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6 うわ、幼女強い

 ブックマーク・☆での評価ありがとうございました。

「この獣人の子供(ガキ)が……っ!

 お仕置きが必要だな……っ!」


「フシャーっ!

 お仕置きが必要なのは、お前の方にゃ!」


 マルガとハゴータが対峙する。

 一触即発の状態だ。

 私は、さっさと食事を終わらせよう。


 ここでバトルになったら、埃が舞い上がって汚いしね。


「お、おい、あいつらを止めなくていいのか!?

 というか、逃げた方がいいぞ!」


 あの()が私に逃げるようにと、(うなが)してきた。

 ということは、彼女ではハゴータを止められない……か、もしくは無傷でとはいかないということなのだろう。

 なんだかんだで、B級冒険者としての実力はあるようだ。


 まあ、まだ(・・)冒険者ではない私には、B級の実力がいかほどのものなのかよく知らないが、どのみち脅威を感じるほどではない。

 なので食事は続行する。


「むぐ……大丈夫ですよ。

 あの子は鍛えてありますから……あむ」


 マルガの実力については、よく把握している。

 彼女は山の中の生活で、私から色々なものを学んできた。

 特に狩りや戦闘技術については獣人の狩猟本能なのか、強い興味を示していたので、私はその技術を徹底的に教え込んだ。


 その結果仕上がったマルガの能力は、相当に高い。

 そうでなければ、まだ幼児とも言える年齢の彼女を、冒険者にしようなどとは思わないだろう。


 そんなマルガの優秀さは、彼女自身の才能なのか、それとも元々獣人という種族の基本スペックが高いからなのかは分からないが、おそらく後者の要素が強いのだと思う。


 だから人間は、自分達よりも肉体的には上位の存在である獣人を恐れ、差別しているのかもしれない。

 ある種の生存競争だとも言えるが、もっと上手く共存できる方法は無いのか……とも思う。

 が、なかなか難しい問題だな。


 私にだって、生理的に相容れないと思う相手はいるしな。

 例えば、男全般とか。

 レイチェルの記憶が、トラウマ過ぎた……。


「でも……あんな小さな子が……」


「心配はいりませんよ、ほら……、

 あの男は、マルガを捕まえることもできないでしょ?」


 ハゴータは、マルガを取り押さえようとしているようだが、なかなか捕まえることができないようだ。

 山奥で野生動物を狩るという実戦経験も豊富なマルガだが、その上に魔力や気による身体を強化する(すべ)とかも色々と教え込んでいる。

 その気になれば、初歩的な魔法だって使えたのだから、ゴブリン王とだってそこそこ戦えるんじゃないかな。


「まあ、本当に危なくなったら、私が動きますよ。

 私はあの子の100倍は強いですから」


「あんた達は……一体……?」


 そんな風に、あの娘は戸惑いと怯えが混ざった視線を向けてくるが、そんな彼女の気配が突然変わる。


「……って、あんた、何処かで見たことがあるような……」


「!?」


 や、やばい、この娘とレイチェルって、同じサンバートルの町の出身だ。

 直接面識はなかったとしても、町ですれ違ったことくらいはあるかもしれない。

 でも、レイチェルは2年近く領主に監禁されていたし、私も2年間も山籠もりしていた。


 少なくとも、4年間は確実に会っていない相手のことを、この娘がよく覚えているなんてことはないだろう。


「さあ……気の所為では……?」


「そうかなぁ……?

 それに、その一房(ひとふさ)だけ赤い前髪……」


 そっちかぁ~!!

 赤いキツネだった頃の特徴は、身体を何度乗り換えても何故か残っているのだが、このレイチェルも例外ではない。

 髪が一房だけ赤いのは、ゴブリンの時にもあった特徴だから、そっちの関係を疑っている……!?


「これは生まれつきですが、それが何か……?」


「いや……う~ん、知っている奴に、似たようなのがいて、そいつを思い出しちゃった。

 関係があるはず……無いのにね」


 君のような、勘の良いガキは嫌いだよ!

 この話は、さっさと有耶無耶にしよう。


「へえ……面白い偶然もあるものですね……。

 あ、それよりも、どうやら局面が動きますよ」


「え?」


 ハゴータが膝をつく。

 彼がマルガを捉えようとする(たび)に、あっさりと(かわ)されていたが、マルガもただ避けているばかりではなかった。

 彼女はハゴータの隙を見つけては、ローキックを彼の足に打ち込んでいたのだ。

 

 地味な攻撃だが、その威力は幼女の脚力でも、決して低くはない。

 2ヵ月もの徒歩での旅に耐えられるような健脚な上に、身体強化も可能である。

 そんな彼女の蹴りを何発も撃ち込まれて、今まで倒れなかったハゴータも意外とやる……と言うべきか。


「ぐぬ……こんなバカな……っ!」


 これで勝負有りだな。

 さすがにもう、ハゴータも何もできないだろう。

 ……って、あれ!?


「マルガ、それ以上いけない!」


 私によるその制止の声は、間に合わなかった。

 膝をついて、幼女の低身長でも丁度殴りやすい高さになったハゴータの顔面を、マルガは思いっきり殴りつけたのだ。

 しかも身体強化を加えた(こぶし)で。


「ぶべらっ!?」

 

 ハゴータはギャグ漫画のキャラみたいな悲鳴をあげながら、背後にあったテーブルなどを巻き込んで、壁際まで吹っ飛んだ。

 彼の安否はどうでもいいが、色々と壊れているのはマズイ。

 しかし──、


「レイ姉、やったにゃ!

 嫌な奴をやっつけたにゃ!」


 マルガが「褒めて、褒めて」と言わんばかりに、駆け寄ってきた。

 うん、馬鹿な男を倒したことに関しては、確かによくやったんだが……。

 

「ええ、よく頑張りましたね。

 さて……お会計を済ませて、お(いとま)しましょうか」

 

 よし、逃げよう。

 私じゃない、ハゴータがやった。

 こんなことになるなんて、知らなかった。

 もう済んだこと。


 だが──。


「テーブルと椅子の代金込みで、銀貨15枚ね」


 しっかり弁償させられました……。

 約3万円の出費だ……。

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