14 逆 鱗
ブックマーク・☆での評価、ありがとうございました。
男か女か分からない幼児体型って、レイチェルのことか……!?
レイチェルのことかーっ!!
これでも日々、すくすくと育っているはずなんやぞ!!
確かに少しだけ成長は遅いし、そのことについては私もちょっと気にしているが、だからと言って侮辱は許さんっ!!
「……っ!?」
私から漏れ出した怒気で、男達が身を竦せる。
そして騒ぎを遠巻きに見ていた野次馬達の輪も、逃げるように広がった。
ここが戦場だと、理解できたようだな。
「フシャーッ!!」
ついでにマルガも、私の怒気に共鳴して男達を威嚇している。
そしてキエルは、
「ちょっ、ちょっ、レイちゃん!?
マルガちゃん!?
ヤバイ、さすがにここで、殺し合いになるのはヤバイっ!!」
慌てて止めに入った。
私の怒気に、殺気が混じっていることに気付いたか……。
なかなか優秀だ。
しかし、ここで何もせずにやめるというのも、私の気が済まないな……。
どうやって落とし所を作ろうか……。
その時──、
「そこまでだ!」
知らない男の声が聞こえてきた。
いや──、
「あいつらですよ、俺をコケにしたガキどもはっ!!」
あの羽子板……じゃなくて、ハゴータという奴の声も聞こえてくる。
なんだ? 親にでも泣きついたか?
声のする方を見てみると、ハゴータの他に複数人の見知らぬ冒険者の姿があった。
その中の1人に、キエルが反応した。
「あ……あの人は!」
知っているのか、雷で──いやキエル?
「Sランク冒険者のドラグナって人だよ。
たぶんこの町で1番強い……って言われている人。
ハゴータは彼のクランに所属しているの」
Sランク……か。
1番強そうなのは、無精ヒゲが目立つ、渋いおじさまって感じの人だな。
この人がたぶん、ドラグナって人なのだろう。
それにしても……パーティーではなく、クランね。
クランって、確か複数のパーティーが相互協力関係を結んだ集団だったっけか?
勿論、パーティー間に実力差もあるのだろうから、対等の関係ではなく、下部組織の使いっ走りみたいな扱いの連中もいるのだろうな。
……ハゴータがそうだとは言わないが。
「なるほど……小物が実力では敵わないからと、ボスを連れてきた訳ですね」
誰が、とは言っていないよ?
「このガキィ!!」
しかし、自覚のあるハゴータが激高する。
だからお前は小物なのだ。
だが、ドラグナは冷静な態度で、ハゴータを制止した。
「よせ、ハゴータ。
……それと、そこのお嬢ちゃん達と、男どももだ。
いくら自由な冒険者とはいえ、ギルド内では暴れない──それくらいの秩序はあってもいいと思うが?」
「私も同意見ですが……我々に対して、邪な目的で近寄ってくる者も多いもので……。
自衛の為なら、多少は手も出ますよ?」
「多少……ね」
ドラグナは床で撃沈している男に目を向けて、嘆息した。
「分かった……。
この場にいる者達は、よく聞け!
今後この嬢ちゃん達に、不純な動機で近づく者がいたら、そいつは俺の──このSランク冒険者・ドラグナの敵になると思えっ!!」
「「「「「「「えっ!?」」」」」」
その場にいた全員が、予想外の展開に意表を突かれたと思う。
この私だって同様だ。
え……? なんでそんなに私達の味方になってくれるの?
何か下心があるのか?
「まさかロリコン……」
「違う」
真顔で否定された。
じゃあ、なんで?
「ちょっ、なんでだよ、ドラグナさん!?
俺たちの秩序を乱しているのは、あのガキどもだろ!?
なんで制裁してくれないんだよっ!!」
ハゴータが喚く。
まあ、分からないでもない。
生意気な新人が暴れたら、私でもそう思うかもしれない。
だがドラグナは、
「駄目だ、あれには関わるな。
俺の言うことが聞けないのなら、お前にはクランを抜けてもらうぞ?」
「なっ……なんでそんな……!?
なんであんなガキを、庇うんだよっ!?」
「違う!
俺が庇っているのは、お前達だぞ……!!
あれは絶対に怒らせるな。
俺でも止められん……!
最悪、町が消える……!!」
「は……?」
ハゴータは──そして周囲の人間達も、訳が分からないという顔をしていた。
だが、私にはドラグナの発言の意味が分かる。
凄いな、さすがSランクだ。
私の真の実力を見抜いたのか!
そのご褒美に、私もドラグナの言葉には従っておこう。
「ありがとうございます、ドラグナさん。
ま……まあ、あなたほどの実力者がそう言うのなら、私も火の粉が降りかからない限りは、大人しくしていますよ?
あなた達も、これで手打ちにするということで、いいですよね?
私も、少々頭に血が上っていたようです。
本当にすみませんでした」
私は揉めていた男達に対して、深々と頭を下げた。
「お……おう」
男達は事態についていけないようで、毒気を抜かれたような顔をしていた。
もうこれ以上揉めるつもりはないようだ。
「……なら、いい」
場が収まったことを確認したドラグナは、また大きく嘆息する。
そして私達に背を向けて、ギルドから出て行った。
そんな彼に、ハゴータや他の取り巻き達も続くが、皆一様に納得がいかないという顔をしていた。
だが、納得してくれないと困る。
教育はしっかりしてよ、ドラグナさん?
あとは野次馬達がどう受け止めるか……だが、その辺はさすがに誰も制御はできないな。
後はなるようなれ……だ。
「さて……一件落着したことですし、帰りますか」
「う……うん」
「はいにゃ」
キエルは「何が何だか分からない」といような顔をしていたけど、少なくとも私に不信感のような視線は向けていないから、取りあえずは問題無いだろう。
ただ、ドラグナとの関係を勘ぐられても面倒臭いし、後で軽く説明はしておこう。
よーし、ようやくお風呂に入れるぞー!
「あ、床の修理費、金貨2枚ね?」
受付のお姉さんから、無慈悲な言葉が投げかけられた。
今日の稼ぎの、ほぼ全額じゃん……。
ちくせう……。
次回はいよいよお風呂回の予定です。ようやく百合っぽいことができる……?




