 起こさないでください。

 ──レイチェル。


 そんな訳で、私があんな(・・・)状態になってしまった為、脱出路を探す作業は中断して、この場でキャンプすることにした。

 現在私は毛布にくるまって、床に転がっている。


 体調が回復するまで、休んでいなさい──と、キエルから厳命されているのだ。

 で、一眠りして今し方目が覚めたところだ。

 

「……?」

 

 私が仲間達の方へ目を向けてみると、じっと天井の方を見つめているマルガと、その様子を怖々(こわごわ)(うかが)っているキエルの姿があった。

 ああ、ネコってよく何も無いところを、じっと見つめているよね。


 霊が見えているなんて説もあるけど、実際に霊がいることもある。

 私も元ネコだった所為か、たまにマルガが見つめている方を見ると、そこに霊が見えた……なんてことが何度かあった。

 

 まあ、その霊のほぼ全てがロクな力を持っておらず、不死系の魔物(アンデッドモンスター)と言えるほどの存在ではなかったので、無視していたが……。

 ただ、あまり気持ちの良い物ではない。

 だからキエルも、本当に霊がいるのかどうか、聞くに聞けないという感じなのだろう。


 本当に「いる」って答えられたら、怖いのだろうしな……。

 ともかく私も、マルガが見つめている天井の方を見てみるが、今回は(・・・)特に何もいないようだ。

 ただの、知らない天井……だ。

 マルガは単に暇なので、ぼんやりと天井を見ているだけなのかもしれない。


 ……あ!

 そうか、天井か。

 ここが罠に引っかかった者を閉じ込める為に作られた空間なのだとしたら、ただの転移先以外にも使い道があるな。


「マルガ、 お手柄です!」


「にゃ?」


「あ、レイちゃん、もういいの?」


「ええ、多分大丈夫です。

 それに脱出の糸口も見えたかもしれません」


「本当!?

 それはよかった!」


「ただ……実際に確かめてみないと、なんとも言えないので……。

 まずは食事をしてからにしましょうか」


「……そうだね」


 私達は今日、まともな食事を1度もしていなかったのだ。

 脱出の作業に取りかかる前に、食事を取っておいた方がいいだろう。

 私のお腹がクゥと、可愛らしくなった。


 で、食べるのはダンジョン内で捕れた魔物の肉なのだが、さすがに下処理が面倒臭い。

 だから町で解体されて加工済みの物をあらかじめ買ってあったので、それを使うことにする。


 空間収納から取り出した肉は、ヒンヤリとしていた。

 さすがに収納の中の時間が停止していて、腐敗しない──なんていう、便利な機能は無いようだが、現実世界の気温に中が影響されることはないらしく、常に低い温度が維持されているらしい。


 まあ、異空間には太陽のような熱を発する物が無いのだから当然だが、逆に何故マイナスの温度になっていないのか不思議である。

 それとも術者である私の認識に、影響を受けているのだろうか?

 確かに収納した物が腐るような高温や、凍るような低温では困るとは思っているが……。


 ならば、時間が経過しないように念じながら使えば、その通りになる可能性もあるのかな?

 あるいは、空間収納のスキルの熟練度にも左右されるとか?

 ……まあ、その辺の検証は、またの機会にして……。


 今日はステーキを作ろう。

 え、ダンジョンでステーキを?──そう思う人もいるだろう。

 出来らぁっ!!

 

 まず、土魔法で平らな石の台を作ります。

 それを炎魔法で焼きます。

 石が十分に熱くなったら、その上で肉や野菜、あとは卵も焼いて軽く塩を振れば完成。


 凄く簡単だが、いつ魔物の襲撃があってもおかしくないダンジョン内でなら、これでも手間をかけている方である。

 そして味は焼きたてということも手伝って、そんなに悪くないはずだ。

 やはり肉料理は冷えた物よりも、温かい方がいい。


「わぁ~、美味しそう!」


「沢山食べてくださいね。

 では、いただきます」


「いただきますにゃ」


「……前から気になっていたけど、レイちゃんとマルガちゃんの、その食前の挨拶は他では見たことが無いね?」


 まあ……日本式だからな。

 マルガは……私のが伝染(うつ)った。


「これは……私の故郷の作法で、食材になった生き物の命をありがたくいただく……という感謝の念を込めた感じですかねぇ。

 他にも、この食材が私の手元に届くまでに関わった、農家や狩り人、加工業者、商人等々、沢山の人たちに感謝する意味も含まれているかもしれません」


「へぇ……この辺では食前に神様に感謝する人が多いけど、レイちゃん達のもいい考え方だね」


「…………ありがとうございます」


 まあ、私は神を信用していないから絶対に感謝しないので、前世の習慣をそのまま通しているというのが実情だけどね。

 実際、私自身が女神から受けた仕打ちもさることながら、レイチェルの悲惨な人生を考えたら、この世には神も仏も無いわな……。


 あるいは神のこの世界に対する影響力なんて、実はそんなに無いのかもしれない。

 だから誰も救われないし、世界も良い方向へと向かわないのだろう。


 まあそれはさておき、今は食事である。

 腹が減っては戦はできぬ──だ。

 ここから脱出したら、それで終わりではない。


 地上までの道程(みちのり)では、数多くの魔物との戦闘も想定される。

 体調はしっかり整えておいた方がいい。

 血を沢山流したから、栄養もしっかりと取らないとな!


 ……さて、食事が終わったら、マルガとキエルにも30分ほど仮眠してもらってから、いよいよ脱出だ。

 その手段はまだ検証していないけど、大丈夫なんじゃないかな……。

 ……たぶん大丈夫だろ。

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