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12 ダンジョンの謎

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「どうして……レイちゃんがそんな呪いに……」


 私のでまかせを真に受けて、困惑しているキエル。

 そんな彼女に対して、私は畳み掛ける。

 

「……生まれつきです。

 先祖が悪い魔法使いの恨みを買って、子々孫々に伝わる呪いをかけられたようで……。

 そんな訳ですから、戦闘での私は、なるべくサポート役に徹したいと思うのですが……」


「そ、そういうことなら分かったよ!

 うちに任せておいて!」


 キエルは単純な性格をしているらしく、簡単に信じてくれるから助かる。

 ちょっと罪悪感を抱くが、でも私が呪われているのは、ある意味事実だしな……。

 あの「乗っ取り」の能力は一種の呪いだ。

 能力を使う時は、今の身体を確実に捨てなければならないのだから……。


 でもできれば今度こそ、レイチェルの身体には最後まで人生を(まっと)うさせてあげたい。

 その為にも、軽率なことはできないのだ。


「それでは、オークの麻痺を解除しますよ。

 今度はキエルさんの実力を、見せてください」


「うん、見ててね!」


 私達はオークから少し距離をとる。

 それからオークに対して、麻痺を解除する為の魔法を使った。

 魔法は上手く効果を発揮したようで、オークはすぐに動き出す。


「しっ!」


「ブギャッ!?」

 

 オークは今度こそ逃げようとしたが、キエルはそんな(いとま)を与えず、一撃でオークの分厚い身体を両断した。

 オークの上半身と下半身があっさり離ればなれになる。

 字で書くと、オー/ク。


 へぇ……結構凄いな。

 Cランクだとは聞いていたけど、それは噂の所為でパーティーメンバーに恵まれず、ダンジョンにソロで挑まなければならない効率の悪さの所為なのだろう。

 1人では運べる素材の量も制限されるし、稼ぎも少ないのだろうな……。

 しかし実際には、Bランクのハゴータにだって勝てると思う。


 (ひと)りで戦い続けてきたことで、キエルの能力は鍛えられたのだろう。

 

 それはさておき、オークの切断面から内臓がこぼれて、ちょっとグロいんですけど……。

 でも死体って内臓から腐っていくって言うし、このまま内臓を抜いて、血抜きした方がいいのだろうか……?

 でも、ホルモンとかに加工して食べる手もあるから、内臓は捨てない方がいいのかな?


 いや、収納する前に、最後の実験をしなきゃ。


「あ、キエルさん、このオークの死体を、もうちょっと魔法の実験に使っていいですか?」


「いいけど……何に使うの?」


「それは……こうです」


 私はオークの死体に術をかけた。

 すると、目の前から忽然と死体が消える。


「えっ!?」


「にやっ!?」


 ふふ、キエルとマルガも、驚いてる驚いてる。

 種も仕掛けもありませんよ。


「え……何処へ行ったの?」


「あそこですよ」


 私は10mほど前方を指さした。

 そこには、オークの死体がある。


「転移魔法です。

 まずは短距離なら、問題無いようですね……」


「嘘……転移魔法って、凄く難易度が高いはずじゃ……」

 

「凄いにゃ」 


 まあ、ゲームとかではこの手の魔法は気軽に使える便利なモノだけど、実際に運用するとなると、細心の注意が必要だろうな。

 だって、「石の中にいる」なんてことになったら、シャレにならないし。

 

 逆に言えば、敵にこの魔法を使って石の中や空中に放り込んで、意図的に即死させることもできるな。

 つまり、デ●ョンかバシ●ーラ戦法。


「これが使いこなせれば、宿とダンジョンの行き来も楽になりますね。

 まあ……いきなり自分達に対して使うのは怖いので、もうちょっと練習してからですが……」


 そんな訳で、もう少し試してみる。

 今度は送り先を目に見える範囲ではなく、秩父山中……は無理だから、上の階にしてみよう。

 そうだな……あの階段のところをイメージして、あなたのハーツにテレポート!


「また消えた!?」


「ちょっと戻って、成功しているか、確認したいと思います」


 結果としては、階層の移動も問題は無かった。

 おそらく、1度行ったことがある場所なら、自由に移動できるはずだ。

 それなら……今度レイチェルのお母さんのお墓参りに行けるかどうか、試してみるかな。


 ともかく、これでダンジョンの攻略も効率的にできるようになったぞ。




 その後、引き返して更にダンジョンの奥へと進もうとしたが、


「あれ?」


 先程オークを倒したはずの場所に辿り着いたが、オークの血痕が無いし、私が破壊した床の形跡も無くなっている。

 一体いつから、ここが戦闘の現場だと錯覚していた?


「どういうことなんです?」


「にゃ、にゃ?」


 マルガがペシペシと床を叩いても、何も変化は無かった。


「あ~、ダンジョンの床や壁って、壊してもいつの間にか修復されているんだよ。

 死体とかも、放置しておくと無くなるね。

 理由はよく分からないけど……」


 ふむ……自己修復機能があるのか?

 このダンジョン自体が、一種の魔法道具(マジックアイテム)……的な?

 しかし、死体が消えているってことは……そういうのをダンジョンが吸収して、エネルギー源にしているってことかな?

 

 ……ということは、このダンジョン内で殺し合いをするのって、実はヤバイのでは?

 死体とかを吸収して得たエネルギーを、ダンジョンの維持の為だけに使っているのならいいんだけど、何か別の目的があるのだとしたら……。


 うん、まあ考えても仕方が無いか。

 現状では情報が少なすぎる。

 私は少し気味悪さを感じつつも、更にダンジョンの奥へと進んだ。


 


 結局この日は、第7階層までの攻略を進めてから、帰ることにした。

 転移魔法を使えば、もうちょっと時間の余裕はあったけど、さすがにまだ自分自身に使うのは怖いしね……。

 まあ、一応生きている魔物でも転移実験をしてみて問題が無かったから、今後少しずつ活用してみたいと思う。


 さて、地上に戻ったら冒険者ギルドに行って、今日狩った魔物の素材を売却しよう。

 一体いくらの儲けになるかな?

 そしてそれが終わったら、宿に予約していたお風呂の時間だ。


 楽しみ~♪


 ……だったのだが、まさかギルドであんな騒動が起こってしまうとは、予想外だったよ……。

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